「事業」が「システム」に置き換わっていく

まるで、オセロの白黒が、そのコマの1つを打つことで、全部ひっくり返っていくように、「事業」が「システム」に置き換わっていく。それが今という時代なのだ。

「事業」をするには「人」が集まって「組織」を作り、その組織が「社会的に有意義となることをする」ことによって、社会から「報酬」を受け取り、その組織の人員の糧とする。赤字になる事業はなくなっていき、黒字の事業だけが生き残っていく。

今や銀行はコンピュータのシステムで動いており、「人」はほとんど必要ない。これは他の業種にも言える。例えば出版だ。出版という「事業」は、著者がいて、その著者の「作品」を、出版社が受け取って、多くの人に読まれるように「編集」し、その結果を「印刷」という事業者に持って行き、「本」を作る。できた本は、大量に印刷され、それを「取次店」を通して日本全国の書店に並べる。そして、人はその本を買って読む。今の電子出版になると、この様相が変わる。著者が本を書いたら、そのまま「システム」にアップロードすると、それ以降、人が読むためにダウンロードするまで「人」が必要なくなる。「著者」-「編集者」-「出版社」-「広告」-「印刷」-「配本」-「書店」-「読者」という、この「物流」が一気に「著者」-「システム」-「読者」というように「簡略化」され、それまで間で働いていた人の仕事は必要なくなる。

しかしながら、著者の印税も含めた、この「出版」という「事業」の「原資」は、「読者」の払うお金であり、それが集積したものだ。であるから、「著者」-「読者」が「システム」を通して「直につながる」のは、「出版」という全体の複雑なシステムを簡略にして、人件費をなくし、「著者により高い収入を払い」「読者により安く提供する」という「経済原理」に即したものだから、これを咎め立てることはできない。この変化を止めることもできない。これまでにあった「壮大な無駄」を「システム」がなくすだけのことだ。

電子出版も、銀行のIT化も、要するにそういうことだ。

「事業」は「システム」に置き換わる、ということは、そういうことだ。それがいま、目の前で実際に始まっているのだ。私達人間は、これまで当たり前に続くと思っていた「事業」が「システム」に置き換わったとき、次の時代にはなにをすべきかを、真剣に考えなければいけない時代に生きているのだ。

 


 

事業に成功する人、失敗する人

Roppongi-Hills/Tokyo

Roppongi-Hills/Tokyo

ぼくもいくつか事業と呼べるものをやってきた。時代の流れに乗って、少しばかり成功した、と言える時も過ごした。時代の流れというのは、人間に対して、あるいは人間の集まりである会社、社会に、容赦は全くない。「だめなものはだめ」と言ってくる。その「自然からの声」を謙虚に聞いて、だめなものは、だめ、と、すぐに自分の進路を変える、ということも事業には必要だ。しかし、そういうこととは別に、どうしても事業には向いていない人、というのもいる。

事業に向いていない人にはいろいろなパターンがあるが、それは事業をして成功する人にあるパターンと同じくらいあるから、そのあたりであれこれと言うことは、なんとでも言える。しかし、私の経験では、特に事業に失敗する人というのはある決まったパターンがある。それは「自分のやりたいことに固執する人」だ。事業を先に進めるよりも「自分」が前に出てしまう。そういうことが多い人は、時代の流れとともに変わる事業のあり方を柔軟に動かしていくことができない。事業に益することでも、自分がいやなことだと、それが表情に出てしまう。そこで人に嫌われてしまう。うまく行くことも、行かなくなってしまうのだ。非常に注意すべきことだと、私は思う。「それは良いのですが、こういう場合もあって、うまく行かないと思います」と最初に言ってしまう人がいる。組織の中で生きていくには、こういう感性がむしろ必要なことはあるだろうが、組織の外に出ていくときは、最初のこの一言で「あぁ、この人に話をしてもだめだな」と思わせてしまう。事業はそこから先に進まず、それを言ってしまったあなたはそこからさき、相手にされなくなるのだ。

なんでも、目の前にあることにはまずは食いついてみる。そして、だめなときは見切りをつけるのも遅いよりは早いほうがいいに決まっている。でも、いいことも悪いこともみんなやってくる「事業」においては、最初、それが目の前に現れたときは、良いとも悪いとも言い難いものでも、まずは食いついてみる、というのが必要だ。なんでも、自分が好きではないことでも、まずは喜んで受け入れてみる。その気持ちが人を動かすが、そういう気持ちが湧かないと人が動かせない。あれこれやってだめなら、そのときに見切りをつければ良いので、まずは食いついてみる。

「あぁ、この人に話をしてもだめだな」と、思わせる、その気持ちは社会の中に伝染していく。お酒の席で、それが一言でも発せられると、その人はそこから先、新しいビジネスにはありつけない、と思ったほうがいい。逆に「まずあの人に話をしてみたら?」と言われるようになるのは、たとえ失敗しても「明るい人」「何でも受け入れて聞く人」なのだ。この「明るさ」「前向きなところ」はビジネスにとって重要なことになる。