「お金持ち」は「小さなカバン」を持っているか?

世の中には、様々な人がいて、様々な「個性」がある。「お金持ち」というのや「貧乏」というのはその人についた「属性」だが、「個性」になることもあるし、「個性」を形作る要素の1つであるかもしれないが「属性」と、よく見間違われるわけではありますね。

つい先日も「お金持ちは小さなカバンを持っている」という広告の記事があった。その広告の邪魔をする気はないから、特になんの記事であるかを特定することはしないけれども、実際「お金持ち」は目立つし、その人が小さなカバンを持っていると、それも目立つだろう。もっとも、その人が大きなカバンを持っていても、目立つんじゃないかと思うわけだが。

だいぶ前に、世界の大富豪と言われているMicrosoft社の創業者であるビル・ゲーツ氏が日本を訪れ、テレビに出演したことがあったが、彼はそのとき、先っちょの壊れたボロボロの靴を履いていた。「なるほど、金持ちはボロボロの靴を履くんだ」とは誰も言わない。また、商品を売るための広告に使えないこういう行為は、当然、共有されても、広告宣伝の記事になることはない。「お金持ちにもいろいろな人がいるものねぇ(つまり、個性だよねぇ)」で終わりである。

また、これは話だけだが、ORACLEの創業者で元CEOのラリー・エリソンは、飛行機で移動するときは、ファーストクラスに乗らず、いつもエコノミークラスだという。ビジネスの厳しさを言うときによく引き合いに出される話だが、この話も最近は聞かなくなった。飛行機会社の広告には使えないからだろうとは思うが、当然、そういう記事はあまり出ない。

簡単に言えば「金持ちはこういうことをする(こんなものを持っている)」という話や「タレントはみんなハワイが好きだ」という、そういったものの1つとして「金持ちは小さなカバンを持っている」というのはあるのだと思うわけですね。それは個性を無視した話であって「自分もお金持ちになりたい」と思う人が、この「原因と結果」を勝手に逆転して解釈し(つまり原因と結果が見えないのね)「小さなカバンを持てばお金持ちになれる」というように、勝手に考えて小さなカバンを買いに走る、という消費行動を惹起する広告記事として、今ひとつ、いかがなものか?とは思うわけなんですよ。いや、売れたかもしれないね。

今のネットの世の中に限らないんだけれども、ちゃんとしたお金持ちになれるほどの頭脳があれば「原因と結果」の逆転などはしないわけですよね。つまり、こういった広告に乗せられて「そうだよね!」と頷く人は、永遠にお金持ちにも、何者にもなれない、ってことだね。意地悪でごめんね。

 


 

「専門家」が見えない時代

今の世の中は「専門家」へのリスペクトが少ない社会なんだな。専門家でなくても、ある程度はできる。たとえば、専門家は「クルマを作って、そのクルマで目的地に行く」ことを考える。当然、「一般人」は「できているクルマを買って、そのクルマで目的地に行く」。あるいは「タクシーにお金を払って、タクシーで目的地に行く」のが一番の「近道」かつ「安価」になる。
どちらも目的を達することができ、そして、おそらく後者のほうがコストも低く、到達までの速度は速い。
しかし、確率はそう多くないとは思うが、途中で事故が起きたり、あるいは、クルマがエンコしたりすると、手軽に目的を達する方法しか知らない「専門家ではない人」は、結局は中身のわかる「専門家」の助けを借りるしか、目的を達する方法はなくなる。しかし、そういうシチュエーションは確率として減っている。だから「専門家ではない人」は、事故があったときだけ、専門家に来て欲しい、と思う。しかし、「手軽かつ安価に」に慣れすぎているので、「専門家」も「手軽かつ安価」だと思ってしまう。しかし、「専門家」はそれで食っているのであって、めったなことでは安い対価では動かない。あるいは、安い単価であれば、それなりの対応をするしかない。
結果として、「専門家ではない人」は、「専門家は(普段は)必要ない」と考える。しかし、いざというときのために、専門家が要るのだが、その「いざというとき」のために、ずっと専門家を待機させて雇うほどのお金は考えていない。まぁ、こういうったことが延々と続いて、あちこちで火を吹き始めているのが現代という時代だろう。こういうことは自分のところだけだと思っていてはいけない。やがて、あちこちで火の手が上がって、専門家は足りなくなり、高騰するのは、目に見えている。今のほうが安いのだ。
今、ITについても、「専門家は必要ない」と思う「素人」は多い。実際、素人でも扱えるように、と専門家が作ってきた膨大なインフラやサービスがあるから、それができるだけのことなのだが、「利用者」はそのことを知らずに使っている。専門家のしごとのおかげだが、この時点で「専門家」は「素人」からは見えないところにいる。
「専門家」と「素人」のコミュニケーションも減っている。これはだんだんとクライシスへの接近を意味しているのだが、ほとんどの素人はそのことを知らない。専門家だけが「このままでは大変なことになるよ」と警告するのだが、「素人」は聞いていない。そして、「大変なこと」は、確実にやってくる。
あの3.11のときみたいに。