IoTはハードウエアもソフトウエアもわからないと辛いなぁ、というお話

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この記事はホリエくんにIoTの話をさせようとしてるんだけど。自分でハードウエアまでやったことのない人ってこういう発想するんだなぁ、って感じだね。一言で言えばホリエくんの知識じゃIoT語るのは無理があるんだなぁ、ということがよくわかった。

かわいそうに、とぼくは思う。こんなところに出されちゃってさ。でもホリエくんは他人のblogなんかよく読んでるねぇ。そういう引用うまいですよ。特にコストのことについて数行書かれているところね。「半導体製造を利用したMEMS技術によって、加速度センサーやジャイロなどが何億台というロットで量産され、すごく安い製品が出回るようになった。」ってところ。

よくあちこち読んでるなぁ、と感心するよ。独創性はないけどまとめるのはうまいね。いいんじゃね?

あと、半導体の量産効果もあって、コンピュータそのもののチップも安くて大量に出回るようになったんですよね。30年以上前だったら数億円はしたコンピュータが、今は数千円。ここが現代において「IoT」が騒がれて、そして中小企業、弱小零細企業が採算に合うことになったところなんですよね。

ぼくはあちこちでIoTについてセミナーとか講演をしたけれども、「こんなこと25年以上前の昔からやってるよ」「ではなぜ今、あえてIoTなんて名前を付けて騒がれるのか?」ってところで、必ず出て来るのが「コスト」なんですね。好意的に、かつ裏なし、という前提で解釈すればね。

好意的じゃなくて、ネガティブに解釈すると、「業界陰謀論」みたいになって、この記事にも書いてあるように「IoTはもともと昔からあったもので(ブームになったのは)メディアのレッテル張りが原因だ」ってことになっちゃうのね。何事も両面あるもんですよ。世の中は単純じゃなくて複雑なんだよ。

かといって、対談者の人も今度はソフトウエアとかWebには疎くて「その頃はブログが流行っていたが、徐々に収斂されてITサービスになってきた。」なんて言ってる。うーん、現在もBLOGはあるんですけどねぇ。かつてホリエくんがさんざん吠えていた「AJAX」なんてどうなったんでしょうねぇ?てなもんで。

なんというのかな、出演者全員の持っている世界が同じ「IT」とは言うものの、それぞれに狭い。だから、話が噛み合っていないんだよね。で、そういうことを、この対談を企画した人もわかっていないんでしょうね。

 


失敗するIoTとは?

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あなたのIoTプロジェクトは失敗する可能性が高い。なぜかというと、IoTのシステムは「エンジニアであれば誰でもできる」というものでは、全くないことに気がついていないからだ。私のセミナーを聞いている方にはちゃんとこの辺りの詳細をお話しているんだが、IoTプロジェクトの一番の問題は、それができる技術者の不足がある。これが現実だ。解決策ももちろんあるのだが、現状の日本では少し難しいかもしれない。

まず、現在のIT業界では、IoTで必要な、ハードウエア、ソフトウエア、アナログ電気回路、デジタル電気回路、ネットワーク技術、そのすべてを実際の現場で作ったことがある人材が非常に少ない。アマチュアの遊びの電子工作ではなく、実際にお客様が目の前にいる抜き差しならない現場でこれらの技術を基礎から習得して身につけた技術者は本当に少ない。実際、IoTと一言で言うものの、その製品を作る技術は非常に広範でかつ深い。文学の分野で言えば、法律も経済もシェークスピアもクラシック音楽もロックも、みんななんとかできますよ、仕事でみんなやりましたよ、という人が必要になるのだ、と言えばわかりやすいだろうか?

だから、IoTプロジェクトの成功の大きな鍵は、これらの技術を持ったうえ、さらに現場での経験の豊富な人材にある、ということになる。業務システムを作ったことがあります、程度のエンジニアとかWebをやったことがあります、という程度のエンジニアでは、持っている分野が狭くて、全くものの役に立たないのだが、そんなこととは全く知らず、またそういうエンジニアがどこにいるのか、ということもわからずにIoTを叫んでも、正直なところ、プロジェクトの成否は全く藪の中だ。

コンピュータが出てきたのはおおよそ50年ほど前だが、特にこの20年くらいは、大学や職業訓練校の教育では、「ソフトウエア」「ハードウエア」「ネットワーク」「セキュリティ」などなど、さまざまな分野で専門的なものを教育してきたが、できあがった学生はそれぞれの専門にはなりえても、総合的にシステムを考えられる人材はほとんど育たなかった。ましてやこれに「お金」というコストの問題がかかわると、それを考えられる人は、さらに少なくなる。加えて実際の現場では、たとえば無線LANを使うにしても、ノイズの問題などを考える必要うがあったり、防水の筐体はそうするのか?など、いろいろな現場なりの問題が多々ある。これらのすべてを経験している人材はさらに少なくなる。日本ではおそらく、まともなIoT機器を一人で作れる人間もチームで作れる人間も、50人いるかいないか、という程度のものだろう。

世界的にはIoTの時代がやってきたことに間違いはない。しかし、日本ではそういう人材は非常に少ない。「まともなIoTシステムの作り手」は非常に少なく、かつ貴重だ。Aさんのやっている開発をBさんがすぐに代われる、というものではない。

これから、日本のITはどうなっていくのか?実は私はこのことをすごく憂えている。


25年くらい前の「コンピュータ屋」は、今で言うIoTの技術者だったから、ハードウエアもソフトウエアもデータベースもわかってて当たり前だった。

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ぼくはあまり昔話って好きじゃない。前は良く言ってたけど、この10年くらいは目の前の仕事が忙しくて、昔話どころじゃなくなった。で、その25年くらい前にはコンピュータにもいろいろなCPU部分のハードウエアがあって、特に日本のその業界では「NECのPC98シリーズ」が一番多く使われていた。他に、IBM-PCとか、Apple-IIとかってあったけれども、日本じゃなにかというと「PC98」が当たり前だった。事務処理にはまだコンピュータは沢山使われていなくて、むしろ工場の制御とかダムなんかのプラント制御とかに、PC98はたくさん使われた。だから、今この記事を読むと、昔の話がぼくの心の中でよみがえる。大手のあの企業の工場も、あの企業の工場も、みんなぼくらがやった仕事だ、って思い出す。守秘義務があるから、どことは言えないけど、あんなことやこんなことをやった。ロボットもちゃんとインテリジェントなものが動いていたしね。

つまりさ、その頃のぼくらってのは、アナログ電子回路、ハードウエア、ソフトウエア、みんなできて当たり前だった。その上で、お客様のところに行って、要件を聞き出して、どんなハードを作ったり組み合わせたりして、どういうソフトウエアを作って入れればいいか、なんて考えた。お客様とのコミュニケーションがちゃんとできないと、この仕事もできなかった、と言っていい。つまり、ソフトウエアだけの技術者、なんて使い物にならなかった。だから、コンピュータ技術者のほとんどは、今で言うところの「IoTの技術者」でなければならなかった。

インターネット以前の時代、僕たちもPC98を使って、東証一部上場の企業の工場のシステムなんか、たくさん作ったよ。重ねて言うけど、守秘義務があるから、どことは言えないけどさ。で、今も動いてるはず。なぜかというと、当時はPC98の値段も高かったけど、それを大量に工場のラインで使うということもできた「日本企業がお金持ちの時代」だったんだね。今は全然違うけどね。実は当時のコンピュータでは、PC98を使うほうが安かったんだよ。あの時代のIntelとかで作っていた産業用のボードコンピュータのほうが遥かに値段が高かった。シングルタスクのOSも多かったし、マイクロプロセッサ用のマルチタスクは出始めで、ぼくらは結構早い時期から、iRMX(intel Realtime Mutitasking eXecution)とかも使ったね。って言っても知ってる人は少ないだろうけど。もっとも、仕事によっては、自前でマルチタスクのモニタを作ったりもした。コンテキストスイッチングの仕組みを考え、スケジューラも自分で設計した。ところで、PC98はその当時は1枚で数十万円から数百万円する産業用のボードコンピューターよりも安かった。いや、外資系のすごくお金が余っているところではそういうコンピュータを使ったよ。OSはだいたいがMS-DOSとかのマルチタスク機能をもともと持っていないOSだったから、予期しないタスクとかが裏で動いてシステムが知らないうちに重くなる、ってこともなかった。だから、使いやすかったんですね。いや、プログラムが組みやすかった、というほうがいいかね?マルチタスクのOSは小型コンピュータには珍しかったし、使いにくかった。でも、なんとかして使ったこともあった。

CPUの性能が低いぶん、OSもプリミティブで、オブジェクト指向も一般的ではなかったしね。その当時では最先端の、光ファイバを使った光LANのシステムもぼくらが作って最初に某プラントで使って実用化した。通信用のCoProcessorに、高速シリアルの入出力を持つ、PROMでプログラムを焼くi8751を使った。それが使えるようにした、PC98用のインターフェースボードも作った。TCP/IPもなかった時代、自分たちがプロトコルを作って決め、プロトコルスタックを自分たちで作って、そのスタック間のインターフェイスもぼくらが決めた。これで光でLANが動き始めて、実際の某現場で動きはじめたときは感激だったねぇ。

要するに、当時(1980年代くらいまで)は、そういう時代で、PC98を工場なんかの制御に使う、ってのは、実は一番安くて一番安心な選択だったんですね。とは言うものの、パソコンもWindowsとかからしか知らない今時のスタバでiPhoneとMacBookAirなんかで記事書いてるライターじゃ、この辺りのことは話をしてもわかんないだろうけど。だから、こんな記事で「驚き」になっちゃうんだろうね。

だから、昔が良かった、とは思わないけど、ITに関わる技術者は、昔ほど能力が高くなくても、なんとか使える時代になった、ってことだな。

 


これからのIT業界はソフトウエアだけじゃ食えない。ハードウエアもアナログ回路もわかって、コミュニケーションの能力や社会性も要求されるし、英語は最低限必要だよ。

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ほとんど表題の通りなんだが、このところ「IoT(Internet of Things)」なんてキーワードがもてはやされているんだが、グローバルな競争の中でIT系エンジニアは食っていかなきゃならない時代になったし、IoTってぇと、センサーとか使えなきゃいけないし、センサーを使うためには、IT以外の分野の人とちゃんと話をして、その話を理解して、意見も言えるようでなくちゃいけないし、という、ちょット前で言えば「フルスタックの技術者」以上の能力がないと、世界のエンジニア、そう、中国とかインドとかのエンジニアと互角に渡り合っていけないと思うんですよ。もう、そこそこのソフトウエアしか知らないエンジニアがどんぐりの背くらべ状態で仕事をああだこうだと日本国内だけで回している時代じゃないのですね。

だからさ、もっと日本のエンジニアとか研究者って、勉強しないといけないし、そういう能力のキャパシティが在るやつだけ、生き残っていくんだと思うのね。これは、有無を言わせない、世界の趨勢、流れだよ。哲学や経営学の1つでも勉強する必要があるし、言語は英語必須、TOEICでいえば650点くらい以上は欲しいし、TOEICの点数高くても、ちゃんとコミュニケーションできなきゃ意味ないし、とにかくね、実力がすべてだよ、って時代になったんだと思うのね。動くものができなきゃ、おとといおいで、とか言われて終わっちゃう。いや、他の仕事につけばいいよ。できるだけ早く、実力のない技術者や研究者は他の仕事を探したほうがいいと思うよ。

日本だけですべてが完結する時代じゃなくなった。それだけのことなんだけどね。