さまよえる老年

外に出て、取引先と話をすることが増え、カフェでPCを開けて仕事のメールをすることが多くなった。企画書などを書くことやそのメモや調べ物も増えた。しかし、カフェなどでは落ち着かないだけでなく、集中してそのくらいやれば十分、ということも多いので、長くても2時間くらいしか、ぼくはいることがない。普通は1時間ほど、あるいはそれ以内だ。それでも自分では長いほうだと思うのだが、それ以上の時間いる人もすごく多いのがわかる。ぼくがカフェに入って、出てくるまでのあいだ、その周辺の人たちがほとんど変わらないのだ。

若い人ももちろん多いが、それにもまして、最近はご老人が多い。カフェで朝から晩までなにか本を読んでいたり、タブレットをいじっていたりする(のだろう。ずっといるわけではないのでわからないが)。なにか書く、ということをしている人はほとんどなく、タブレットや本を眺めているだけ、という人も増えた。要するに「時間つぶし」をしているらしいのだ。

日本は1950年の朝鮮特需で高度経済成長が始まり、オイルショックくらいまでは「順調に」経済成長していた。ぼくも、その時代に子供時代を送り、その頃は「今年より来年は絶対に良くなる」と、誰もが信じて疑わなかった。

その時代の都市部は企業などで働くサラリーマンが一般的で、毎年給与は上がるのが当たり前だった。もっとも、毎年、物価も上がった。いま、そういう企業も役所もなくなった。その、企業の黄金時代に企業人として技術者などをしていた人は、退職した今でも「元・XX電気」とか、既に退職した企業の名前を肩書にした名刺を自分で作って持っていたりする。そういう人には「元・XXにいらしたんですね。すごいですね」というと、それだけで満面の笑みが漏れ、話もうまくいくことが多い。しかし、あくまで「元」であって、いまどき、そんな「元」のついた肩書を、そうではない若い人が、本当にありがたがっているわけではない。それが現実というものである。

本心では「バカじゃねぇか?」と思っても、そういう人をノセてお金を引き出すビジネスをしている人は、そのあたりのことをちゃんと心得て、見えないところで舌を出す。

そういう「おじいさん」が、実際の商売の厳しさも知らず、持ち上げられて、アパート経営とかに手を出す。やる前から結果はわかる。「お金さえ出せば、あとはいたれりつくせりで、もっと大きなお金が入るビジネスになるはずです」。はぁ、そうですか。だったら、あなたにお金を貸すから、あんたの名前でやってみてくれませんかね?もっとも、万が一、失敗したときのために、担保もいただきますが、そりゃ、成功間違いないんだから、あなた、絶対に大丈夫ですよね?というのが、正解であるが、そこに話を持っていくわけには行かないのが、「営業マン」という職業である。営業マンはそこまで読まれたら、さっさと引き下がるしかない。

日本のおじいさん元サラリーマンは、そういうノウハウを知らない。世の中の厳しさを知らず、いい時代を過ごしたのだ、という自覚もない。だから、簡単に騙される。シニアの活躍の時代である、というのであれば、まずは世界のどこいらへんに自分はいるのか?ということから、「自覚」を育む必要がある。

あなたがもし、高度経済成長期に、エンジニアとか研究者であったのであれば、まずは自分のいる現在の位置を世界から眺め、自分の持つ「元XX」の肩書を捨てることをおすすめする。そこから、次の時代を切り開くことができるだろう。



あなたの中にいる「鬼」を飼いならせ

虐待をする側はそこまで酷いことをしているとは思っていない。「会話をしない」という「ネグレクト」程度でも、現代においては、それは明らかな犯罪であるにも関わらず。また、虐待の加害者は、自分が自分の運命に対し仕返しをしている、という「言い訳」を自分に対して行うので、もともと虐待を受けていると感じている側でもある。しかしながら、実際の行動によって人は評価され罰せられるということが、加害者の頭からは消えるため、虐待は虐待として世間に認知される。その時に、虐待の加害者が特定され、後戻りできない「加害者」として、世間に登録され、さらなる世間からの虐待にさらされる。

虐待の加害者となりそうな、あるいはなっている自分の行動を自分自身で客観的に眺め、自分の行動を律することがなければ、虐待の加害者は、さらに虐待の深みにはまると同時に、具体的な犯罪者として世間に登録される。その末路は哀れであることは言うまでもない。それがこの人間社会に生きる、と言うことである。それを仏教の用語では無間地獄と言う。

虐待の被害者の悲惨は言うまでもない。一方で虐待の加害者は、本人が望むと望まざるとに関わらず、一生を「虐待の加害者」として生きなければならなくなるという面において、生き地獄をじわじわと経験せざるを得ない。おそらくそれは、はやく加害者より先に天に召され、虐待死した被害者以上のものになる。

自らの中に潜む「鬼」を飼いならす知恵を持ってしか、虐待はなくならない。賢くあれ、冷静であれ、と言うことは、そう言うことである。虐待を受け、それでも優しくあれ、という自制は、虐待された経験ではじめて産まれるのは、そう言うわけだ。虐待を受けた経験者が、誰に対しても愛情深く接することができるのは、自らの中の「鬼」を飼いならす知恵を天から授かり、それを多くの人に知らせる義務を負うからだ。

虐待された経験を持つことで、虐待の加害者の中に潜む鬼が人を食い殺し暴れるのをこの目で見ることは、命に関わる経験であり、ときに命を本当に落とすこともある。しかしそこから生きながらえて、生きるこの場に這い出てきた、鬼の姿を見たあなたは、自分の中に潜む鬼もまた、同じような姿であなたの中に潜んでいるのを見て、戦慄を覚えるはずだ。その鬼は「復讐の炎」の中に住んでいる。

そんなあなたに必要なのは、その微笑みと真心で鬼を飼いならす知恵を、より多くの人に知らせることである。

2018年訪日客数

2018年の訪日客数は、国土交通省・観光局の統計資料に出ている。注目の各地からの数字を見て見よう。

総訪日客数は3100万人超。内訳は、大陸中国から838万人(全体の27%)、韓国から754万人(全体の24%)。しかし、観光局の統計では香港が別カウントとなっているので、これを加えると、大陸中国からは1059万人(全体の34%)、と初めて1千万人台となったことがわかる。

米国からは、153万人(全体の5%)。そして、大陸中国(香港含む)+韓国は、1813万人(58%)となり、これだけで訪日客数の60%近くを占める。

しかしながら、全体の数字が大きくなっているので、「大陸中国+韓国」からの訪日客「比率」は、むしろ、少々低くなっている、というのは、面白い。ところで、台湾からの訪日客は、458万人。「大陸中国+韓国+台湾」からの訪日客は、2271万人(73%)。しかし、台湾は人口2300万人だから、単純計算では台湾人の約20%が訪日している、ということになる。韓国の人口は約5200万人なので、韓国では(これも単純計算だが)、人口の約15%が訪日韓国人、ということになる。これもまたすごい数字だ。



進む「量子化」

米国Engadgetのサイトでこのような記事がある。昨年(2018年)の12月の記事だが、日本では注目している人はそんなに多くなかったようだ。一方、2019年のCES(Consumer Electronics Show)では、既に企業の最先端技術関係の会議などでは、一部で「5G」の次の「6G」が語られており、ある企業の講演ではそれは「量子通信になるだろう」という予測も語られている。IBM社は量子コンピュータのインターネット上での公開を行い、2016年には既に通常の無線通信で「量子暗号化」されたデータが中国の通信衛星で実験が始まった。次の時代は既に始まっており、それは現在のITでは想像もつかない「量子(Quantum)」の時代になるのは、確実な勢いである。CESに行って、この事に気が付かなかった人は「なにを見て来たんだ?」ということになるだろう。

量子コンピュータの計算速度は、現在のスーパーコンピュータと言われるコンピュータの約1億倍と言われている。途方もない数字、という感じしか覚えない方も多いと思うが、このコンピューティングパワーの与える影響は非常に大きい。たとえば、現在の「暗号化技術」があることによって、私達は銀行のATMから安心してお金を引き出せるし、クレジットカードも仮想通貨も安心して使えるわけだが、これは「暗号を解くには、スーパーコンピュータで100年かかる」ということがあるからだ。しかし、量子コンピュータの計算速度では、この100年が1分になる。であれば、現在の暗号化の方法では全く役にたたない、ということになる。しかし、希望はある。暗号も量子技術を使う、という選択である。つまり量子技術で作られた暗号は現代の暗号解読計算アルゴリズムでは解けないのだ。そう。ここも「量子」の分野になる。

そして、無線通信も電波ではなく、量子通信で行われることに将来なるという発表もCESの一部であった。であれば、将来は、量子化コンピュータや量子通信、量子暗号化で、量子携帯電話(Quantum Cell Phone – QCP)が当たり前に使われる世の中が来る、と予測されている。であれば、世界のあらゆるデジタル世界は変わっていくことになるだろう。そうであるから、米国の最先端のハイテク技術への投資はこれから量子に向かう。今回の米国政府の量子技術への投資のアナウンスはこの「技術の革命」に端を発している。

電気通信の時代から、光を通り越して、量子の時代へ。このトレンドが世界をどう変えていくか?これからが楽しみである。



         私達はなぜネット情報に頼るのか?

私達は、ネット情報に頼ることが増えて来ているが、それでもまだ従来のマスコミなどのレガシーメディアに頼ることも多い。ネット情報のほうが、マスコミ情報より信頼に足る、という根拠は全く無いわけではなく、やはりあるからこそ、そう言う思考になる。そして「ネット情報に騙された」という人も増えていく。簡単に言えば、かつては情報伝達が地域を超えることがなかったので、噂話や、地域の行政のお知らせなどで様々なことを知り、情報交換の場に行き、情報交換をし、生きていくための情報を共有した。これが「旧旧世代」の「情報交換」であった。

それが世代が変わり、地域をより広域にした一斉の伝達手段であるマスコミが出現した。放送(Broadcast)は「旧世代」の伝達手段の主たるものになり、人々の情報共有がより広域になった。しかしながら、電波も届く範囲が限られており、送信所からの情報伝達範囲には限りがあったが、それを中継所などを使ってなんとか「国家」という広域のレベルにまでしてきたのはご存知の通りだ。これには多大な資本を必要とした。これが「旧世代」である。

現代は、(1)旧旧世代、そして(2)旧世代をさらに超えた次の(3)「新世代」の時代。「世界」を相手にできる情報伝達の時代になった。インターネットが出現したためだ。インターネットというインフラの出現により、国家という「国境ありきの存在」をいつでも越え、かつ低コストな情報伝達手段が台頭しているのが、現代という時代である。結果として「私のところはこんなにいいところですよ」と国家がアピールし、多くの「国民」に国家というショッピングモールに集まってもらわなければ、国家が成り立たない時代になった。国家は「国民(地域にいる人)」「土地」「主権」の3つが基本構成要素である。そのうち「人」が、土地と主権者を自由に選べる時代となった。

早い話、国家が破綻したり頼りがなくなったら、その国家を出るという選択ができるようになった。どこに出ていけばいいか、という情報を得られるようになったからだ。インターネットを扱える機器を経済的に貧しい人たち全員が使えないにしろ、かなり多くの人がスマートフォンやPCで国境を超えた情報を、やりとりができるようになった。その結果、国家を「捨てる」人も多くなる。それが「難民」である。いや、難民がなぜできたか?という、それは「一因」であろう。

私達が住むこの現代社会では、例えば子どもたちは家庭の中で夕食を食べながらスマホをいじり、家庭の外の世界と意思の疎通をしている。目の前にいる親とだけ話をしているわけではない。インターネットは「見える秩序」「見えやすい事象」を裏側から破壊しているように見えるが、そうではなく「見えない事象も含めたものが混ざってきたため、見えないところで行われているものの、人の行動に与える影響力が強くなってきた」のだ。そして旧社会に慣れた人にはその「目に見えない情報のやりとり」が見えず、その大切さも見えない。時代が変わり、大切になったのは「見えない情報伝達」である。それを「見える化」することは技術的に可能だが、それを多くの人が望んでいない。また、見えない情報の「見える化」にかかるコストを誰が負担するのか?という問題もある。

国家の3要素が「人」「土地」「主権」であるのだとしたら、インターネットは「人」「土地」の情報を地球上で全ての人が共有できるので、「主権」の存在感は減っていく。極端な話、主権をいくら持っている政府がいても、「人」がそこからいなくなれば、「主権」の意味はない。これが現代の「民主主義」の姿である。

私達はなぜ「ネット情報」を重要なものと見るのか?おそらく、こういった原理原則に立ち返れば、かつて当たり前だった原理や原則が新しいそれに置き換わっている、ということによるのではないか。私達はいま、その過渡期にいるのだ。

 

 

 


 

 

 

現代のITの姿

たとえば、一般に家庭でも使われている無線ルーターなどでも、その機器単独で動いているわけではないのは、このニュースを見ればわかるだろう。
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1163527.html

このニュースを見ればわかるが「製品」は、ネット経由でどこかのサーバーに(それが日本にあるものであるとは限らない)接続され、動作確認をして本動作に入る。逆に言えば、この仕組みを通して、世界中のルーターを意図的に止めることだってできるかもしれないし、止めはしないが、そこを流れるデータが横取りされている可能性もあるし、悪意は誰にもなくても、通信先のサーバーがこのように事故で止まった場合は、その機器そのものが動かなくなる、ということもある。実際、先日のソフトバンクの大規模回線停止騒ぎは、それで起きた。

これが現代の「インターネット」であり「IT」である。相互に世界中が国境を超えてつながっている。このどこが切れても、トラブルになる。

ではインターネットに接続された、どこの機器(サーバーなど)にどういう情報が流れているのか?。実はそれはSniffer(プロトコル・アナライザー)という機器でけっこう簡単に調べることができる。あらゆる通信を、全部丸裸にして調べる機器、ソフトウエアである。現在、それは、無料で、誰でも手に入れることができる。

現代の社会はITで進歩した。お金もその中を通るし、重要な情報もその中を通る。だからこそ、サイバーセキュリティは重要になったのだ。



新年ではあるけれども

新年ではあるんだが、個人的に「喪中」なので、お祝いの言葉は控えているんだが、ここ20年以上の世界を見ると、やはり「時代の変わり」を感じるんだね。たとえば、SNSで「あけまして。。。」を言うじゃないですか。そうすると、それは誰が言っても、世間一般のけっこう多くの人が見るわけで、また、見られるわけでね。今年は特に自分が喪中であるんだが、そこにも「新年のお祝い」のメッセージは来ちゃうわけですよ。こちらとしては「コノヤロー」って思う人もいると思うんだね。ぼくは「まだ新しい仕組みと古い仕組みが齟齬をきたしているから、しょうがないかねぇ」と、思うだけなんだが。

SNSで年賀のお祝いを言うのと、個別に年賀はがきを出す、というのとは全く違うわけですね。自分の発した言葉が、誰が見ているとも限らず、わからない。だから、気軽にSNSで年始の挨拶をするのと、はがきでするのは違うってことなんだが、なかなか旧社会の感覚が抜けないから、ついついやっちゃうわけですね。

つまりさ、このところいろいろな問題が出てきているネット社会のことなんだが、こういう「旧社会のしくみ」と「新社会のしくみ」が、いま、火花をちらしているんだろうな、と思うわけですよ。そういう時代なんだね。

自動運転車が実用になったら、いや実際には実用化しそうだけれども、もう「運転手」という職業はなくなりはしないけれども、まぁ、絶滅危惧種になるわけですね。ガソリン車の常識もEVでは全く必要なくなるし、様変わりをするわけですね。フェラーリとかランボルギーニなんてのは「富の象徴」であるわけだが、これからの社会は「まだそんな骨董品使ってるの?」って言われるようになる。つまり、ウケるのは骨董品趣味の人たちの間だけだな。であれば、次の世代は移動手段はどうなるのか?ってのは、まだよくわかっていないし、一般化もしていない。でも確実に時代が変わることだけはわかる。

クルマも一例だが、宗教、政治、そういったところにも、旧社会と新社会のバトルが現在行われていて、旧社会がそれに勝利すると、その地域や人は世界から隔離された状況に置かれるんだね。ほら、昨年末に、文明を持った探検隊が、未だに外との交流を拒否している社会に入り込もうとして、殺されちゃった、って事件があったでしょ。そういうようになるんだよ。旧社会を守るとは、つまり、そういうことなんだな、というのが、わかりやすく見えるよね。だから、新社会が必ず勝利するわけじゃなく、旧社会もポツポツと社会全体の流れから置いて行かれる、というかたちで忘れられていくわけだね。それがいいことか、悪いことかは、誰もわからないんだけれども。



HUAWEIスマホの「おかしなもの」

最初に報じたのは、米国のメディアだったが、「HUAWEIのスマートフォンに、情報を横取りするかも知れないチップが発見された」という、報道があった。これは日本のテレビ局でも報道され、早速、日本にあるHUAWEIの日本法人がこれに対して反論し「法的措置を検討」と報じられている。現在、HUAWEIのスマートフォンは世界で成長しており、売れている。同社のプレスリリースでは、「二億台を突破」とあり、その世界での販売はAppleのiPhoneを超えることは確実、ということだ。また、カナダではHUAWEIのCFOが突然逮捕された(現在は釈放されている)、という報道もあり、世の中に衝撃を与えた。また、これらの動きを考え、日本のナショナル・キャリアとも言われつつ、HUAWEIの端末を非常に多く売っているNTTdocomoの澤田社長は「個人データを抜かれているならば、そういう端末は売らない方がいい」と、含みをもたせたコメントも発表している。

また、現在、ソフトバンク社が強力に推進している「NB(Narrow Band)-IoT」は、IoTの切り札の1つ、と言われている重要な位置を、経済産業省も進める「IoT」の分野で占めているが、これは現在のスマートフォンで使われている回線であるLTE網との相乗りの技術でスマートフォンの電波が届くところであれば、どこでも、安価に(同社は毎月の通信料金10円、という価格を打ち出している)IoTの端末をぶら下げることができる。この元の技術はHUAWEIのものがほとんどである。

現実の問題として、HUAWEIは中国の巨大企業で、スマートフォンのみならず、世界中の多くの携帯電話キャリアなどで、背後にある巨大な通信インフラ市場で大きな存在感を持った企業である。一般の人たちの目に見えている「スマートフォン」「タブレット」などでも、高品質、高性能、低価格、ということにおいて、他の世界企業にも引けをとらないものを供給している。ご存知のように、日本でも3大キャリアと呼ばれている企業には、背後のインフラの装置も、店頭で売っているスマートフォンやタブレットもあり、そのいずれでも、HUAWEIの製品は日本でも多くの人や企業が使っている。であれば、当然、技術に厳格な日本の上場した大企業の「セキュリティ検査」をすり抜けるようなことはできるはずもなく、すでに厳しい受け入れ検査を通っているからこそ、インフラに「採用」され、店頭で売っている、と想像できる。であれば「なにをいまさら」という感じもするのだが。

また、気になったのは、この「HUAWEIは危ない報道」だが「おかしなチップが入っている」という報道があった、ということだ。実際のところ、「おかしなチップ」という「ハードウエア」があれば、それは「見える」はずであって、検査では目視でもわかるはずだ(同様のニュースは台湾のPCサーバーのメーカーに対しても米国であり、第三者機関による調査が行われ「なにもない」という結論が出ている)。「おかしなもの」を意図的に入れるには、ハードウエアは非常に目につきやすいので、本当に「おかしなもの」を入れたかったのだとしたら、とんでもない「間抜け」という他はない。当然だが、そういうものはなかったから、日本のキャリア各社の検査に通ったのではないか?と推測できる。

以前、スマートフォン用の日本語入力ソフトウエア「Shimeji」が、入力情報をどこか他の国に送っていた、ということが大きな問題となったことがあった。この場合も、問題となったのはハードウエアではなくソフトウエアだ。そのほうが既にセキュリティ検査を通っているものに対して、後付けで、使用中に「スパイらしきもの」を入れることができるだけではなく、開発コストが低く、見つかりにくい。しかし、このときはShimejiで使われている、オープンソースのライブラリからの漏洩であって、さらにわかりにくかっただろう、というのは想像できる。しかも「情報が外部に出ますよ」ということが、アプリ起動時に表示され、それに多くの人が「OK」をしていた、というおまけまでついている。使用者が許可しているのだから、おおっぴらに情報漏えいしていた、というわけだ。これは防ぎようがなく、やはり使用者のITリテラシーの低さが問題になる「事件」だった。

通常こういった「スパイ的なもの」を、受け入れ側にわからないように入れる場合は、ハードウエアで入れることはまずありえない。「見えない」ようにする必要があるから、当然「ソフトウエアの一部」として入れる、ということが選ばれるだろう。そのほうが、隠匿性が高いだけでなく、開発コストもかからないからだ。そういう場合でも、通信そのものはするのがこの種のデバイスなので、プロトコルアナライザ(通信の中身を丸見えにする装置 – 開発のためにプロ向けに売っている)を使えば、「不正な通信」などは一発でわかってしまう。しかも、最近はこれらの「プロトコルアナライザ」は、PCで動く無料のソフトウエアとして誰でも手に入れることができるから、解析の結果なども、プロトコルアナライザを使えば、誰でも手にできる。

今回の報道を純粋に技術から見ると、いろいろおかしなところが見えてしまう。報道する側や、そのストーリーを作っているかも知れない人たちの「技術リテラシー」の低さだけが目につく報道となってしまったのは、残念でならない。それにしても、追試で検証可能なかたちでの早急・具体的な調査と、その結果の具体的な発表が待たれる。



HUAWEI事件。ITは政治になった。

11月23日、米国政府は中国HUAWEI製品の連邦政府での使用中止を宣言。これは今年9月から言っていたことだ。そして、12月5日、HUAWEIのCFOがカナダで逮捕。

HUAWEIといえば、私たち一般市民は日本でも安価で高性能なスマートフォンやタブレットのメーカーという感じがあるが、むしろ、そのスマートフォンやインターネットを裏側で支える膨大な通信機器のメーカーとして、IT関係者の間では知られている。

普通のITの関係の仕事でも、特にインフラ関係の仕事をしていない人はほとんど知らないが、スマートフォンという製品は、その裏側にある「電話局」の設備が命だ。そして、その膨大な機器への投資は半端ではない。規模も大きく、表で私達が見ている「アプリ」を支えるハードウエア、ソフトウエアがあってこそのスマホである。

「さようなら」王子さまは言った・・・
「さようなら」キツネが言った。

「じゃあ秘密を教えるよ。
 とてもかんたんなことだ。
 ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない」
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
忘れないでいるために、王子さまは繰り返した。
「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、
 きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
「ぼくが、バラのために費やした時間・・・」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
「人間たちは、こういう真理を忘れてしまった」キツネは言った。
「でも、きみは忘れちゃいけない。
 きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。
 きみは、きみのバラに、責任がある・・・」
「ぼくは、ぼくのバラに、責任がある・・・」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。


【星の王子様 – サン・テグジュペリ より引用】

いつの世の中でもそうだが「見えないもの」がとても大切なのは、ITだって同じだ。そしてその「見えないもの」の世界最大のものをHUAWEIは作っている。米国のみならず、世界のITはHUAWEIを筆頭とした数社のIT企業に支えられている、と言って言い過ぎではない。誰を贔屓する、というのではなく、これは事実である。

そのHUAWEIを米国政府は攻撃したが、日本の政府もそれに追随した。12月7日、日本政府は政府調達からHUAWEIの通信機器を外す決定をした、」と発表。また、日本の放送などでは、「HUAWEIのスマートフォンから情報が抜き取られるらしい」という情報が流れているが、HUAWEIはこの報道に対し、裁判で争うこととし、その発表を行った。世界のIT関連通信機器の超巨大な市場を持つHUAWEIとしては「その情報はデマである」という確固たる自信を持っているのが伺える。実際、日本の携帯各社でも、製品の受け入れやインフラ構築のさい、その製品や機器について、事前に詳細な調査を行っているはずなので、いまさらの「HUAWEI名指し排除」は、違和感がある。その事前の調査が不完全であったとすると、私達はHUAWEIの機器の導入を決めた会社の技術力を疑うしかなくなってしまう。信頼を旨とする日本の巨大企業としては失格である、ということになってしまうからだ。また、HUAWEIのスマートフォンは日本の3大キャリアでも人気であり、HUAWEI製品のないキャリアはない。

既に10年前になるが、米国の国家安全保障局(NSA)では、米国内ではイスラエル製の通信機器は情報横取りの可能性があるので使わないように、という通達を行っていたことを思い出すが、今回はイスラエルについては言及されていない。

ここまでの事実を並べて見ると「ITというのは技術ではなく政治になった」と思う。ぼくのようなITのインフラ技術者・研究者から来た人間は、自分の仕事は政治とはあまり関係ない、という認識でいたわけだが、それがこのところ、一気に「政治色」が強くなってきた感じがある。まぁ、通信というものの性質上、将来はそうなるだろうな、とは思っていたわけですけれども。実際、今回の「中国」を相手にした話の前には、前述のように、IT業界内部では、イスラエルのIT企業で似たような疑惑が持ち上がっていたことがあったんだが、そちらは今回はまるで話の俎上に乗らない、というのも、非常に「政治的」なんだと思うのですね。

実際のところ、20年以上前だったら、LANの中をなにが通っているか?を調べる「Sniffer」と呼ばれる機器が数百万円で売っていて、これを使えばLANの中をなにが通っているかしっかり見えた。

今もSnifferはある。しかし、今は無料のソフトウエアをPCに入れるだけで、同じことができる。無料のソフトウエアでは「WireShark」などがそれに当たるが、その他、いくつも無料で使えるソフトウエアがある。これで調べれば、HUAWEI製品から情報が漏洩しているかどうかは、一発でわかるはずだ。

そして、このソフトを使えば、実際にHUAWEI製品だけではなく、あらゆるところで作ったIT機器の「秘密の通信」が全て筒抜けだ。一般にはあまり知られていないけれどもね。

これを調べれば、この裁判の行方も簡単に判断することができる。それがインターネットの「リアル」である。

ネットの世界は「政治」によって「情報」が行き交う。しかし「リアル」はあり、それは私達がすぐに手の届くところにある。ないのは、そういうものが目の前にある、という情報だけだ。そして、その「情報の取捨選択」こそが「政治」であり「見えない大切なもの」なのだ。