LPWAで困ること

世の中は、IoTの話でもちきり、と言うと言い過ぎだが、少なくとも私の周辺のIT業界では「もうこれしかない」というようなことが言われている。人工知能もこれに絡め、大量のデータ処理はビッグデータで、サーバーはクラウドで、というような「こういうものがあります」ということで、業界は口を空に向かって開けているのだが、なーんにも美味しいものは降ってくる様子がない。IoTは工場の自動化に良い、と言うが、工場ではとっくの昔に自動化は終わっているし、最近は独自にネットワーク化も終わっている。

だいたい、工場の設備を動かすPLC(Programmable Logic Controller – これ自身は三菱の商標らしい)という、リレーの動作をコンピュータで置き換えた装置は既に25年以上前から多く工場の現場で使われてきている。米国ではRockwell社がその雄だが、このRockwell社のネットワーク機器はCiscoのOEMである。新しく「Industory4.0」などとキーワードをいじくったところで、入り込む余地はほとんどない。今やるべきことはこれらのPLC機器のネットワーク化の向こうにある、経営管理まで含めた工場の自動化システムであって、それ以外のお話は大きくなりにくい。今必要なのはこういったネットワークを経営管理、事務管理のネットワークに接続するための、PLC機器のインターフェイスができるか?とか、各社あるPLC機器を混ぜて使ったときのインターフェイスがあるかどうか?というところだ。

東証一部上場の多くの日本をルーツとする製造業各社、韓国、中国、台湾などのグローバル展開をしている製造業者は、既に世界ネットワークを自前で構築していて、それとのインターフェイスをどうするか?ということが大きな(期待していたより小さな)IT業界の仕事になる予定だ、という程度のことである。

キーワードをこねくり回すのは結構だが、ちゃんとお金を産むビジネスになるかどうか?そこが大切なことなのだ。

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で、最近、このIoTにくっつくキーワードとして「LPWA(Low Power Wide Area)」と呼ばれる無線でのデータ通信規格が浮上して来ている。これは米国のLoRa Allianceなどがその規格団体として取りざたされることが多いが、規格そのものは2013年に世界的に合意されたもので、取り立てて新しいということはなく、LoRaに準拠しないLPWAモジュールで、日本の総務省の技適が取れているモジュールは、既に多く日本の各社が作って標準部品として売っている。サンプル価格でいずれも数千円程度のものだから、大量に買うとかなり安い。秋葉原でもいくつかの販売店に行けば売っている。実際、実験をした方もこの半年で増えてきた。実際に実験してみると、通信速度は1kbpsくらい。で、距離は数kmは届く。1kbpsは遅い、とは思うが、その昔、音響カプラでデータ通信したときは300bpsである。その三倍と思えば、よくここまで来たなぁ、というのがオジサンの感慨ではある。

通信のプロトコルとしてTCP/IPは使えないから、そのデータ通信のためのデータをそのままインターネットに流すことはできないから、プロトコル変換をすると同時にアプリケーションでデータを収集したりするプログラムと、それを動かす「ゲートウエイ」になる「コンピュータ」が別途必要になる。このコンピュータは最近流行りのraspberry-piなどのサンプル価格数千円のコンピュータで十分である。明日には、このRaspberry-Piの廉価バージョンである「Raspberry Pi Zero」が発売されるので、これなら数百円、ということになる。時代はどんどん変わっていくが、LPWAの認知は多くのIoTのラスト1マイル用の通信として、安価で手軽であるがゆえに、普及していくんじゃないかと言われている。2017年2月には、日本のMVNOの業者であるSORACOMがLPWAを使ったLoRa-WANのためのGateway機器を作って、クラウドのシステムも売る、ということで、話題になった。

しばらくはこのLPWAのことで、業界は持ち切りだろう。まぁ、ぼくらはいろいろなシチュエーションでの実験も既にしているし、電波の特性もわかっている。結局、器はいくらでもあるのだが、「なにをしたら儲かるか」がない。それがIoTの現状である。

 


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