iPhoneは日本で作っているわけではないのだが。。。

Rainbow20160819-2こんな記事があったので、読んだのだが「まだ、製造業に携わっていない人の感覚ってこんなもんなのかなぁ?」なんて思ったりしたのです。というのは、日本の部品メーカーがiPhoneはじめ、多くのスマホとかタブレット、PCの部品を作っている、というのは、昔から非常に良く知られた話だと言う以上に、日本以外の国からも部品なんて調達しているものなんですよね。で、iPhoneの場合はその多くが中国の工場で最終組み立てをする、というわけですね。最終の組み立ては非常に細かい作業があって、どうしても人間の手でやらなければならないので、人件費が安い中国のメーカーに頼んで作ることが多いんですよ。

つまり、iPhoneは規格と設計は米国でやるんだけれども、部品の調達はどこの国からもやる。日本はその一部に過ぎない、ってことです。また、日本で作られたものだけが品質が良い、ってこともありません。部品メーカーはかなり買い叩かれるので、利益率は非常に低い。某所である部品についてお聞きしたところでは、iPhoneなどの部品の利益率は数%くらい。で、iPhoneを売った利益の大きなところは、やはり製品を企画し設計したApple社が持っていくんですよ。

部品の調達だけじゃなく、表面の超硬ガラスの縁のところの丸い加工をする工作機械とかって、これがまた、精密さを要求される高価な工作機械で、これも日本製が主流。そのガラスは米国コーニング社の「ゴリラガラス」が使われている、ってのは有名な話。さらに、できあがった製品を箱詰めして出荷するまで置いておく倉庫はたいていはコンピュータ制御の「自動倉庫」なんだが、これも市場シェアの大きな部分を日本製品が占めているんだね。でも、製品の機能のコアとなるハードウエア、半導体は日本製ってことはもう今の時代はなくて、現在は台湾のTSMCとか韓国サムソンとかで作るわけです。こういう部品の調達とか製造とかって、政治はまず関係しない。あくまで、お金。安くて品質が求めているもの以上であれば、どこの国のどのメーカーの製品でもさっさと調達して中国に運んで、中国の工場で作るんですよ。こういうのを「国際サプライチェーン」と言って、今の製造業では当たり前のことなんだね。

韓国サムソンのPCも、シャープの買収で話題になった台湾が本社の鴻海精密工業の中国工場で作るわけです。実は製造業の世界では、鴻海とサムソンは競合しているライバルどうし、ってこともあるんだが、それぞれの事情が合えば、こうやって簡単に手をつなぐ。これは日本のメーカーでも同じなんだよね。ちなみに、鴻海の中国工場で働く人達は100万人以上いるらしい。鴻海は世界最大の製造業で、その一部ではiPhoneも作っているしね。国際サプライチェーンの中で製造業者が生き残る、ってのはすごく大変なんですよ。

だから、今の時代は「この製品はどこの国製」ってのは、ほとんど意味がない。「iPhoneの部品の重要なものは日本で作ってるんだって。日本の技術はすごいなー」というのは、まあ、素人ならそうやって喜んでいればいいんであって、実情は安くて品質がいいのであれば、日本の企業のものでなくてもどこでもいい、ってことです。それにスマホの製品としてのライフサイクルはせいぜい4年。4年持てばいいわけで、であれば、なにも最高品質のものでなくてもいいわけです。一定以上の品質で4年持てばいい。その中でできるだけ安いものをブランド・メーカーは探すわけです。

普通の消費者の素人はこういう製造業の裏側を知らないから、Appleというと米国製だと思ってるけど、あれは中国製がほとんどだし、サムソンのスマホもSONYのスマホも全部今は中国製です。iPhoneの製造ラインの隣で、Xperia作ってたりします。これは製造業であれば、なにもiPhoneではなくても、服とか食べ物とかでもみんなそうなんですよね。今さら、知らないにもほどがあるよなぁ、とこの記事を読んで思うのが、25年以上、製造業でITの仕事をしてきた僕なんかが言うことなんだけどね。