HUAWEI事件。ITは政治になった。

11月23日、米国政府は中国HUAWEI製品の連邦政府での使用中止を宣言。これは今年9月から言っていたことだ。そして、12月5日、HUAWEIのCFOがカナダで逮捕。

HUAWEIといえば、私たち一般市民は日本でも安価で高性能なスマートフォンやタブレットのメーカーという感じがあるが、むしろ、そのスマートフォンやインターネットを裏側で支える膨大な通信機器のメーカーとして、IT関係者の間では知られている。

普通のITの関係の仕事でも、特にインフラ関係の仕事をしていない人はほとんど知らないが、スマートフォンという製品は、その裏側にある「電話局」の設備が命だ。そして、その膨大な機器への投資は半端ではない。規模も大きく、表で私達が見ている「アプリ」を支えるハードウエア、ソフトウエアがあってこそのスマホである。

「さようなら」王子さまは言った・・・
「さようなら」キツネが言った。

「じゃあ秘密を教えるよ。
 とてもかんたんなことだ。
 ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない」
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
忘れないでいるために、王子さまは繰り返した。
「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、
 きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
「ぼくが、バラのために費やした時間・・・」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
「人間たちは、こういう真理を忘れてしまった」キツネは言った。
「でも、きみは忘れちゃいけない。
 きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。
 きみは、きみのバラに、責任がある・・・」
「ぼくは、ぼくのバラに、責任がある・・・」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。


【星の王子様 – サン・テグジュペリ より引用】

いつの世の中でもそうだが「見えないもの」がとても大切なのは、ITだって同じだ。そしてその「見えないもの」の世界最大のものをHUAWEIは作っている。米国のみならず、世界のITはHUAWEIを筆頭とした数社のIT企業に支えられている、と言って言い過ぎではない。誰を贔屓する、というのではなく、これは事実である。

そのHUAWEIを米国政府は攻撃したが、日本の政府もそれに追随した。12月7日、日本政府は政府調達からHUAWEIの通信機器を外す決定をした、」と発表。また、日本の放送などでは、「HUAWEIのスマートフォンから情報が抜き取られるらしい」という情報が流れているが、HUAWEIはこの報道に対し、裁判で争うこととし、その発表を行った。世界のIT関連通信機器の超巨大な市場を持つHUAWEIとしては「その情報はデマである」という確固たる自信を持っているのが伺える。実際、日本の携帯各社でも、製品の受け入れやインフラ構築のさい、その製品や機器について、事前に詳細な調査を行っているはずなので、いまさらの「HUAWEI名指し排除」は、違和感がある。その事前の調査が不完全であったとすると、私達はHUAWEIの機器の導入を決めた会社の技術力を疑うしかなくなってしまう。信頼を旨とする日本の巨大企業としては失格である、ということになってしまうからだ。また、HUAWEIのスマートフォンは日本の3大キャリアでも人気であり、HUAWEI製品のないキャリアはない。

既に10年前になるが、米国の国家安全保障局(NSA)では、米国内ではイスラエル製の通信機器は情報横取りの可能性があるので使わないように、という通達を行っていたことを思い出すが、今回はイスラエルについては言及されていない。

ここまでの事実を並べて見ると「ITというのは技術ではなく政治になった」と思う。ぼくのようなITのインフラ技術者・研究者から来た人間は、自分の仕事は政治とはあまり関係ない、という認識でいたわけだが、それがこのところ、一気に「政治色」が強くなってきた感じがある。まぁ、通信というものの性質上、将来はそうなるだろうな、とは思っていたわけですけれども。実際、今回の「中国」を相手にした話の前には、前述のように、IT業界内部では、イスラエルのIT企業で似たような疑惑が持ち上がっていたことがあったんだが、そちらは今回はまるで話の俎上に乗らない、というのも、非常に「政治的」なんだと思うのですね。

実際のところ、20年以上前だったら、LANの中をなにが通っているか?を調べる「Sniffer」と呼ばれる機器が数百万円で売っていて、これを使えばLANの中をなにが通っているかしっかり見えた。

今もSnifferはある。しかし、今は無料のソフトウエアをPCに入れるだけで、同じことができる。無料のソフトウエアでは「WireShark」などがそれに当たるが、その他、いくつも無料で使えるソフトウエアがある。これで調べれば、HUAWEI製品から情報が漏洩しているかどうかは、一発でわかるはずだ。

そして、このソフトを使えば、実際にHUAWEI製品だけではなく、あらゆるところで作ったIT機器の「秘密の通信」が全て筒抜けだ。一般にはあまり知られていないけれどもね。

これを調べれば、この裁判の行方も簡単に判断することができる。それがインターネットの「リアル」である。

ネットの世界は「政治」によって「情報」が行き交う。しかし「リアル」はあり、それは私達がすぐに手の届くところにある。ないのは、そういうものが目の前にある、という情報だけだ。そして、その「情報の取捨選択」こそが「政治」であり「見えない大切なもの」なのだ。



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