EMP攻撃とはどんな攻撃か?ぼくらは大丈夫なのか?

9月3日の時事通信の記事で、このところ弾道ミサイルを日本の上空を通るルートで飛ばしたり、地下水爆実験を成功させた、と報道されたりしている「北朝鮮」の金書記長が、「EMP攻撃」について明確に言及したことにより、「核爆弾によるEMP攻撃」があるのではないか、とあちこちで言われている。EMP(Electromagnetic Pulse)とは、「電磁パルス」と日本語では書かれることが多いが、実際にはどういったことなのだろう?ということについて、あまり知られていないので、ここに少々解説をすることにする。

電気の変化が生じると、そのすぐ近くに磁気の変化が生じる。そして、磁気の変化が生じると、その近くに電気の変化が生じる。この電気と磁気が相互に連なった変化を空間で伝えるのが「電磁波」、略して「電波」である。電波の場合は、連続して変化が生じるのだが、「パルス」というのは、一瞬の変化のことである。これでも、「電気」が変化し「磁気」が変化する。つまり「電磁波(電波)」が発生する。

成層圏などの、空気が希薄な高い高度で核爆弾が破裂すると、そこは空気が少ないから「爆風」はほとんどない。その代わりに、核分裂の反応で「ガンマ線」が生じる。ガンマ線というのは、簡単に言えば「10pm(ピコメーター。ピコは、10のマイナス6乗)」という非常に短い波長の電磁波である。ちなみに、テレビなどの電波の波長は短いものでも数センチメートル程度だから、それに比べてもかなり短い波長の電波だということがわかる。つまり、核分裂の反応で、非常に周波数の高い(波長の短い)電磁波が発生する。すると、成層圏の下にある「大気圏」の「大気」に、その電磁波が当たる。すると、大気の二酸化炭素や酸素の分子から「電子」が叩きだされる。これを「コンプトン効果」という。この電子が大気の分子から叩きだされるときに、強力な電磁波のパルスを発生する。これをEMP(Electromagnetic Pulse)というのだ。

このEMPの効果は絶大で、ほんの一瞬、EMPが発生すると、コンピュータや電気通信の回線や回路に「ノイズ」が乗る。この「ノイズ」が、電子機器に使われている「半導体メモリー」などの読み込みや書き出しのエラーを誘発する。通信回線だったら、通信中のデータが壊される。そこで、電子機器が「狂って」しまうのだ。ただし、全ての電子機器が影響を受けるわけではなく、厳重に外部からの電波に対する対策が施された回線や施設であれば、その影響は軽微なものとなるし、「光ファイバー」では、ほとんど影響はない、と言われている。

「光」もご存知のように、非常に波長の短い電磁波であるわけで、そういう意味では影響を受けないこともないんじゃないの?という疑いもあるが、EMP攻撃でのターゲットは主に半導体素子であって、通常は計算やメモリへの読み込みや書き込みのエラーが起きることで、電子機器を使用不能にする、ということだ。たとえば、ハードディスクへのデータの書き込み中に、コンピュータ本体からハードディスクへの書き込みデータがEMP攻撃を受けた場合、そのデータはデタラメなデータとなるが、ハードディスクに書き込む前に、データの検証がハードウエアで行われるため、データが誤ったデータであることがわかり、通常は書き込みが行われる、ということはない。であれば、ハードディスクの中のデータは大丈夫だろう、ということがなんとなくわかるだろう。

EMPの発生は、なにも核攻撃だけで起きるのではなく、例えば工場などでの溶接などの作業では常にEMPかそれに類する「強烈な電磁波ノイズ」が派生するし、強力なモーターなどでも発生する。また、電波を使うトランシーバーや、強烈ということでは電子レンジなどでも、発生するから、そういうったものへの「電波対策」が施された機器であれば、EMP攻撃の影響はそんなに大きくないだろう。結構対策がされているものがある。

つまり、「完璧な外部ノイズ対策」が施されている電子機器では、EMP防御ができる、ということになる。

例えば、缶詰の中に完全に密閉したスマートフォンを置くと、それはEMPの影響を受けない、ということになる。とは言うものの、スマートフォンは充電もしなければならないし、第一、缶詰の中で電波が全く届かないのであれば、Facebookだって通信できない、ということになるから、そりゃスマホ持ってる意味がないんじゃないの?ということになる。

とは言うものの、銀行の取引データとかの「大事なデータ」は、たとえばUSBメモリとかハードディスクの中に入れて、そういう「完璧な缶詰」の中に入れておけば、データを壊されることはない。しかも、缶詰の中に入れておくのは、EMP攻撃があったときだけでいい。EMP攻撃が終われば、その缶詰からデータの入っているハードディスクやUSBメモリを取り出せば、前のデータは残っている、ということになる。ところでここで言う「缶詰」だが、通常のペラペラの鉄板でできた缶詰では強力な電波は通ってしまう。どのくらい厚い板であれば大丈夫か?というのは企業秘密で言えない。

世の中にはおもしろいものがあって「電波暗室」というものがある。これは外部から入ってくるあらゆる電磁波をシャットアウトする、大きな部屋である。ここで、スマートフォンなどの出す電磁波の測定などをするのだが、この電波暗室に入っていれば、EMP攻撃は避けられる、ということでもある。

いずれにしても、日本では各家庭につながったりしている線は今やほとんど光ファイバーであり、これはあらゆるところで使われている。光ファイバーではEMPの影響は基本的に受けない。であれば、EMPでの攻撃に、そんなに神経質になることもないのかもしれないが、例えば下水処理場の管理室の中にあるパソコンが動かなくなると、大変なことになる、なんてことはあるだろうし、油断はできない。

既に、日本や米国などのしかるべき機関では、EMP攻撃も想定したサーバーのラックや、通信回線を使っている。それだけで安心できるわけではないのだが。