インターネットの病巣「誹謗中傷」

このところ、というか、かなり前からなんだが、大きな問題になっているのが「ネット上の匿名での誹謗中傷」である。先日もマスコミで名前が売れた大渕愛子弁護士の第三子出産をめぐって、誹謗中傷があったらしく、大淵弁護士は訴訟も考えている、と報道されている

私は日本にインターネットを持ってきた、その一部を担った。「インターネットってなに?」なんて、多くの人に言われていた時代、ITという言葉が出てくる前からこの世界に関わってきたが、インターネット以前の「パソコン通信」と言っていた時代から、この手の「誹謗中傷」は非常に多かった。日本だけでなく、多くの国で「ネット上での匿名の誹謗中傷」は実は多く、ちょっとだけでも、ある世界で名前が世の中に知られると、その発言の一言半句が過大に取り上げられるなどの手法で、誹謗中傷が行われるのは、もはや日常になった、と言っていい。

このバッシングの手法は比較的簡単だ。「鉛筆を芯の側から正面に見ると、黒くて丸い。CDやレコードも黒くて丸い。だからこの2つは同じものだ」というやり方である。そして「鉛筆も尖らせれば凶器になる。だから、包丁と同じだ」という「(他人を傷つける、という)禍々しいイメージ」をこれに乗せて、誹謗中傷の道具にする。ほとんどがこのやり方だ。もちろん、こういう手法だけではなく「ウソ」をこれに混ぜる、ということも、誹謗中傷を行う犯人はやる。匿名なので、やり放題、ということもある。善意の第三者を装ってこれをやるわけだ。

人は多く心に闇を抱えている、と、インターネットの時代のはるか以前のフロイトも言う。その闇、はどこかで「開放」されることによって、その人の心の安定を得る。おそらく、これはあなたも私もみんな、大なり小なり同じである。ちょっとかそれ以上に名前が出る、自分のいる位置から遠い人間を「叩く」のは、そのリアクションを受けにくい、という事情もある。加えて、名前の売れている芸人や有名人を叩くのは、その「効果」によって、その周辺の多くの人も影響を受けやすく、「叩く側」の満足をより大きく誘うからだ。どこのものとも名前も出自も知れない人間を叩くのでは、面白くない、という事情もあるだろう。

インターネット以前の時代では、これは口から口へのローカルな口伝えで終わるため、地域ローカル、あるいは組織ローカルな「噂話」として広められるに過ぎなかった。今でも大学などの組織内では「怪文書」はあるそうだが、今はこれがインターネットで広域に広められるようになった。

そういう意味で、ネット上の誹謗中傷をまともに受け取る人は少なくなってきたものの、「有名でなければ、誹謗中傷を受けることはない」のだから、「誹謗中傷を受ける」のは、「有名になった」という証拠のようなものだ。そして、有名になればなるほど、匿名の誹謗中傷は増えていく。全くバッシングの無い有名人はいない。

「あいつだけいい思いをしやがって」という、嫉妬も、どの社会にもある。そして、嫉妬がきっかけの、こういう誹謗中傷は、ネットがあることによって、増えてきている。ネットも良いことばかりではないのは、普通の社会と同じだ。

ただ、自分がその「犯人」と同じにならないよう、気をつけたほうがいいだろう。ネットでの「匿名」は最初だけであって、実は訴訟などが起きれば、誹謗中傷の犯人の特定は十分に可能な仕組みを、各プロバイダーも整えている。というか、インターネットの仕組みが完全な匿名をできないようにしているからだ。ちょっとした嫉妬や不用意な感情に任せた発言があなたの人生を狂わせることも、これから増えていくだろう。組織の発言にしろ、個人の発言にしろ、ネット上での発言には十分に気をつけよう。


 

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