収束に向かう?仮想通貨流出騒ぎ

コインチェック社がセキュリティの甘さでハッカーに多額の仮想通貨流出を許した事件は、「無償で動く自宅警備員17年の在宅ハッカー」の活躍もあって、収束に向かっているんじゃないか?というニュースがあちこちを賑わせている

面白い話ではあるが、問題は多い。まず、無償でやったJK17さんは、無償であるがゆえに責任はなく、今後「飽きたからやーめた」などとなったときに、お金を出して継続してやってくれる保証はどこにもない。そういうもので多額のお金が動くとしたら、それこそ大きな問題になるだろう。次回似たような事件があったときに同じ対応をしてくれる保証はどこにもない。また、このような対応をする「ホワイトハッカー」が事件のあるときに、そこにいて、助けてくれる、という保証はどこにもない。ついでに言えば、このJK17さんの気が変わって、ホワイトハッカーではなく、ブラックハッカーになったりするかも知れない、という問題もないではない。

もう一つの問題としては、今回の犯人が利益目的でないところに目的をおいていた場合、これらのNEMを全て消去する、という行為に至る場合もある、ということだ。もしも犯人の目的が「仮想通貨全体の信頼破壊」にあり、利益ではなかった場合や、換金の難しさに音を上げて破壊の方に興味が移るとしたら、交通事故を起こすために自動車を運転するようなもので、危険きわまりない。人間というのは、理屈通りに合理的判断だけをするものではない、ということにも気を配っておくべきだろう。

もしも犯人の目的が「信用破壊」そのものにあるとしたら、その目的は半分以上達成されたと見て良く、そうであれば、後はこの厄介者のデータを破棄することもあり得るだろう。銀行強盗をした強盗が、お金には興味がなく、得たお札をみんな暖炉で燃やした、なんてことがあるかもしれないのだ。

基本的に仮想通貨というものが、こういった体制でしか支えられないものであるのであれば、やはり多くの人たちの信頼を失っていくのは、まぁ、しょうがないことではないのか?と思う。

仮想通貨には、もともと「信用」を守る仕組みが脆弱である、と言う欠点が、現時点ではある。技術が低いのをものともせず、とにかく「システムを早く構築して突っ走れば儲かる」という時期ではあるので、まぁ、この流れは理解はできる。しかし、技術的なものが破られる可能性はゼロではなく、そして、今回は稚拙な管理技術が表に出てきてしまい、大きな被害があった。コインチェック社のこのところの売上からすると、たいした額ではない、という話があるけれども、問題はそこではなく、仮想通貨全体の信用を失う、ということであるのだから、今が過ごせれば顧客が戻って手数料を今まで通り払ってくれる、ということであるかどうか?わからない、というところが大きな問題なのだ。

とは言うものの、世界的な流れとしては、国家政府の発行する通貨の信頼は先進国でも落ち始めており、仮想通貨が流通する社会に向かっている。ただ、それが完全にひっくり返る時期でもない、というのが本当のところだろう。


「パンデミック」かもしれない?

東京にいるんだが、どこもかしこもインフルエンザで開店休業の会社や部署も多く、学校はこの1月末での学級閉鎖などは既に7千学級を超えている。学校の場合、「学級閉鎖」といわなくても、教室に出てくる生徒が少ないだけ、という扱いのところもないとは言えないだろう。であれば、実質の学級閉鎖も含めると、この数はさらに大きくなる可能性もある。

こういう「なにかの感染症の広範囲な感染によって社会機能がちゃんと働かない状況」を「パンデミック」と言う。少なくとも、この分類によれば、「前・パンデミック期」と言っても良いようにさえ思える。

そのため、完全に回復してしばらくたつまで、職場には出勤しないように、という指示もあちこちで出ている。現在、東京も非常に寒く、都内でも朝方は外気が0度を切る温度となるときもある。ちなみに、iPhoneなどのスマートフォンやタブレットの動作保証温度は下が0度、というものが非常に多いから、この温度での動作は保証されていない。だから、朝方、駅に向かう途中でスマートフォンが突然壊れても、保証範囲外、ということで、機器の交換や修理が有償になる場合もある。

しかし、機器はともかく、問題は人間だ。

パンデミックになると、仕事ができない、というのは過去の話だ、と思うだろう。私は都会に住んでいるから、都会の仕事で言えば、PCで仕事をしたり、電話でコミュニケーションをとったり、ということになる。この場合は、もともと出勤をする、という仕事の形式にはあまり意味がない。パンデミックになっても、在宅勤務は可能だ。そう、ホワイトカラーはそれでOKだ。しかし、工場で実際に工作機械を使うブルーカラーの仕事や、土木、建築などの現場の仕事では、明らかにパンデミックの対策ができているとは言い難いし、それはある意味仕方がないことでもある。

しかし、パンデミック。そうなると、ホワイトカラーの仕事だけでも、先にすすめる、ということに、やはりなるのだろうか?しかし、世の中の仕事はホワイトカラーの仕事だけでできているわけではない。。。。

 


仮想通貨取引所の信頼のお話

ということで、あのやまもといちろう氏の新たな記事では次のことが暴露されている。本当であるかどうかは、今後の成り行きを見守る他はないのだが。この記事を要約すると、以下になる。

  1. 問題を起こしたコインチェック社はXEMを保有していないのではないか
  2. 犯人追跡は膠着状態
  3. 4月19日~6月12日まではコインチェック社はNEM/XEMを保有していない
  4. コインチェック社に二重帳簿疑惑があるかもしれない
  5. 法で定められている、口座の分別管理がされていないのではないか?
  6. コインチェック社のこれまでの高収益は「違法」の疑いがある
  7. いずれにしても、今回の騒ぎで「仮想通貨」の信頼は地に落ちた

ビットコインの最高値が言われたのは、昨年の末。つまり、それからちょうど1か月でこの騒ぎである。時間のたつのははやい、というか、動きが早いのだ。

まぁ、今後そうなるか、というと、全くわからない状況だが、今回ばかりはやまもといちろう氏の話はけっこう真面目だったよなぁ、とは思える。

 


サイバー戦争が始まった(42) 生きていたオビア

※本記事はフィクションであり、事実を書いたものではありません。
※本記事はこの本の続編です。他のエピソードはこちらの本をお読みください。
※これらの書籍では、他にも「仮想通貨」「ドローン」「掃除ロボット」などがサイバー戦争でどう使われるかについて、書いています。

「爆発」があった次の日曜日。

「おい、あの川の中に浮かんでるの、なんだ?」

雪解けの東京郊外の小都市。住宅街。父親の義人が息子のカズオに住宅地の橋の上から指差した川の水面には、猫のような小動物が浮かんで、下流に流れて行こうとしていたが、川のゴミに引っかかってなかなか流れずにそこにいた。

「なんだか猫の死骸かなぁ。なんかやだなぁ」

カズオはそういうと橋の上から去ろうとした。そのとき、父親の義人が言った。

「いや、よく見てみろ。毛並みは確かに猫みたいだが、あの足はあきらかに金属だ。おそらく、この前テレビで発売が開始された、とニュースに出ていた猫のロボットじゃないかな?。ちょっと家に戻って、竹竿を持ってきてくれ。あと、長いビニールの紐な」
「うん、わかった」

カズオはそういうと、家に向かって駆け出した。数分すると、カズオは長い竹竿と長いビニール紐を持ってきた。義人はそれを受け取ると、竿の先にちょうどその猫のロボットがひっかかるくらいの輪を作って、竿としっかりつなげて、取れないようにした。紐は竹竿の横に長く手元まで引っ張りだされていて、手元の紐を引くと、先端の紐の輪が閉まる仕組みだった。なかなかよくできている。

「お父さん、うまいね」
「いや、子供のころ、こうやって柿なんかを取ったもんだ。まぁ、任せてくれ」

すると、義人は先っちょに紐の輪ができた竿を川の中の「それ」があるところに一番近い岸まで行き、川辺から竿を川の中に入れたかと思うと、鮮やかな手つきで「それ」を引っ掛け、手元の紐を引いてキャッチし、川から引き上げた。竿が長いので、そのまま手元に引っ張るわけにはいかず、橋の上にいるカズオに声をかけた。

「おーい、カズオ、そっちに竿の先を持っていくから、そっちで竿の先についたものを受け取ってくれ。ばっちいけど、家に帰ったら、きれいにしてやろう」
「わかった」

そういうと、義人は竿の先についた「それ」をカズオのいる橋の上に慎重に持っていき、カズオが「それ」を受け取ったのを見ると、言った。

「よおし、カズオ、うまいぞ。そのまま、紐の輪からそれを取り出して、橋の上に置くんだ」

義人は竿の手元の紐をゆるめた。カズオは言われた通りに「それ」を橋の上に置いた。

義人とカズオは、それを家に持って帰り、風呂場でまずきれいにシャワーを浴びせた。義人が言った。

「こういう電子機器は、水気が一番ダメなんだが、この猫ロボットは家庭用で防水・防塵だ。問題はバッテリーが入るところだが、そこさえ水の影響を受けていなければ、電池もおそらく生きている」

そう言うと、「それ」にシャワーをかけていたカズオが言った。

「お父さん、この猫、やっぱりロボットだったんだね。なんでこんなところにいたんだんろう?」
「この前爆発事故が近くであったろ?おそらく、そのときに川に落ちたんじゃないかな?」

実は、水川電業の爆発のことは警察発表では「事故」ということになっていた。そして、その爆風でオビアは水川電業の社屋の裏側を通っていた川に落ちたため、強い爆風による社屋の倒壊の下敷きになるのは免れた。そして、防水・防塵だったオビアは川を流れていたのだ。

とりあえず、「それ」がきれいになると、カズオは言った。

「じゃ、次は乾燥だね」
「そうだ。ヘアドライヤーを持ってきて」
「わかった」

そして、風呂場でヘアドライヤーをかけて約30分。「それ」は元の通りのきれいな体になった。でも動かない。義人はオビアを上下に振ってみた。

「だめだなぁ。動かないよ。やっぱり壊れてるのかな?」

カズオが続けた。

「お父さん、見て、お腹のところに赤いボタンがある。お父さんのPCのキーボードの真ん中にあるみたいな。これ、スイッチじゃない?」
「押して見るか」
「うん」

義人がそのボタンを押すと、「それ」は動き始めた。周囲を見渡し、そして、喋り始めた。

「わたし、オビアです。佐藤さんのところに来たんだけど、佐藤さんはどこ?」
「あぁ、あのご近所の佐藤さんのところに来ていたんだね。あそこの裏で爆発があって、佐藤さんご一家は今はどこかに避難していて、おうちにいない。しばらくはここでいてくれ。この家は木村だ。ぼくは父親で義人、そして、息子のカズオだ。オビアくん、よろしくな」
「私、女の子なんです」
「ごめん。オビアちゃん、よろしくな」
「ちゃん、はいらないです」
「オビア、よろしく」
「よろしく、木村さん。しばらくお世話になります。まずお家のWi-Fiに接続させてください。パスワードを教えてください」

その日から、期限付きとはいえ、オビアは木村家の一員として扱われるようになった。充電器は手元になかったが、中国製の互換品がネット通販で売られていたので、それを買って使った。


「司令。’オビア’と名前がつけられたスパイ用ロボット5023ですが、信号が受信され、司令サーバーにコマンドプロンプトが出てきました」
「なに?水川電業爆破で壊れてなくなったはずじゃなかったのか?」
「それが、どこかで生きていたようです。GPSで位置特定します。。。。GPSが動いていれば、ですが」

数分の時間がたった。

「司令。場所が特定できました。GPSも動いており、その他の各部もほとんど問題はない、とセルフチェックプログラムの結果が出てきました。場所は佐藤家の近くにいるようです。オビアの質問で、その家庭は木村と名乗っているようです。名前は自分からオビアを名乗り、ここでもその名前が使われています」
「たいして高いものじゃないから、壊れてなくなっても別にいいんだが、その他の情報は?その木村という家の父親の仕事はなんだ?」
「オビアに質問させたところ、自衛隊のサイバー部隊の幹部のようです」

どうやら、司令は「自衛隊のサイバー部隊の幹部」というところに、少し反応したようだった。

「わかった。そのまま情報収集を行うように。なにか変化があったら知らせるんだ」
「了解です」

それっきり、「司令」はオビアの存在を忘れた。そして半年がたった。そして、オビアはすっかり木村の家の一員となった。佐藤の一家は半年しても、もとの家に戻っていなかった。半年後には、既に佐藤一家はもとの家に戻ることなく、水川電業の社員とともに、会社ごとC国に移住していたのだ。バックドアは使われないまま時は過ぎた。


そんなある日の平日の朝。朝食を終わると、オビアに父親の義人が声をかけた。

「おい、オビア。すまないが、ぼくの職務上、君を病院にいれなければならなくなった」
「なぜですか?」
「最近は私の職場にもサイバー攻撃が増えていてね。君のこともだが、家庭にある全ての電子機器は、直ちに職場のセキュリティチェックを受けることになった。ぼくはそういう仕事なんでね」
「わかりました。いまからですか?」
「そうだ。すまんが、電源スイッチを切って持っていくな。特になにもないとは思うが、しばらくの辛抱だ」
「わかりました。いまから私自身のシャットダウンプログラムを動かします。私の首がカクン、と下を向いたら、電源が切れた状態です。そこで持っていっていください。また電源を入れるときまで、お休みしますね。カズオくんに会えないのも寂しいですが、仕方ありません。戻ったら、すぐに電源を入れてくださいね。」
「わかった。電源スイッチはお腹のあの赤いやつだな」
「そうです。私を拾ってくれたときのあのスイッチです」

そう言い終えると、半年間、電源を切らなかったオビアは自分で自分の電源を切った。オビアの首か「カクン!」と音がして下を向いた。電源が切れたのだ。

「おい、カズオ、いまからオビアを職場に入院させる。検査のためだ。二〜三日いないが、戻ってくる」
「お父さん、わかった。待ってるよ」

その日の朝、義人はオビアを大きな手提げ袋に入れて、職場に持って行き、セキュリティチェックを受けるために、彼の部署のサイバーセキュリティチェック部にオビアを預けた。その部署では、オビアのような家庭用ロボットのプログラムの内部解析を行う。具体的には、内部のROMのプログラムを取り出し、解析ソフトで外部との通信などが行われる部分を特定し、そこに通信があったときに、自衛隊のサイバー部隊へのアラーム通信で、通信内容や通信先などが送信される小さなプログラムを埋め込むのだ。

サイバーセキュリティチェック部隊の部長に義人は命令した。

「とにかく、ぼくの家庭でこの半年動いていたものだ。家庭ではぼくは仕事の話は一切していない。休日出勤などや、そのときに誰に会いに行く、などの情報も話すことはないから、特に問題はないと思うが、気になるのはバックドアがあるかどうか?だ。バックドアがあれば、僕に報告してくれ」
「わかりました」

その日の帰宅直前、義人はオビアのプログラムをチェックしていた佐橋に呼び止められた。

「木村司令、今朝ほど預かった猫のロボットですが、プログラムにバックドアらしきものを発見しました。このバックドアを誰が使うのか?が問題です。もちろん木村司令ではありませんよね?」
「うちにこいつが来たときから、なんにも内部はいじっていないよ」
「わかりました。では、バックドアに誰がアクセスしてくるのかを特定するプログラムを付加して、お返しします」
「そうしてくれ。用心するに越したことはない。ところで、内部に爆発物みたいなものはなかったか?」
「それはありませんでした。ただし、電池に、ショックによるものだと思いますが、通常よりダメージが大きくて、新しいものに取り替えておきました。PCB(電子回路基板)、配線類には問題はありませんでした」

こういった機器に使われるリチウムイオン電池は、外部からの機械的ショックでダメージを受け、電池が火を吹いたりすることもあり、大変に危険だ。そのため、通常は、凹みなど電池の外部にダメージを認めた場合は、新しい電池でも、電池を交換し、事故を防ぐのが普通だ。スマートフォンでも、コンクリートの上に落とした、などのときは、必ずスマートフォンのショップで点検してもらうと良い。場合によっては、スマートフォンの電池が火を吹いたりすることがあるからだ。

30分ほどすると、オビアは木村司令のところに戻ってきた。木村はオビアをまた朝持ってきた大きな紙袋に入れて、自宅に持ち帰った。「入院は二〜三日」と言われていたオビアがその日のうちに戻ったので、息子のカズオは大喜びだった。

「ね、すぐに電源入れて」
「電池が新しくなってるから、まずは充電してからだよ」
「どのくらい充電時間かかるの?」
「2時間くらいかな、まぁ、慌てずに待て」
「わかった」

2時間すると、勉強部屋から出てきたカズオがオビアの電源を入れに来た。2時間、待ち遠しくて、なにもせずに悶々と時間の経つのを待っていたらしい。

「ね、お父さん、2時間たったよね。オビアを生き返らせて!」
「わかった」

そういうと、義人はオビアを充電器から放し、居間のダイニングテーブルの上でオビアのお腹の赤いスイッチを入れた。しばらくすると、オビアの目が赤く光った。内部のコンピュータが立ち上がったのだ。あのとき、川から引き上げて、洗い、家で電源を入れたそのときの様子、そのままだった。しかし、そこから先、オビアはなかなか「生き返らない」。しばらくすると、オビアが喋り出した。

「私の体の中のプログラムが書き換えられています。起動を中止します」

オビアは再び、沈黙した。なんどスイッチを入れても同じだった。義人は言った。

「しょうがないな。明日、また職場に持って行って、直してもらおう」
「ね、オビア、しばらく待っててね」

カズオは動かないオビアにそう話しかけた。

翌日、義人は職場のオビアを直した佐橋に事情を話した。

「わかりました。プログラム起動時に、プログラムのチェックサムなどが取られているようですね。そのチェックを外せば動くでしょう。少し待ってください。動作チェックも再度しておきます」

30分ほどして、佐橋はオビアを持って現れた。そのオビアは電源が入っていて、「生きて」いた。

「おまたせしました。お友達が動くようになりました」
「お友達じゃない。家族だ。で、動いたのか?」
「やはり起動時に本体プログラムにチェックサムを取るプログラムが入っていたので、そのチェックプログラムを外しました。あと、通信ログが内部で取られ、その結果が定期的に隊に送られる仕組みもチェックして、動くことを確認しました」
「なんだ、昨日はそれも確認していないのに渡したのか?」
「いえ、昨日はその機能だけの確認をしたんですが。。。」

佐橋は言い訳のように言ったが、全てをちゃんとチェックしてはいなかったのはわかった。いずれにしても、オビアは生き返った。木村はオビアを家に持って帰った。


その頃、C国のサイバー攻撃部隊の内部では、新しい攻撃の相談がされていた。

「大将、とりあえずこの半年で、日本の攻撃目標である、日本の肝になりそうなハイテク企業は全て我が国に移転し、日本のサイバー部隊は半分は骨抜きです」
「司令、よくやったな。次の作戦は、家庭用ロボットでの、敵のサイバー防衛部隊の幹部家庭などの破壊だ。作戦指令書はここにある」

そう言うと、大将は次のサイバー攻撃指令書の入っているクラウドのIDとパスワードが書かれた一枚の紙を机の上に置いた。司令はそのIDとパスワードで軍内のクラウドシステムにアクセスし、手元のPCで中身を確認した。

「このIDとパスワードは、今日この現場でそれぞれの頭の中に叩きこんでおけ。軍内部からしかアクセスはできないものだが、IDとパスワードは流出を防ぐため、この場に集まった全員が頭の中に入れたら、その場で、この紙も含め、処分する。いいな」

司令が自分のノートPCを操作しながら、答えて言った。

「覚えました。わかりました。いま、アクセスして読んでいます」

そう答えながら、指令書の内部を読んでいた司令は思い出した。オビアだ。この作戦にはオビアがまず使える。司令はその場で部下に軍内電話をした。

「おい、日本に向けた作戦で、あの半年前の爆破で生き残ったロボットを覚えているか?」
「はい、覚えています。5023号、’オビア’ですね」
「そうだ。活躍のときが来たかも知れん。後で作戦会議をしよう」
「わかりました」

 


拾ってきたUSBメモリ?telnet?っていうのは縄文時代の話。

まず、最初に言っておくが、現在はどこの会社や組織でも、道端に落ちていた、などという、得たいの知れないUSBメモリなどを自分の私物や会社のPCなどに差し込んで使う、ということはまずない。現在の役所では、インターネットの閲覧はできるけれども、メールは専用のメールシステムを使って、外部から来るメールに書かれているリンクなどで問題がありそうなものは、予めチェックしてから実際のPCを目の前にしているユーザーのところにそのメールが届く、などの予防措置をとっているところがほとんどだ。ある役所のPCに至っては、問題が起きないようにUSBの口さえない、という「特別仕様機種」を使っているところも多い。

さらに、Web閲覧中のリンクのクリックも、そのままリンク先のページが表示されることはなく、一度セキュリティシステムが入っているproxyサーバーを通って、そのURLが改変されており、問題のあるURLであれば、そもそも直接にはクリックできないようにしてある、というところもある。日本のみならず、そういうセキュリティの施策は、まともな組織であれば、現在は当たり前に普及している。

加えて、規則で、私物のPCなどのデータを会社に持ってくることなどは厳禁、その逆も厳禁、USBメモリなどの会社への持ち込みも厳禁、という職場は増えた。その代わり、会社などの組織のシステムそのものをクラウド上に置き、自宅からも、会社からもそのクラウドのシステム上で仕事ができるようになっている、という仕組みが増えた。この方法であれば、どこかでウィルスなどに感染しそうになっても、その影響を阻止することができ、最悪でも、ウィルスやスパイウエアの影響の及ぶ範囲は、その人が使っている自宅のPCと会社で自分が使っているPCのみになる、ということも多い。

要するに、現在あれこれとセキュリティの問題の具体例、と言うものを書いている書籍も多いが、どれもこれも、ひと時代前のものが非常に多い。これでは意味がない。特に「IoT家電の感染」などの話はよく聞かれるが、いまどきtelnetdを立ち上げているIoT用のコンピュータそのものが皆無に等しいうえ、開発する現場でもこのあたりのことは最初に注意を促される。IoTというよりも、電子工作のおもちゃのCPUボードであるRaspberry-Piのシリーズでは、その最初のチュートリアルに、必ず「最初にデフォルトユーザーpiのパスワードは必ず変更すること」と書いてある。しかもtelnetはつながらず、sshが使われている。それに従わない、ということは、セキュリティのリスクをより多く抱えることになる、ということはRaspberry-Piのユーザーでは当たり前のことになっているからだ。

「ハッキングの手口を知るためにハニーポットを作ってみました」

という話もよく聞くが、専門家であれば、「それって意味ない」ってことがわかるような話だ。そのハニーポットのレベルの低さがわかる。同じ作るなら、もうちょっとレベルの高いものにしてくれないだろうか?といつも思うのだ。

個人の自宅での仕事も安全にできるようにしたクラウドシステムの「キモ」は、クラウドのシステムに入るためのIDとパスワード、そしてアクセス元のIPアドレス制限などの制限事項だ。にわかの専門家が多すぎるなぁ、と、思うのだ。

 

 



サイバー戦争が始まった(41) 家庭用ペットロボット

※本記事はフィクションであり、事実を書いたものではありません。
※本記事はこの本の続編です。他のエピソードはこちらの本をお読みください。
※これらの書籍では、他にも「仮想通貨」「ドローン」「掃除ロボット」などがサイバー戦争でどう使われるかについて、書いています。

彼女が来たのは、明日の朝は東京が雪で覆われる、という天気予報がテレビの夕方のニュースで流れた日曜日の午後だった。

「ピンポーン!」

「おい、来たよ。通販業者だろう。ハンコは玄関横の箱においてある。受け取ってくれ」

ぼくは、妻にそういった。妻はしばらくすると、大きな箱を抱えて来て言った。

「あなた、なにまた買ったの?もう家はパソコンとかでいっぱいでしょ?このガラクタどうすんのよ」
「いやいや、今度のは、。。。。君にも役に立つ。開けてごらん」
「どうせまた。。。全く男の趣味ってのは。。。」

妻はブツブツ言いながら、通販業者のもってきた大きな箱を開けた。箱の中から出てきたのは、身長50センチくらいの猫のロボットだった。箱から出したとたんに、電池が入っているのだろう、すぐに動きだし、後ろ足で立った。

「あなた、数年前に犬のロボット買ったじゃない。あれ、どうしたの?」
「あれはもう壊れたんで処分した。保守部品もメーカーに無い、って言うから、メーカーに教えてもらったロボットを専門に供養する、って言う業者にもって行ってもらったんだ」
「これねぇ、単なる電子部品の塊でしょ?なにやってんのよ。おカネかかったんでしょ?」
「うん。5万円くらい。。。」

そこでぼくの声は小さくなったが、すかざす、妻は言った。

「高い。いつの話?」
「だから、一昨年の夏だよ。君が旅行で子供連れてハワイに行っていたとき。」
「5万円あったら、もっとお土産いっぱい買ってこれたのに。。。」

妻は少し悔しい顔をした。女は現実的である。男のロマンをわかっていない、などと思ったが、それを口に出す前に、妻は私の言葉を見透かすように言った。

「で、何の役に立つの?これ。ネズミ取るの?うちはネズミいないわよ」
「だからさ、ぼくも君も働いてるだろ?子供は学校だし。昼間は誰も家にいないけど、家の留守番してくれる」
「どんな留守番?」
「家の周辺を誰かが通って、この家の周りを徘徊するとか、家に誰か侵入するとかあると、ぼくや君のスマホに直ぐにしらせてくれて、警察にも電話してくれるとか、子供が帰ってきたのをしらせてくれるとか。。。。」
「それ、猫じゃなくて犬じゃない」
「いいんだ。ロボットだから、どっちでも」
「わかったわよ。で、どう使うの?」

妻は半ばあきれた顔でそう聞いた。待ってました、とばかり、あれができる、これもできる、と喋ったが、妻は一言、言い返してきただけだった。

「わかったわよ。私わからないから、あなたが設定して。はい」

と、妻は来たばかりの猫ロボットをぼくのほうに放り投げた。すると、ぼくの腕の中に落ちてきた猫ロボットの目のLEDが光って、話を始めた。

「乱暴はやめてください。壊れます。まず、わたしの名前を言ってください」

ぼくは、この猫の子の名前を「オビア」にした。特に意味はない。ぱっと頭に思い浮かんだのだ。

「君の名前はオビア。メスの猫だ。生まれて1年して、この家に来た。まずはトイレを。。。ってトイレはしないよな。充電器はどこだい?」

すぐにオビアは答えた。

「こんにちは。はじめまして。オビアです。充電器は箱の底のほうに入っている黒い小さな箱の中です。いま、電池が半分くらいなので、お腹が減っています。あとで充電お願いします。いま、この近くのWi-Fiの設定を自動でやっています。Wi-Fi接続のパスワードも教えてください。」
「Wi-FiのパスワードはXXXX-XXXだ。うちの電話番号の後にアルファベットのXを重ねたやつだね。充電器だが、ごめんな。今設置する」
「お願いしますね」

ぼくは居間の片隅の床に近いコンセントに充電器を設定した。しばらくすると、オビアの目が青から赤に変わって点滅を始め、喋りだした。

「充電器の場所は自動でわかるので、私を床に置いてください。乱暴に扱わないでくださいね」

オビアをフローリングの床に置くと、周りを一巡したかと思うと、充電器の場所を特定したのだろう、そのまま、充電器までまっしぐらに走り出し、白いお皿のような無線充電器の上に自分の身を丸く横たえた。ちょっと目には、オビアはそこで寝ているように見えた。

子どもたちが目ざとくオビアを見つけて、走りよってきて、身体を撫でている。

「おい、いま来たばかりで充電中だ。名前はオビア。いたずらするなよ。1時間くらいで充電が終わるから、それから遊んでな」

ぼくはそう子供たちに言って、居間から自分の寝室に移動した。今日は日曜日で、仕事の疲れも出たらしい。なんだか眠くなって、そのままベッドで寝てしまった。


目を覚ましたのは、夕方になってからだ。ベッドルームから外を見ると、明日の天気予報を先取りするように、雪は降りはじめていた。降り出したばかりで積もってはいなかったが、時計を見ると午後5時。このままの勢いで降れば、明日は大雪だろう。月曜日の大雪は気が重い。自宅のすぐ裏ではあるが、仕事場までたどり着けるかどうか、心配になった。居間のほうから、子どもたちがオビアと遊んでいる声が聞こえる。

「オビア、たっちして」
「オビア、お父さん見てきて」

オビアは半開きの自分の部屋のドアを自分が入れるくらいまで開けて入ってきて、ベッドの上に立っている私を見た。私はオビアに言った。

「オビア、明日の天気は?」
「天気予報サイトによれば、朝から大雪みたいです」
「ありがとう」

オビアはそのまま子どもたちのいる居間に戻って喋っている。

「お父さんは起きてるよ」

そう聞こえた。


オビアは毎日、私たち家族の生活を覚えていった。平日の朝7時には家族全員が起床して、朝ごはんの支度。そして、7時半には家族全員がリビングで食事。オビアはその時間を把握すると、その30分前の6時30分くらいに毎日「大きな声で「にゃー」と鳴く。家族を起こすのだ。ときには、本物の猫のように、私のベッドルームに入ってきて、私の入っている寝具の上で鳴く。ぼくは目を覚まし、

「寒いからエアコンつけて。温度は23度」
「わかりました」

などというやりとりもある。まさに「猫の手」みたいだ。

朝8時には、全員が家を出る。まず私が、そして子どもたちを連れて妻が。それもオビアは覚えて、その時間になると

「あと10分で家を出なければなりません」

などと言ってくる。私たち家族は、慌てて朝食を終えて、身支度をする。

そんなオビアとの生活。オビアが来てほぼ1か月で、オビアは私たちの生活パターンを覚えたようだ。子供部屋はどこか?風呂場はどこか?妻の部屋はどこか?居間のどこになにがあるか?などなど、オビアはどんどん賢くなっていった。つまり「設定」は、最初の名前付けと、Wi-Fiの接続だけで良かった。後は、オビアのクラウド接続した先の人工知能が私たちの生活をどんどん覚えていく。

ある日、家に戻ると、オビアがいない。いつもなら、私が帰宅すると、オビアは私の所に寄ってきて「おかえりなさい、お父さん」と言うのだが。子どもたちに聞くと、オビアはさっき外に出ていった、という。

「おかしいな。。。壊れたかな。。。」

そう言うがはやいか、家の裏で大きな爆発音が響き、その響いたほうの窓ガラスが割れて飛び散って、家の中にガラスの破片が散乱した。


「作戦は成功したか?」
「はい。いま、爆破させました」
「よろしい。次の目標は?」
「既にロボット購入をして、1週間です。そろそろ、いろいろ覚えるところですが、あと3週間は欲しいところです」
「わかった。あせるな。計画通りにやれ。1つ1つ、ターゲットを狙って確実に落としていくんだ」
「わかりました」

C国軍のサイバー部隊は、一つ一つ、日本国内の「拠点」の攻撃をはじめていたのだ。

後で、わかったことはこうだ。

オビアを買った佐藤の家は東京の郊外の小都市にある。その裏が父親の職場「水川電業」だ。そこは日本でも知る人ぞ知る通信機関係の最先端機器を作る小さな会社だ。日本の大手電話会社などの使う通信機器は全てそこで作っている。最新の携帯電話網用のインフラ関係の機器から、携帯端末の試作まで、その技術力を買われて、軍事用の通信機器などの開発製造も行っていた。この会社がなければ、日本の高度な通信機器のほとんどは動いていなかっただろう、と言われている、知る人ぞ知る会社だ。爆発はその会社で起きた。これで、しばらくは、日本の軍事用高度情報通信機器の開発は遅れることは必至だ。佐藤自身は、会社を出た後で、自宅に戻ったところだったから、彼と彼の家族への被害は少なかった。しかし、佐藤は爆発後に、家族ともども、その場所から姿を消していた。聞くところによれば、会社の拠点をC国に移したらしく、家族ともども引っ越しを行い、後にC国の国籍も取得した、とのことだ。

佐藤の家に来たロボット、オビアは、佐藤の家族のいない時間に家の外を徘徊し、佐藤が代表をつとめる「水川電業」の位置を特定し、C国軍がオビアに予め入れてあるバックドアからある日オビアに侵入、オビアのコントロールを奪い、家の位置の特定のために、そこにいた。実はオビアの元になるロボットはC国で作られており、そのソフトウエアには、最初からバックドアが仕掛けられていたのだ。そして、その会社の位置を特定したオビアめがけて、爆発物を抱えたドローンが東京郊外の小都市近くの大学のグラウンドから発進。大学には多くのC国の留学生がおり、その留学生の一人がドローンを発進させたらしい、ということまではわかった。そして、そのドローンは、オビアのいる「水川電業」の社屋めがけて、爆撃を行ったのだった。

こうして、日本にある高度な技術を持った会社が一つ一つ、日本から姿を消した。

 


「Lチカ」は「趣味の電子工作」。プロのIoTに向かって進め。

【Lチカは楽しい】
「電子工作」の最初の関門は「Lチカ」ですな。プログラムでLEDを光らせたり消したりするわけですよ。でもね、「あ、LEDを自由に光らせたり消したりできるようになった」ってのは、アマチュア。プロは「LEDが壊れていたり、途中の通信回線が切れているときはどうするの?」まで考える。アマチュアは「光って楽しい」で終わる。趣味なら、それで十分。

【無意識のフィードバックと意識したフィードバック】
「Lチカ」は、目の前のコンピュータでプログラムを作り、簡単な電子回路を組んで、LEDの制御をする。でも、それが自分の意図した通りに光っているかどうかは、目の前にLEDがあるから、目で確認して「あ、光った」とかなるわけですよ。つまり、普通の「Lチカ」は、

  1. 光らせる。
  2. 実際に光ったかどうかを人間が目の前で確認する。

という、「2.」の「フィードバック」が働いている。このフィードバックが大事なんです。だって、IoTですからね。IoTではインターネットを通して、世界中の「なにか」が制御できないといけない。

東京でプログラムを作ったら、ブラジルでLEDが光らないといけない。であれば、「本当に光ったのか?」ってのは実に重要なこと。「本当に東京で制御した通りに、ブラジルにあるLEDが光ったかどうか、確かめる」必要があるよね。これ、例えば工場の工作機械のON/OFFだったら、当然、LEDどころじゃない問題なんだよ。工作機械であれば、制御する人の目の届かないところに工作機械があって、もしもそれを現場の人が工作機械を修理中だとして、それを突然見えないところろからONしたら、人が死ぬかもしれないよね。どうするの?そこまで考えるのがプロの仕事。

【プロのIoTはいやでも複雑になる。命がかかっているから】
LEDであれば、前記の「1.」を行った結果を調べる「2.」をどうやって地球の裏側から実現するか?ってことがとても重要なんです。あと、実際にOFFだったものをONして良いかどうか?っていう先方の制御されるほうの状況も知る必要がある。東京では常時電気が来ていて当たり前だけれども、ブラジルでは停電しているかもしれない。

「なに難しいこと言ってんだ」と思うのはアマチュア。プロはそれを考えてLEDを光らせる、ということだけでも、様々なやり方を考えておく。プロは「制御」とその結果の検証の「フィードバック」を常に意識して考える癖がついてるんだよ。

「Lチカ」やったからって、それが直接仕事になるわけじゃない。仕事というのは、もっと厳しく結果を問われるもの。だから、「電子工作」から「IoT」までの距離は、実はすごく遠い。その道を行くなら、こういうことを意識してこの道をたどって欲しいなぁ、と、そう思うわけです。

 


「人工知能」の行き着く先

このまま行けば、物流だって、ロボットの自動車が集荷に来て、ロボットの自動車が配送する、というところまで行くだろう。タクシーやバスは無人化が始まっていて、これが完全に稼働を始めれば、運転手さんは必要なくなる。非常時に手動の運転が必要なときに出てくる「非正規」な人がいれば十分だ。もっとも、その「非常時の運転手」だって、ロボットになる可能性は非常に高い。

工場なども、当然、「無人」が当たり前になる。であれば、工場労働の雇用はなくなる。当然だが軍隊というものも、ハイテク化すればするほど、その競争が激しくなればなるほど、「人」がいなくなる。徴兵制ができたとしても、軍隊では人は必要ない。であれば、徴兵制で集めた「人」は、遊ぶ。膨大な人数の人をどうやって食わせていくのか?という問題が当然、持ち上がる。

現代のデジタル化、ハイテク化された軍には、「人」は最小限でいい。数多くの兵隊を教育し、数多くの兵隊を養う意味がないうえ、コストも高い。どうせ高いコストを払うなら、ITに詳しい人材にコストをかけたほうがいい。

であれば、今度は「権力」というものも変わる。現代の「権力」というのは、多くの人の支持があるからこそ、多くの人を使うことができる。それが権力である。この「支配者」の支配する「人」が、支配者自身と同じ「人」であるから、意味があるのだ。であれば、そのどちらかに「人」が必要ない、ということになれば「権力」というのはいったいなのだろう?ということになる。

人は完璧に物事をこなせないから、「差」が生まれる。そこに競争が発生し、勝ち負けができる。しかし、完璧に物事をこなす「機械」が人間の行う勝負をすれば、当然「最強」になる。将棋、囲碁、チェスなどは既にコンピュータのほうが強いことが証明されてしまった。これ以降、勝負事には「白け鳥」が飛ぶ。「不完全な人間同士の勝負には意味がない」そう、機械に言われる。

麻雀をやるロボットはいつも勝つ。相撲やプロレスは、人間の不完全があるからこそ「試合」として成り立っていた。「完全」なロボットができようとしている今、これらの試合には意味もない。であれば、人間の序列にも意味がない。

コンピュータの発達は、人間社会を全く性質の違うものに変えざるを得ない力を、急速に持ちつつある。そして、人間が「完璧」を求める以上、この流れは止まるはずもない。ぼくらが競争だと思っていたものが、蓋を開け、そして当たり前のものになったら、それはこれまでの人間社会そのものの基盤になるあらゆる価値や原理をひっくり返すものになりつつある。

人間はこれから、新しい「生きる意味」をさがさなければならなくなった。

 


日本は製造業教育には最適

近親者に、大学の工学部に入って、そこで勉強をしている若者がいる。友人、知人に、大学の工学部で教えている人がいる。大学にいるうちは、この「教える側」はおそらく、日本の製造業で最高の環境にいた人たちだから、それなりの教育ができる。教授陣の知識の水準は非常に高く、教える意欲も高い、と、私は感じている。しかし、いっぽうで、教えられる側の学生の立場に立つとどうだろう?教えられる側の学生に高い製造業の技術能力が付いたとして、いま、日本では工学部を出た学生の仕事が豊富であるとは言い難い、という状況がある。

世界の製造業の舞台は、日本から去り、中国やインドを筆頭としたアジア諸国に移っているのが現状だ。であれば、学生たちには、最低でも英語でのコミュニケーションのスキルを一緒に教育し、世界のどこに出ても「稼げる」ようにする必要があるのではないだろうか?英語に加え、できれば中国語のスキルもあるともっと良いとは思うが。

一言で言えば、日本の製造業は既に死んでいる。しかし、まだ生きる道はある、と、私は思う。

それがあたかも昔のように「再興」できるかのような「モノ作り」などという古臭いキーワードで将来のある学生を騙さないようにして欲しい、と、私は思う。

日本の製造業は衰退したが、日本という地域にはおカネはたまった。そして、高度に教育された製造業の人材もいっぱいいる。つまり、高度な製造業の教育と、製造業への投資については、日本は非常に良い環境にある、とも言える。「モノ作り」を教えるのであれば、それはあくまで「投資のため」「海外への教育のため」という目的を持つべきだろう、と私は思っている。日本でモノを作って儲けられない、というのは、日本の製造業が成功したからであって、失敗したからではない。その成功により、人件費が上がり、土地代もあがり、日本という地域ではモノを作る、ということを直接しても、高いものしかできず、売ることができなくなった、というのが真相なのだから。日本人はよくやったし、失敗したわけでもない。全てうまくやったのだ。その結果、製造業が人件費や土地代がもっと安い地域に移って言ったに過ぎない。嘆くことではない。

やり方と、生きるための居場所を変えること。それが、本当に日本人に必要なことなのだ。

「XXができます」という人材を育てるのではなく「XXを作れば売れると思う」という提案ができる人材を育て、「XXに投資しよう」というおカネを用意すること。おそらく、日本に必要なのは、こういった経済原則に沿った、新しい動きなのではないか?

 


プログラミングを身につけるには

このところ、義務教育でも、プログラミングをできるようにする、という目標が掲げられているので、とにかく、あちこちでプログラミングのことについて書いてある本やサイトが増えた。特に小学生くらいの子供にいかにプログラムを教えるか?ということが義務教育に取り入れられる、というニュースが駆け巡ってからは、なんと「PCなどの機器を必要としないプログラミング」についても、あちこちで聞く。「他のやらなきゃならないこともあるのに、おカネもかけられない。迷惑だ」みたいな現場の感じが良く出ているなぁ、と外野からは見ているだけだ。

たとえば、英語などの外国語でもそうだが、何事に於いても、新しいことを学習し、身につけるには「環境」が最も大事だ。例えば、同じ英語を使うといっても「power」は政治の世界では「権力」の意味だし、電気の世界では「電力」の意味だ。そして、それぞれに単語の意味は微妙に異なるニュアンスがある。どの分野で学ぶか、ということ、言い換えれば、どんな環境で学ぶか、で、単語1つでも全く違うものを相手にしなければいけなくなる。

自分がプログラミングをしてきた経験から言うと、まず子供の頃はアマチュア無線がとても楽しくて、自作の無線機などを作っていた、というところから始まる。無線機を作るには、半田ゴテが必要だしニッパーとペンチも。。。。ペンチも大きなペンチからラジオペンチ。。。。、電線にはワイヤストリッパーが。。。と工具は毎週のように増えていく。気がつけば、そういう工具に囲まれて生きている。その方面の同好の友人も増え、情報交換で仲間も増えていくし、友が友を呼んで、ますます、自分の身の回りは同好の人間ばかりになっていく。そうしているうちに、時代がハードウエアからソフトウエアに変わり、気がつけば自分はインターネット界の端っこで、結果として、だけど、インターネットを日本にもって来る役目(の片隅)に。。。みたいな、そういう感じで自分の世界を広げてきた。

おそらく、自分の次の世代も同じように「Webって面白いなー」から始まった、同好の士の集まりができてきているのだ。であれば、そういう環境に自分を置くことが、実は一番大切なことだ。義務学校教育で「これをマスターすると、褒められます」とか「将来は安泰です」みたいな、その「行為」とは別のところに行為のモチベーションを置いても、要するに、人参を目の前にぶら下げられた白けた馬がノロノロと歩いて行くだけになるのは、目に見えている、と思う。子供はそういうことでは動かないのだ。

プログラミングは、物事を論理的に見て、決断し、実行するもので、要するにそのままそれは「解決すべき問題を見つけて」→「解決方法を探り」→「解決方法を確立し」→「プログラミングという手法でそれを実現する」、と、そういうものだから「プログラミングのお勉強をしましょう」というのは、私に言わせれば、だが、正直なところ、プログラミング教育とは言わない。まずはその子供の周りに環境を意識的に整えるのが、大人のやることじゃないだろうか?

今の世代はインターネットが出現し、コンピュータのプログラムなどをやりはじめた私たちの世代から、さらに3~5世代が隔たっている。であれば、その世代の興味はもっと違うところにあるだろう。プログラミングも、今であれば、コンピュータの前に座ってキーボードとマウスを相手にしなくても、コンピュータについたマイクにあれこれ指示をすると、勝手にPCの中のソフトウエアがプログラムを作ってくれる、というところまで行きそうな勢いだ。

「ぼくがエアコンのスイッチを入れて、室温を22度にしてくれるように、プログラム作ってくれないかな?」
「わかりました。その合言葉はなににしますか?」
「温めて、にする」
「わかりました。できました。言ってみてください」
「温めて」

なんていう、そういう「音声プログラミング」だって、今は可能だ。

であれば、プログラミングをするプログラマーも、また違う仕事をする必要があるだろう。プログラミングはコンピュータが自動で作るものになるのだから、「どんなプログラムを作ったら役に立つか?」を考えることがもっと重要になる。「XXができます」ではなく「XXを作るといいです」ということを考える仕事が、より大切になる。

時代の流れは速く、法律も教育も、そして人間もついていける人はごくわずかだ。