400年の衰退期が始まった

テレビでも時々出てくる大前研一氏の記事なんだが、あちこちで話題になっている。

記事の題名は「中国にボロ負けして400年の衰退へ向かう日本。食い止める術はもう無い」ですからね。「お金持ちの、素晴らしい日本はどこに行ったの?」てなもんなんだけれども、実際のところ、ネットの記事では「中国の都市は東京より先に行っている」なんて記事が昨年くらいから増えてきたし、実際にそうだよなぁ、と感じることも多い。いや、実際そうですよ。

でも、逆に物事を考えるべきだと思うのですね。もともと日本は貧しくて「姥捨山」なんてのもあったわけですよね。であれば、むしろ、日本の戦後の70年くらい、あるいはもう少し広げて、明治維新からの150年くらいが、日本の数千年の歴史の中で、一番経済的に豊かな時代だったんだよな、ってことですね。歴史を勉強すると、本当にそう思います。大前さんは400年かかってどん底になる、って書いてあるんだけれども、ぼくは20年くらいだと思うのね。

だから、少々のお金を持ったり、権力を持ったりしても驕らず、またすぐに日本は貧しくなるかも?って思っていて、毎日を過ごすのが良いのじゃないかと思うわけですよ。すぐに「俺はすげぇんだ!」なんて威張るのは愚の骨頂だよなぁ、きっとどっかで笑われてるよなぁ、っていうフィードバックが効いてないとね、品ってものがなくなっちゃうんですよね。人間ってのは、そういうものだから。

 


サイバー戦争が始まった (44) 某国からのエージェント

※本記事はフィクションであり、事実を書いたものではありません。
※本記事はこの本の続編です。他のエピソードはこちらの本をお読みください。
※これらの書籍では、他にも「仮想通貨」「ドローン」「掃除ロボット」などがサイバー戦争でどう使われるかについて、書いています。

「見つけた。ここにいたのか!」

東京の地方の小都市の公園で、C国のエージェントと、本国から来たサイバー戦の専門家は同時に叫んだ。

見つけられたオビアは電源が切れ、公園の草むらの中で生い茂る夏草の中にいた。よくこれまで、公園の掃除をしている人にみつからなかったものだ。もし見つかっていたら、スクラップとして「燃えないゴミ」になって、いまどきは清掃工場の炉の中だったかもしれない。おそらく、誰か子供が忘れていったおもちゃだと思われたのだろう。見つけた掃除人はここに置いておけばまた子供が取りにくるかもしれない、ということで、このままにされていたのかも知れない。

「電源は切れている。電池が切れているからだろう。当然だ。我々の市ヶ谷のラボにもっていくんだ。充電して動かして、正常に動くことを確認したら、内部解析を行うんだ。その前にROMのバックアップも忘れるな。防水構造だからおそらく電池や回路は無事だ」

C国から来たサイバー戦の専門家、Choiは言った。

「わかりました。では市ヶ谷の我々のラボに連絡を入れます」

C国エージェントのXenはすぐにスマートフォンをポケットから取り出し、メールを入れた。もちろんC国の言葉でメールを書いている。

「目的のものを発見。XX市のさくら公園だ。ラボ人員全員を至急招集。2時間後にラボに例のものをもっていく」

明るいLED蛍光灯の光が部屋の隅々まで照らし出す、白い無機質な部屋。そこにオビアは横たえられ、解析が始まった。

「防水構造だから、電池はおそらく大丈夫だ。まずは充電をして、電源スイッチを入れられる状態にするんだ」

Choiの指示で、オビアに充電ケーブルが接続された。そして1時間。Choiは言った。

「満充電とはいかないが、これでオビアは立ち上がるだけの電池の充電が終わっただろう。すぐに充電ケーブルを外して、内部回路にICE(In Circuit Emulator – CPUの動作を逐一詳細に調べられるツール)を接続し、電源を入れてリブートから動作を調べるんだ」

オビアの中が開けられ、ICEの接続が終わると、オビアに電源が入った。

「よぉし、ブート時からステップ動作単位で調べるんだ」

Choiの指示は的確だった。そして、素早かった。Choiは遅延ステップ実行されるICEの画面をじっと見つめている。

「そこで止めろ。数十ステップ戻せ。そしてそこから再実行しろ。その部分をソースコードと比較するんだ。裏ROMの消去の命令が出ている。。。裏ROMは動作前にバックアップ取ってあるんだろうな?」
「すみません。裏ROMはバックアップを取るのを忘れていました。消えたんですか?」
「消えたんですか!だと!消えちゃったじゃないか!。裏ROM消去命令が一回実行されたらそれで終わりだ。あそこになにが入っているかは重要だったのかもしれないぞ!どうするんだ!」

Choiは肩を落とした。

「裏ROM(フラッシュメモリ)」とは、例えばスマートフォンが新しいOSに更新されるときなどに、まずダウンロードをそこに行い、更新はダウンロード時にはかけない。まず裏ROMに新板のOSをダウンロードしたうえ、実際の更新は裏ROMから表ROMへの転送やハードウエア的に裏ROMと表ROMを一瞬にして切り替える、などの方法を使って、新OSのシステムに切り替える。これは、ダウンロード時に通信回線が切れるなどの事故があったときにも、スマートフォンが旧OSで動作を再開できるようにした仕組みだ。

いろいろChoiがICEの画面をみらみながらあれこれやっていたが、一言、言った。

「ダメだ。しょうがない。とにかくオビアを再起動させろ。遅延ステップ実行用意!」

そしてまた、オビアの電源が入れられ、リセットされた。ICEの画面が動き始める。

「さっきと動作が違う。さっきの裏ROMの消去命令が出ていない。やられた!」


「木村部長。オビアがみつかりました。おそらく、C国のエージェントが日本のラボに持ち込んでいるのだと思います。市ヶ谷あたりでGPSの反応がありました」
「佐橋くん、わかった。これは一人私のだけのことではなく、国の運命を変えるかもしれないことだ。内密に、そのGPS反応が出ている地域に我々のエージェントを送って、様子をさぐるんだ。慎重にな」
「わかりました。数分前ですが、反応を検知したときに、すぐに手配はしてあります」
「さすが佐橋くんだ。逐一私に動静を伝えてくれ」
「わかりました」
「あの仕組みももちろん入っているんだろうな?」
「もちろんです」
「では、こちらの人員に怪我の無いように、現場から少し離れて監視を続けるように指示しておきたまえ」
「わかりました」
「それから。。。」

木村が言い終わる前に、佐橋が答えた。

「大丈夫です。それも既に手配してあります。今頃、発進しているはずです」

木村はそれを聞くと「やったな」という意味の目配せを佐橋にした。

佐橋は木村からオビアを預かったとき、生き残ったオビアが敵の手に渡り、解析されることもあり得ると思い、様々な工夫を凝らしていた。オビアはOSが入っている裏ROMと表ROMを瞬時にハードウエア的に切り替える仕組みを持っていた。オビアは起動時に表ROMと裏ROMを切り替え、裏ROMを使いシステムが動作するようにしてある。佐橋が改造したシステムは裏ROMに入れてあり、それが起動時に取って代わって表ROMに切り替わって動作する。また、電源が完全に切れてから電源を入れ直して再起動するときは、佐橋の改造したファームウエアとOSの入っている裏ROMが起動時に消去され、何事もなかったかのように動くように作ってあった。しかし、佐橋が行った改造はそれだけではなかった。


その頃、市ヶ谷のラボ近くの公園から1台の小型のドローンが発進した。ドローンはその腹に小型の爆弾を積んでおり、オビアの以前のOSに組み込まれた爆撃命令に従って無線で動くようになっていた。つまり、本来であれば木村家を攻撃するために改造されたOSが動き始め、そのドローンを爆破拠点まで引き寄せる役目を始めたのだ。

その頃、ラボではオビアのOS動作解析のため、ラボの電波シールドを切り、外部のWi-Fiなどに接続する作業が始まっていた。改造されていないかどうかを調べるために、オビアから出る電波、オビアが受ける電波を傍受して解析する必要があったからだ。

ドローンはラボに迫っていた。


 

サイバー戦争が始まった(3) サイバー戦争、終戦。「日本のいちばん短い日」

新宿の都庁展望台より

※本記事はフィクションであり、事実ではありません。

【会社到着】
歩いて4時間。千葉の自宅から東京にやっと入ったのが1時間前。そして、時ならぬ東京観光のように、スカイツリーを横目で見て、大手町の会社に到着したのは朝6時に家を出て、午前10時だった。帰りは電車が動いていることを祈るしかない。もし電車が動いていなければ、今日は帰るのをあきらめ、明日、電車が動いてから帰ろう。もともと、妻にはそう伝えておいたから、心配はしないだろうが、家のことはやはりいちばんに気になる。

会社のあるビルに到着すると、いつも出迎えてくれていたビルの自動ドアが開いたままになっている。電力会社からの電力供給がないのでビルや地域の自家発電装置を使わざるを得ず、当然だが、節電が行われている。当然、10階にある我が社までは階段で上がるしかない。エレベーターが動いていないからだ。さすがに4時間歩き通しで疲れてはいたが、最後のがんばりだと思って、階段を駆け上がった。

会社に到着した頃には、みな同じことを考えていたらしく、同僚がたくさん会社に集まっていた。社長は来ていない。聞けば社長は大阪に出張中とのことで、新幹線も飛行機も動かないので、東京に戻れないらしい。しかも電話も不通だから、連絡もつかないとのこと。社長の家族もさぞ心配してることだろう。職場はとりあえず地域で使っている自家発電装置で動くようになっていた。テレビをつけても雑音だけだ。電波が出ていないらしい。破壊された、というよりは、明らかに全体の節電のためだろう。仕方がないので、職場に置いてある携帯ラジオをつけた。なんと、ラジオからは声が聞こえている。放送はラジオが一番仕組みが簡単で、送信する側も、受ける側も、使う電力量も一番少ない。しかし、音は聞こえるがいつものような力強さはない。デジタル波ではなく、もとのアナログ波に戻っているようだ。電波が弱く、とぎれとぎれになるところもある。おそらく、東京以外の臨時の放送施設を使い、電力も制限しているのだろう。とにかく「非常時」であることはわかる。インターネットはまだ使えない。電話もだめだ。

【ラジオでサイバー戦争が始まったことを知る】
ラジオに聞き入っていると、日本が大規模なサイバー攻撃を受けたため、電力、水道、ガスなどはプラントのコンピュータが攻撃を受け、動作不能で止まっていること、復旧は早くても今日の夜から明日朝にかけて、とのことだ。昨日も同じことを言っていたのだから、まぁ、話半分で聞くしかない。気がつくと同僚たちが私の机の周りに集まっている。仕事をしようにもコンピュータもインターネットも使えないし、することがないのだ。私のラジオの音を聞く他に、今はすることがない。

オフィスの照明はもちろん切れているので、明かりは窓から取るしかない。普段の眩しいオフィスの様子は、まるで休日のオフィスのようになった。幸いなのは、夏の暑さではなく、冬の寒さの中だから、オフィスの中にいると気密がしっかりしていると、少しあたたかい、ということだ。それでも、暖房はもちろん使えないので、私も含め、通勤時に使っていたダウンのコートなんかを着ている。明かりはない。自分の席は窓際だから、オフィスでも明るいところになる。そこでラジオが鳴っているのだから、同僚は当然私の席の周りに集まるしかない。自分の席での仕事もできないのだ。こうして時間を過ごす他はない。立っていると疲れるから、みな自分の席から椅子を持ってきて座っている。ラジオは相変わらず、「まだ復旧しません」を繰り返している。なにが?インフラ全部が、だ。まとめればそういうことしか言っていない。

【敗戦への足音】
ふと窓の外を見ると、大きなヘリコプターがこちらに向かって近づいてくる。不意に、轟音を立ててビルの上を通り過ぎ、どこかに飛び去っていった。同僚の一人が「ありゃぁ、政府専用のヘリだ。なにかあるんじゃないか?あっちは羽田空港だよ」とつぶやいた。いや、「なにかある」じゃなくて、いまそれは目の前で進行中だ。しばらくしたら、ラジオでは、首相を載せた政府専用機が羽田空港から和平会談のために、近隣のC国に向かっている、という放送があった。ラジオはさっきからニュースのたびに同じ言葉を最後に付け加えている。「国民の皆様にありましては、冷静に行動してください」。さらに、ニュースは続けて、官房長官はもう一機の政府専用機で米国に向かっている、ということを伝えた。そろそろこの騒ぎも収束を始めている感じがするニュースだ。

【敗戦】
それから5時間ほどもしただろうか。赤く沈んでいく夕日が冬の澄み切った空の向こうに沈もうとしている頃、ラジオがまた臨時ニュースを伝えた。「日本国政府は、C国に対して、戦争をする意思は現在も将来もないことを伝え、その証拠として、日本の南端にある島、X島をC国に譲渡することを伝えたとのことです。首相自らが出向き、それを伝えました。また、官房長官は米国政府へX島のC国への譲渡の合意を得る話し合いを行い、承諾を得ました」。サイバー戦争はわずか3日で終わった。日本は負けた。

【復旧】
その日の夜10時。電気は復旧し、水道も出た。インターネットも電話もつながった。明日からはもと通りの仕事が始まる。つながった電話で妻に電話した。今日は会社に泊まること、明日、昼頃に会社を出て、復旧した電車で家に向かうことを伝えた。明日は金曜日だ。いつもと変わらない、良い週末が送れるのじゃないかと思った。

会社の窓の外に目を向ければ、夕陽を背にとなりのビルの屋上のテレビアンテナの上に大きなカラスがシルエットになってとまっていた。

「おい、今夜は一杯やるか!」

誰かが背後でそう叫んだ。まだ居酒屋も開いているかどうかわからないのに、よく言うよ、と思ったので「先に行って、店が開いていたら呼んでくれ」と答え、早朝に家を出るとき以来止めていたスマートフォンの電源スイッチを入れた。

※サイバー戦争終戦後の日本はどうなるか?

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