IT屋の向き・不向き

ぼくはコンピュータ屋なので、コンピュータってのは、「こいつどうしても自分の思い通りに動かないなぁ。ソフトウエアもみんな自分で作ったものだから完璧なんだけどなぁ」っていう場面に本当にたくさん出会う。でもね、まず100%、それは自分が間違っているせいなんだよ、ってところにまず立つ。自分が正しいので、自分が一番で、なんて思わない。

ソフトウエア作りが慣れて来ると「自分が作った動かないもの」を目の前にして、まず、自分自身の作ったものの、どこかがおかしい、という事実を認める。そのためには「絶対の自信のある自分自身」をまず否定する。自分の作ったものも、他人の作ったもののように思って、思い込みを一切排除し、自分のプライドも自信も、全部、自分自信で否定する。はっきり言って、今の自分自身がダメなんだからさっさと捨てる。

つまり、惜しげもなく「自己否定」するんです。プライドもごく短時間で一切捨てます。「おれは世界一の愚か者でバカでどうしようもないやつだ」に一瞬で変わる。その地点に立って、バグ取りとか問題解決を始める。この自己の「変わり身の速さ」「惜しげもなく自分を捨てる速さ」は自分でもおかしいほど身についている。プロのプログラマはこれを数秒でできる。長くても5分以内でやる。だって、それが収入に直結してるんだから、当たり前だ。

だから、そういうことができる自分に、いよいよ自信がつくんです。つまり、「自分の自信の構造」が二重化する。一番下のレイヤー(層)を完全に破壊して、その上で、より高次元のレイヤー(層)の絶対的自信が動き出す。いわゆる「普通の人」は、こういう「プライドのレイヤー(層)」が単純で、通常は一層しかない。しかし、プログラマーとして重要なのは、「自信の多層構造」なんです。これがない人は、そういうぼくを見てもまるでわからない、ってことになるんだね。

まぁ、日本の文系の大学なんかの出身者のほとんどは、この「変わり身の速さ」がまるで理解できない、って人が多い。精神分裂か、多重人格に見えるだろう。

つまり、これが、プログラマなどの精神構造なんです。そうしなければ、生きて行けない仕事なんです。手前味噌で言わせてもらえば、「優れたプログラマの精神構造」って、そういうものなんですよ。

だから、「自分のプライドや自信」はいつでも廃棄できちゃう。長くても5分あればいい。そのうえで、自分を保つ。これが重要なんです。

だから「なんで自己否定がみんなできないんだろうな?」なんて思っちゃうわけ。そんなの日常なんだもん。毎日、数十回もそれをやることだってある。そういうトレーニングができている人が、優れたプログラマになる。

つまり重要なのは、自分という存在をより高次から眺める、もうひとりの自分がいるかどうか?ってことなんだな。それがいる人はなにがあっても状況にすぐに適応できて、自分を変えて生きて行ける。すぐに元気になる。自分を笑い、自分の状況を笑う。それが一瞬でできるかどうかなんだね。そういう人はプライドを捨ててもなんとも思わない。どうでもいいんだ、そんなこと。

つまりさ、IT業界で働ける優れた人材を作る、ってのは、要するにそういうことが軽々とできる人材をいかに効率よく作るか、ってことなんですよね。向き不向きもあるしね。ここを間違えると、仕事を始めたら精神疾患ですぐダメになっちゃうような、そういう人材を作る、ってことになって、まことによろしくないわけですよ。



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