サイバー戦争の本、2冊め

サイバー戦争を「ショート・ショート」のフィクションでわかりやすく解説した「サイバー戦争が始まるとあなたの生活はこう変わる」の二冊目を上梓しました。今回は「仮想通貨」「自動運転車」「掃除ロボット」などがサイバー戦争でどう使われるか?などについても、具体的に「このようになるだろう」という物語で、わかりやすく解説しました。

こちらです。


【サイバーセキュリティ】「仕事納め」の前にやっておくこと

今や、PCを使わない職場はない。そんな職場にも年末年始がやってくる。今年は、土曜日が30日、日曜日が31日の大晦日。おそらく、早いところで4日から、遅いところでは5日あたりから仕事始めだろう。そして、年末年始が「かきいれどき」、という少数派の企業以外は、多くの企業は今週いっぱいで休みに入る。

数日でも会社を休みにする、週末の会社を休みにするとき、必ず以下のことをしておこう。休み中にハッキングされて、年明けから大変です、なんてことを防ぐのが重要であることは言うまでもない。

  1. 基本は全てのPCの電源を完全に落としておいたうえ、ACコンセントも抜いておくこと。
    ノートPCの場合は、電池も外しておこう。これで完全に外部から個人が使っているPCへの侵入はなくなる。
    また、ネットワークを有線でやっている場合は、ネットワークケーブルも外しておこう。
    →事務所荒らしなども考慮して、裸にしたPCは、金庫などにまとめて入れておけば更に完璧だ。
  2. 社員や部署で共有している「ファイルサーバー」は電源を落としたうえ、金庫などに入れておこう。
    ファイルサーバーに入っているものは、会社の「財産」である。つまりお金と同じだ。そういう認識が必要だ。
    →電源ケーブルを抜くことも忘れないように。
  3. 社内で使っているルーターなどの外部と接続する機器も同様に電源を落としておこう。
  4. 社内で使っている無線LANアクセスポイントも電源を落としておこう。
  5. 新年に出社したとき、誰がファイルサーバーの電源を入れるか?などの役目を決めておこう。
    休みに入る前の電源を切る日時だけでなく、新年の電源を入れる日時などをみんなに知らせておこう。
  6. 休み中、もしもの時の連絡網を作っておこう。
    A.毎日朝一番で自社のWebサーバーがちゃんと動いているかどうかを調べる役目を決めておく
    Webサーバーの回復をする業者の連絡先を社員に周知しておいて、もしもの時に備えてもらう
    ことを業者にお願いしておこう。
    B.Webサーバーが動いていない場合の社長をはじめとした連絡網を決めておく
    C.休み中のメールの受け取りは新年になるなどの告知を客先にしておこう
  7. 日本と外国の年末年始は違う。外国の取引先などにも会社の休日を周知しておこう

とまぁ、これだけしておけば、休み中に会社のPCがハッキング被害、などということはないだろう。もしあったとしても、これだけのことをしておけば、ほぼ問題はない対処が可能だ。

※次にトラブルが起きやすいのは、新年の仕事始めのときである。このときはトラブルが多発する事例が多い。そこで、仕事始めでは、「ルーター」「ファイルサーバー」「無線LANアクセスポイント」「個人使いのPC」の順序で、5分くらいの間を置いて次々に電源を入れて起動するとトラブルは減る。同時に電源を入れると、トラブルが増えることがあり、無用なストレスを感じることもあるだろう。もしもトラブルが出たときの業者の連絡先なども、社員や部署長がわかるようにしておこう。

 


現代のAIプログラミングのかたち

現代のAIプログラミングは、様々なPython(インタプリタ型コンピュータ言語)のライブラリを駆使して、重回帰分析などのこれまであった解析手法をより手軽にプログラマが使えるようにして、プログラマが現実世界と数学世界の橋渡し役として、より効率的に機能するようなプログラミング環境が整えられた、ということに尽きる。

なぜ人工知能プログラミングにPythonが使われるかと言うと、行列演算とか、この種の分析で使われる様々な数学計算のライブラリを数学者として使う人たちがPythonを多く使っていたからであって、そういうライブラリが揃っているからだ。他にも手軽なものはRとか様々な言語があるが、Pythonはより多くの数学者が使う。

実際、重回帰分析だけではなく、多大なデータの中から「答え」を見つける統計手法は様々あり、その様々なものを実際のデータで検証すると、どの手法が一番よいか?などもわかってくる。コンピュータのハードウエア性能が劇的に上がった結果、インタプリタの行単位コンパイルの時間も一瞬で済むようになり、データを多く扱うにも計算スピードがあがり、巨大なデータもメモリ上ではやいスピードで扱えるようになり、結果として、巨大なデータの計算が短時間でできるようになったため、データを様々な手法で計算し直し、比較することも簡単になった。そういうことが、コタツの上のノートPCで可能になった。要するに、それだけのことである。

「人工知能」というと、魔法のように思う人がいるかもしれないが、実際のところはそんなものだ。なにか画期的な新しいものができたのではなく、これまであったものが超高速・大容量・安価で動くようになった、ということだ。これはこれで、もちろん大きな変化ではある。

ところが、これらの豊富な計算機資源を扱うはずの日本のプログラマは今や白痴(←ひどい言い方でごめん)である。高校の数学では行列演算が教えらないカリキュラムになり、高校生くらいでは、数学ヲタクくらいしか、まともな代数学に触れることもない人が大変に多い。加えて、重回帰分析とはなにか?など、がわからないとか、微分積分を良く知らないで、数式を覚えるだけの受験勉強がある。「微分、ってのは微かにわかった、って言うだろ。積分は、分かった積り、でいいんだよ」などというおおらかな数学の先生も今や絶滅危惧種である。ぼくらのころは、そういうことを言われてから、微分、積分、って本当はどういうものなのか?やってみると面白いなぁ、などと、数学の世界にハマっていったものだが、そういう「楽しみ」をみな知らない。

加えて、Pythonでライブラリを使えるようになるまでの、基本的なCUIの使い方とかが全くわからないGUI世代のコンピュータ屋ばかりが増えて、もうね、日本のコンピュータ教育って、プロからしてこれだ、みたいな感じですからね。レベル低い。

今やブームの「人工知能」。商売になるから、わかりやすいから、と思ったら、大きな間違いである。計算機の計算速度が速くなり、大容量が扱えるようになっても、高等数学の初歩レベルはせめてちゃんと勉強していないと、全く評論もできないよ。

 


サイバー戦争が始まった(40) 消えた銀行預金

※本記事はフィクションであり、事実を書いたものではありません。
※本記事はこの本の続編です。他のエピソードはこちらの本お読みください。
※本記事はこの本の中に収録されています。本では、他にも「仮想通貨」「ドローン」「掃除ロボット」などがサイバー戦争でどう使われるかについて、書いています。

その日はクリスマス・イブを目前に控えた12月のある日。朝6時でもまだ暗いが7時になると陽光は眩しいくらいになった。雲ひとつない、冬の空だ。仕事に行く人が多い新宿の町並み。歩道には銀杏の黄色い葉がところどころに残るが、木はもう丸裸に近い。街頭の銀杏の木もさぞ寒かろう、と見える。

空が明るくなって、新宿西口のビル街のビルの窓に青い空が映る。

マサルは独り言を言いながら、その街の中を通り過ぎている。

「今日は彼女への贈り物を買わないといけないな。少し多めにお金を出しておかないとな。足りなければカードでもいいか」

マサルはちょうど歩いている途中に銀行のATMがあったので、現金をおろすことにした。銀行のATMエリアに入るマサル。彼の表情がみるみる青く変わっていった。

「ちくしょう!」

マサルは大声を出した。

「誰だ!こんなことをやりやがったのは!」

マサルの銀行預金が何者かに横取りされ、残高がゼロになっていたのだ。彼はすぐにすぐにATM横の無料のサポート電話の受話器を取った。なにも音がしない。切れている。使えないのは、まず音を聞いてわかった。それでも叫んでみた。

「もしもし!」

見れば、周囲にいるATMを使おうとしていた人たちも全くマサルと同じ行動をしている。それを見て、マサルに起きたことは自分だけではない、ということがわかった。マサルはすぐにATMのエリアを離れ、スマートフォンを取り出し、ATMのところに書いてあったサポート電話に電話をした。いや、こんな非常事態は、はじめてだ。しかし、当然、サポート電話の窓口は混んでいるとは思った。案の定、サポート電話は話し中の音しか聞こえない。

すぐにマサルは会社に電話し、今日は休むことを部長に伝えた。幸いなことに、このときの電話は会社につながった。これから会社を休んででも銀行の支店に行って、口座を復活させてもらいにいかないと、明日からの生活が成り立たない。その銀行の新宿支店に行った。が、鈴なりの人だかりだ。そして、銀行に向かう途中の他の銀行の支店も同じような人だかりができている。どうやら被害はマサルの使っている銀行だけではないようだ。

「なにかとんでもないことが始まっている」

新宿の街をあちこち歩くうち、マサルはそういう感じを強く持った。なにがあったのだ?


「日本の銀行が全てやられました。コンピュータのハッキングです」
「それはわかった。詳細を聞きたい。もちろん対策もだ」

山根財務大臣は声は落ち着き払っていたが、顔は引きつって青くなっていた。山根大臣に国家緊急対策省の山東次官による説明が始まった。

「日本の各銀行では、現在新オンラインシステムの構築中で、多くのSEやプログラマーがこの仕事に従事していました。人手不足の昨今、どうしても日本人だけでは足りず、外国人のSEやプログラマーも多く集め、2021年には新オンラインシステムが稼働する予定でした」
「外国人をなぜ使った!」

山根大臣が叫んだ。

「単純にSE/プログラマーが足りないのです。しかも、深刻なほど足りません」

山東次官は昨年の新聞のコピーを取り出し、山根大臣に見せ、説明した。

「この記事を見て下さい。昨年の今頃の記事です。新銀行オンラインシステムは、仮想通貨や、ブロックチェーンによる海外送金システムなどもATMで手軽に使えるような画期的なものです。新時代の人工知能技術の発達なども視野に入れ、世界情勢を理解し、株式の相場の動きに先んじて株式市場に連動する人工知能の投資と回収のシステムまで含めた、世界でも例を見ない、複合的で意欲的なシステムを目指していました。しかし、日本でそれらの開発をまかなえる、創造的プログラマが不足しています。その数は年間で70万人と言われており、オープンソースが主流の現在の銀行システムでは、日本人で使えるプログラマはさらに減り、都合、100万人の外国人プログラマ/SEを賄う必要がありました。そのため、諸外国の辣腕プログラマを世界各地でスカウトして、今回のシステムに投入しています。これにより、銀行業界での削減人員は極限までできる。日本は世界一、人を使わない’機械銀行システム’が動き始めるはずでした」
「それがどうしてこんなことになったんだね」
「スパイが紛れ込んでいました」
「世界中からかきあつめた優秀なSE/プログラマにC国人も多くいたわけですが、そのうちの数%の人間がどうやらC国のスパイでもあったようです。そこにバックドアを埋め込まれていました」
「システムはリリース前に必ずチェックされていたはずじゃなかったのかね?」
「それが。大臣、さすがにここまで多くの外国人プログラマを使ったシステムは、国内巨大メーカーでもその全部をチェックするなんてのは非現実的なんです。だから、チェックは実際にしていないにもかかわらず、チェックした、という申告を財務省にしていた」
「モラルハザードじゃないか!いや、法令違反だ!」
「大臣。そうは言っても、今や国中がそうじゃないですか。信頼できると思われていた、上場した製造業の法規通りでない検査が発覚しましたよね。それを始めとして。。。。」
「もういい。わかったよ」

しばらく会議の場には沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは、やはり山根大臣だった。

「で、だいたい状況はわかった。で、今後はどうするんだ?日本中が大混乱じゃないか。新幹線も動いていないぞ」
「とりあえず、毎日の取引のバックアップが、銀行各社とも取ってあります。これを今日のうちに全て復活させます。国民のみなさんには、今日の朝からの取引は大から小まで、全てご破算ということにするしかありません。既に銀行各社ではその準備を進めており、本日午後3時にはデータが昨日の取引終了の時刻のものに復活します。緊急に資金が必要なところには、政府の緊急資金バックアップを用意しました。インフラの一部は既にそれを根拠に動いています。携帯電話網などです。精算は復旧後ということで、無制限の貸出に対応しました」
「わかった。他にできることがないなら、それでいく」

山根大臣は閣僚の中でも優柔不断と言われることが多く、なかなかはっきりした物言いをすることを避ける人だったのだが、この非常時にそれは消し飛んだらしい。「それでいく」の言葉の断定と重さはそれまでの山根大臣の優柔不断な態度からは、全く想像できないほどの強さがあった。

「各省庁と銀行各社、企業への告知は?」

山根大臣が聞いた。

「既に1時間前に告知済みです」
「わかった。その計画通りにお願いします。諸外国への影響はどうかね?」
「当然ですが、東京マーケットは機能していませんから、昨年からアジアの中心になった香港マーケットが反応し、日本株は総合して、平時の1/20です。」
「私の世界向け談話は用意してあるかね?」
「ここに」

山根大臣は、山東次官から渡されたA4一枚のワープロ用紙に目をやり、しばらく考え込んでいたが、すぐに答えた。

「よろしい。これでいく。午後3時のタイミングで全て動きだすよう、万全の体制を整えてくれ。午後3時に緊急記者会見を行う。各マスコミを財務省ロビーに呼んでくれ。そこでやる。マイクはいらない。私の肉声でいく」

山根大臣の目が輝き始めた。「危機はチャンス」である。この危機の扱い一つで、山根大臣は次期総理大臣を狙えるところに、いっきに上り詰める。政治家としての山根の野心が、危機をどう使うかという「コンピュータつきブルトーザー」に変身をした瞬間だった。山根はすぐに自分の懐からスマートフォンを取り出し、総理大臣に電話をした。大臣閣僚は特別の携帯回線を持っているので、非常時でも常につながるよう、配慮されていた。

「総理。ご報告は山東次官がこれからそちらに伺って行います。全般的に私が仕切ります。大丈夫です。ご安心を。本日3時に全てが元通りになります」

山根は山東次官に目配せした。山東次官はすぐに呼応し、すぐに書類の束を抱えて、会議室を出ていった。山東次官は走りながらつぶやいた。

「山根め、電話一本で次期総理大臣の椅子を手にしたな」


その頃、M銀行の1台の黒塗りの車が雪の飛騨山中に向かっていた。

「早くしろ」

運転手は答えた。

「部長、だめですよ。タイヤもスノータイヤに変えましたが、これ以上の速度はこの雪中で事故ですよ。そうなったら、目もあてられません。黙って乗っていてください。最善を尽くします」
「頼むよ」

クルマは猛スピードで東京から、飛騨の山中に向かっていた。電気が途絶えていたので、高速道路のサービスエリアは閉まっている。当然、飲料の自動販売機も動いていない。トイレの水もおそらく出ないままだろう。料金所のゲートも開きっぱなしだった。1時間も猛スピードで走っただろうか。飛騨の山並みが見えた頃、路面も雪に覆われていた。クルマはスピードを落とし、慎重に先に進んだ。念のため、もう一台のクルマが別のルートから飛騨の山奥の銀行のバックアップセンターに向かっているはずだ。携帯電話網が切れているので、連絡がつかない。仕方なく、自動車に入れておいた、衛星携帯電話のスイッチを入れて、もう1台のクルマを呼んだ。

「千田くん、こちらは山田だ。大丈夫かね?」
「山田部長、千田です。順調に飛騨に向かっています」
「分かった。急ぐことではあるが、事故を起こしたらうちの銀行も日本も一巻の終わりだ。慎重に頼むよ」
「わかっています。では」

電話は切れた。山田部長は運転手に向かって言った。

「あちらは順調だそうだ。こちらはどのくらいで到着かね?」
「もうすぐサービスエリア兼料金所を降ります。この後、山道を登って40分。だいたいあと1時間弱でオフラインデータバックアップセンターに到着します。手はずでは、先方でデータセンター職員が昨日までの全トランザクションを記録したメディアのテープを6つずつ2組、用意してまっています。今日午前中に、衛星携帯電話で確認を取りました。テープを受け取ったら、取って返して、午後1時には東京のデータセンターの技術者に渡すことができます」
「わかった」
「お、あの建物がデータセンターか」
「そうです。非常電源で動いているので、明かりがついてますね。雪で今の季節は昼なお暗いですから、電気は必須なところではありますが。。。。」

しばらくすると、クルマのエンジン音のサイクルが低くなったのがわかった。雪の中、クルマはオフラインデータバックアップセンターの駐車場に滑り込んで止まった。エンジンはかけたままだ。極寒の中、ここでエンジンを止めると、次の起動が迅速にできない。

「部長、入り口にセンターの主任がいます。すぐに荷物を受け取って戻ってきてください。そうしたら、すぐに発進しますから」
「ご苦労だね。じゃ」

ガチャ、と音がしてクルマの後部のドアが開くと、外は雪の降る静寂な山間である。山田部長は、傘もささず、除雪が済んだ駐車場から建物の玄関に行き、中で係員とニ、三、話をして、ダンボール箱を抱えて出てきて、そのままクルマの後部のドアを開き、クルマの中に滑りこんできた。さらさらの雪が少し、冷気とともにクルマの中に降り込んだが、すぐに部長はドアを締めた。

「行ってくれ」

部長は段ボール箱と一緒に、冷たくなった手をさすっていた。

「行きますよ」

運転手は東京への道を走りはじめた。すると、入れ替わりに、別の似たような黒塗りのクルマが駐車場に滑り込んできた。山田部長は呟いた。

「千田くんも来たな。さ、発進してくれ」
「わかりました」

バックアップセンターに段ボール箱は2つ用意してあった。両方とも全く中身は一緒だ。そして、2台のクルマは競うように、東京に向かって走り初めた。その銀行に限らないが、この国の銀行では、オンラインでのバックアップと同時に、オフラインのバックアップを行うのが普通だ。

東京のデータセンターでテープにバックアップされたデータは、毎日取引終了後に、夜の高速道路で飛騨山中にあるオフラインバックアップセンターに持ち込まれ、いざというときのバックアップが保管されている。もちろん、オンラインでもバックアップがされているのだが、オフラインと二重でバックアップを取っておこくことで、非常時に備えているのだ。

バックアップデータセンターでは、オフラインバックアップでバックアップしてあったトランザクションのデータは、オンラインで来たバックアップデータと比較され、一致したものが、正確なバックアップデータとなり、オリジナルとなる。オリジナルはもう一部コピーされ、翌朝の午前4時ごろまでに1対が用意される。

非常時、オンラインでのバックアップからのリストアができない場合、オフラインでデータをテープの形でバックアップセンターまで取りに行き、それを東京のデータセンターに持っていって、オフラインでバックアップデータのリストアができるようになっている。その際も、2つのコピーを別々のルートで取りに行き、もしもリストアするデータを積んだクルマの事故があったときなどにも対応できるようにしてあるのだ。

今回はオンラインの回線が使えなくなっているので、オフラインでのリストアが試みられている。東京からは山田部長の乗ったクルマと、千田副部長が乗った二台のクルマが向かい、東京にバックアップデータを持っていく手はずになっている。

飛騨から東京へ。2つのクルマが銀行と日本の将来を決める重要なデータを運んでいる。競うように猛スピードで東京のデータセンターに向かって別々のルートで走る。そのクルマを追いかけて、それぞれのクルマのすぐ後ろに、それぞれ1機ずつの正体不明のドローンが追いかけていくのを、山田も千田も、それぞれのクルマの運転手も、気がついていなかった。

 


「企業主義」の蹉跌



世界における現代の大きな問題は「Corporatism」であろう。日本語に訳せば「企業主義」。それは資本主義でもなければ、社会主義・共産主義でもない。これをあらゆる階層の人が意識することが、人間の生存に重要な時代になったのだ。検索エンジンでも「Corporatisum」で検索すると、多くのトピックや動画が引っかかる。欧米では当たり前に議論されている、大きな問題なのだ。

現代における「企業」は法の上で定義されている「人」、すなわち「法人」である。それは「人」である以上、人としての倫理や文化の保護や、常識を持つ必要がある。なぜならば、それが「人」であれば、「人」は人の社会のメンバーの一員であるし、そうでなければならないからだ。それらのものが、人間社会に新しいメンバーとして入った「新人」である「法人」には、不十分な教育しかされてこなかった、という事情がどうやらある。企業、法人は、人間であると認められながら、人間としての教育を受けてきていないため、人間の歴史を知ることもなく、人間が長い歴史の中で培ってきた文化や倫理なども持っていない。「法人」とは「人工知能」「ロボット」のようなものだ。これから人間が人間としての教育をしていかなければいけない存在である。

「法人」は、人の世の中に生きる「人」である以上、人の世の中にある「明文律」にはもちろん従う必要があるが「不文律」にも従い、人の世の良き発展のために生きる義務が生じる。しかしながら、誕生してまだ200年ほどの歴史しかない「法人」は、短期間に非常に大きく成長したその体躯とパワーに比べ、精神がまだ成熟していない「子供」であり、心身の成長にアンバランスがある。それは別の言い方をすれば「モンスター」ということになるだろう。

大きく力のある企業はしばしば、日本では「ドラえもん」の「ジャイアン」に例えられることがある通り、乱暴を働いても、反省するということがなく、それが人間社会を破壊するものであっても、自我の自覚もなく、それを振り回し、他人の迷惑を省みることもない。加えて、従来の人の世の中をある程度知っており、そのパワーにあかせて、人の世の仕組みに介入し、自らの自我を、その強力なパワーで通そうとする。

人が作った人ではない強力なパワーを持った「人」。それが現代における「法人」である。

人間が意識して作り、人間を部品として作られ、人間の世の中で人間の一人として作られたにもかかわらず、私達人間は「法人」の幼児教育に失敗し、いま、私達はそのツケに悩まされているのだ、というと言い過ぎだろうか?

私達は自分の子供として産み落とした「法人」が、まさかこんな短期間に、人間社会の良き一員としてではなく、人間社会を脅かす「モンスター」として育ったことを、後悔している。しかし、間違った育て方で肥大化したそれは、現実に私達の社会を破壊し始めている。

私達は「法人」を殺し、今いちど、新しい育て方で、新しい「法人」を作るべきだろうか?あるいは、今ある「法人」を、「良きモンスター」として、育て直すべきだろうか?

私達は今、その判断の困難さだけではなく、その判断と実行の結果にも恐れおののき、かつ、実行するとしても、その困難さを考える。そのため、なかなか判断ができずにいる。潰すのか?飼いならすのか?これからの経営学というのは、おそらく、その視点から考えられなければならないのではないか。

それはおそらく「企業倫理」などという言葉に閉じ込められるような小さな問題ではなく、その出自に遡って議論し、これから我々はこの「モンスター」を抱えた人間社会をどうすべきか、という現実の問題として、議論し、答えを出し、実行していかなければならない、そういう問題なのだろう。

 

「隠すこと」はそのまま不利になる社会

インターネットができてこのかた、「隠す」ということは一切できなくなった。マスコミ報道を隠せば、知らない人に余計なことを教えることにはならない、という社会はなくなった。たとえば、Apple社の件がそうだ。

Apple社は、電池の劣化によるリブートを抑えるために、つまりユーザーの利便性を優先して、使い始めて1年たったiPhoneの性能をわざと落として遅くしていた、という。それをユーザーの一人が発見し、発見した事実をApple社に問いただしたところ、それを認めた、とのことだ。さらに、この件は訴訟にも発展した

しかしながら、こういったことが「ユーザーに隠されていた、ということが、まずもって大きな問題であることは言うまでもない。説明書などに「使いはじめて1年以上たったiPhoneは、XXという理由によって、動作が緩慢になることがあります。これが気になる場合は、最寄りのショップに行って、電池を交換すると、元のスピードで快適に使うことができる場合があります」ということが書いてあるのであれば、「そういうことなんだな」と、納得がいく。あるいは、スピードが遅くなるタイミングで、表示が出て「電池が劣化しているので、このままお使いになると、ご利用途中でリブートすることがあります。それでもお使いになりたい場合は、こちらのボタンを押してください。リブートをなるべくしない、低速・低電流モードにするには、こちらのボタンを押してください」など、ユーザーに選択肢を与えてくれる、というのも良いだろう。

問題は、そういう表示も説明も一切なしで、システムの変更が行われた、ということであることは、言うまでもない。何事も、特に広汎な人たちに使われるプロダクトや仕組み、サービスは「公正であること、オープンであること」がより求められる。そして、この流れはネットの存在によって、さらに加速されるであろうことは言うまでもない。

しかし、これまで隠していたものが、隠している人の意思とは関係なく、勝手に暴かれる、ということを快く思わない人もいることだろう。しかし、その秘密を守るだけのために、インターネットを止めることは、もはやできない。インターネットが止まれば、世の中の動きの全てが止まってしまう。OSもソフトも自動運転車もクラウドで動く昨今にあっては、インターネットが止まるということは、人間社会の血流を止めるのと同じことになる。例えて言えば、水道管の破裂を止めるのに、すべての水道を止めるわけにはいかない、というのと同じ、と言ってもいいかもしれない。

インターネットは、政治も経済もビジネスも変えた。「公正に、オープンに」。これが今という時代である。

 


男の前用のシャワートイレ

最近、日本ではどの公共施設、商業施設に入っても「シャワートイレ」が入っている。入っていないと、ろくな施設ではない、というように言われることも増えてきた。しかも、一般家庭にも、もちろんシャワートイレが増えている。しかし、これだけ日本中に普及しているシャワートイレだが、まだ「男の前用」のシャワートイレはない。

「男の前用のシャワートイレ」を作るには、コンピュータ画像処理で、ターゲットに狙いを定め、シャワーの水を噴射する、というやり方をしないと、衣服を水浸しにしたりすることもあるから、けっこう作るのが面倒だが、Raspberry-Piなんか使って、ハッカソンで作ると面白いんじゃないだろうか?いや「どうやって発表するか」という問題はあるかも知れませんが。。。。あ、おもちゃを使う、って手もないわけではないか。。。。

「ピッ!対象を認識しました。そのまま動かないでください。水が出てきます」

とかってアナウンスがあって、両側からシャーッと、水が出て来る、とか。

「ピッ!対象が小さすぎて認識できません」

と、言われると悲しいんだが。。。。