火を吹くモバイルバッテリー(1)

あのニューヨーク貿易センタービルの「September 11」に合わせたわけではないと思うが、2017年9月11日、東京の神田駅で、白煙が上がった。「2年前に一番安いモバイルバッテリーを買ったが、それが爆発した」ということだ。これまでも、iPhoneやAndroidのスマートフォンが爆発して死者が出た例もあるし、PCの電池でも同様の事故が世界のあちこちで起きている。

特に最近気になるのは、外部にケーブルなどでスマートフォンに接続して充電する「モバイルバッテリー」だ。モバイルバッテリーは、中に充電式の大きな容量の充電式電池を持っていて、これに、夜寝ているときなどに充電する。そして、朝起きたら、出勤時などにスマートフォンとともに持って歩き、スマートフォンの電池が空になったときに、このモバイルバッテリーからスマートフォンに充電する、という仕組みだ。大小様々、有名無名様々な製品が非常に多く家電量販店などで並んでいるが、ときどきではあるものの、前記のような「爆発事故」を起こすことがある。最近はこの充電式電池をいわゆる「電子タバコ」でも使っていて、その電子タバコが爆発した例もあるという。

【モバイルバッテリーは1年で買い換えること】
では、こういったモバイルバッテリーを使うとき、なにを気をつけたら「爆発事故」に会わないようにできるのだろうか?これまでの充電式電池の爆発事故の多くは「2年前に買った古い電池」などの電池が事故を起こす例が非常に多い。ということはモバイルバッテリーの事故を起こさないためには、まず第一に「1年たったら、新しいものに買い換える」ことだ。現代の充電式電池は、毎日充電と放電を繰り返していると、だいたい1年で劣化が始まり、2年くらいで寿命を迎える。それでも使うと事故を起こしやすい、ということだ。これは、電池の劣化を考えていない充電器の充電回路に問題がある場合が多く、当然ながら、古いモバイルバッテリーほど、回路も古く、危ないものが多い、と考えるのが普通だ。そういう意味でもより新しいモバイルバッテリーにするのは意味がある。

【充電しっぱなしは問題ない。が、】
よく、「過充電は良くないから、モバイルバッテリーは充電が終わったらすぐにケーブルを抜こう」などのことが書いてある記事があるが、これはほとんどの場合ウソだ。モバイルバッテリーの中には、非常に賢い充電回路があるので、過充電になりそうだったり、電池の温度が上がると、充電や放電を中断する回路などがついている。つまり、充電しっぱなしは、ほとんどの場合、問題がない。しかし、「古いモバイルバッテリー」では「古い電気回路」を使っているものがあり、現時点で2年以上前のものは、電池が劣化する状況をわかっていないものもある可能性がある。そうなると、充電することで、電池が爆発するものがあるので注意が必要だ。いずれにしても、ここでも「2年以上前の古い電池は使わない」ことだ。

便利に使っている人も多いだろう「モバイルバッテリー」だが、それを安全に使うコツは簡単である。「1年で買い換える」「中古は買わない。必ず新品を買う」。これに尽きる。これは、モバイルバッテリーだけの問題ではなく、スマートフォンの電池、タブレットの電池、PCの電池などの全ての充電式電池で言えることだ。

 


モバイル充電器は何を選べばいいか。

【モバイル充電器はどれがいいか?】
家電量販店にも、秋葉原にも、最近は電池を内蔵した「モバイル充電器(モバイルバッテリー)」をたくさん売っている。あまりに種類があるので、どれを買ったらいいか迷う。秋葉原では、かなり大容量のものでも、なんと千円くらいで手に入るものもある。

一方で、電池を使ったこういう製品はスマホなどの報道でもよく見るが「爆発した」などの事故のニュースもよく聞くようになった。こういうニュースを見ると、「ほしいけど怖い。なにを選んだらいいかわからない」ということが多いだろう。

モバイル充電器は、タブレットを充電したり、スマートフォンを充電したりするものがほとんどだが、中にはノートPCを充電するものもある。しかし、多く使うのはスマートフォンかタブレット用と思うので、今回は対象をスマホとタブレットのみにする。

【USB出力は2個以上がいい】
モバイル充電器を選ぶとき、まず気にしなければならないのは、「USB出力個数」である。1個であれば、1個しか同時に充電できないが、2つあれば、スマホとタブレット二台持ち、なんてときに重宝する。私の場合は、スマホとPC、そして、PCにつなげる「Wi-Fiルーター」を普段持っているので、「スマホ用」と「Wi-Fiルーター用」の2個のUSB出力を持っているものを使っている。モバイル充電器は、USBの出力を1個、2個、3個持っているものがあるので、自分の使い方に応じて、選ぶと良い。が、なにか違ったシチュエーション(友人などのスマホも一緒に充電する、など突発的なこと)も考えれば、「USBの出力は2個以上」のものを選んでおくと良いだろう。

【容量はどのくらいがいいか?】
次に見るところはモバイル充電器の容量である。現時点では、小さめのもので4000mAh前後(あるいはそれ以下)、大きなもので10000mAhくらい、そしてほんの僅かだが20000mAhを超えるものもある。一般的に言って、10000mAh前後のものを選ぶと、たとえば、iPhoneSEなどの小さいものだと3回くらい充電できる。タブレットだと、おそらく1回充電できるくらいだろう。当然だが、容量が大きいものは大きいほどいいとは思うが、充電時間もかかるし、なによりも容量が大きいと「重い」。1000mAhのもので、だいたい400gくらいはする。かといって、小さな200g未満のものでは、容量は3000mAhなど小さくて、スマホを1回充電して終わり、ということになる。もっとも、最近のスマホやタブレットは少電力化が進んでおり、使い方にもよるが、ふつうの使い方ではだいたい1日は電池が持つように設計されているから、モバイル充電器はそんなに容量がなくてもいいのかも知れない。あと、通勤帰りにいつもスマホの電池が切れてしまうから、家に帰るまでの1時間持てばいい、というのであれば、3000mAh程度の容量のものでもいいだろうし、いつも外回りの仕事でなかなか充電する機会がない、ということであれば、10000mAh以上のものを選んでおくなど、自分の使い方によって、このあたりは決めると良い。通常は10000mAh前後のものを買っておけば満足することだろう。

【充電にかかる時間も考えよう】
ということで、自分の使い方にあったモバイル充電器を購入するとき、もう1つ気になるのは、充電にかかる時間だ。これは店員さんなどに聞いてみよう。寝ているあいだにフルに充電してほしい、とふつうは考えるだろうが、睡眠時間が4時間という人もいれば、10時間寝る人もいる。であれば、自分の睡眠時間内で充電できるものでないと、使えないよ、ってこともあるだろう。当然だが、容量が大きいものは充電時間が長く、小さなものは充電時間が短い。こういうことはあまり表に出ていないことも多いので、事前にメーカーのサイトなどでスペックを調べてから買いに行くのが良いだろう。

【爆発しないのか?】
結論から言うと、爆発は余り心配しなくていい。モバイル充電器の爆発があるとニュースになったりするが、非常に稀だ。爆発などの事故は、むしろ使い方が悪いときに起こりやすい。モバイル充電器の中身は「充電式電池」である。これは本質的にスマホの中に入っている電池と同じものだ。だから、毎日充放電していると、寿命はだいたい2年くらい。2年で買い替えすべきで、それでも使っていると、爆発もしやすくなる。また、極端に暑いところ、例えば35度以上になるところや、極端に寒いところ、だいたいマイナス5度以下のところでは使わないほうがいい。iPhoneだって、全ての機種の動作保証は35度である。あと、コンクリートなどの床に落とすなども、危ないことが多い。電池そのものは大丈夫でも、付属の充電・放電をする電気回路が壊れたりする。それが壊れると、爆発の危険性が増す。当然だが、水濡れははっきり「厳禁」であることは言うまでもない。風呂の水に落としたり、池に落とすと、完全に万事休すで、通常は電池がダメになるので、もしも池に落としたとか海水に漬けてしまった場合は、すぐに捨てて、新しい物を買うことだ。

ということで、モバイル充電器は基本的に日本で売っているものであれば、ほとんど、どのメーカーのものでも問題はない。しかし、使い方を誤ると、火事になったりするので、充分に気をつけよう。また、買ってから毎日使うと、だいたい寿命は2年が限度だ。2年たつと、一生懸命充電しても満充電にならず、充電するときの電力の総容量が減る。これはスマートフォンなどに付属や内蔵の電池と同じだ。だから、買い替えは必ず2年前後で起きる。どうせ買い換えるのであれば、安いものを買おう。

 


UPQの問題はそのまま今後のファブレス「スタートアップ」の問題

若手のスタートアップ企業の雄と思われていた「UPQ」で「ディスプレイのスペック誤記の対応」「スマホの電池の爆発」という問題が立て続けに起きて、ニュースを賑わせている

【誤記対応問題】
会社としての、プロダクトのクレームに対する処理の問題、誤記の問題は、会社規模としてしょうがないところもあるが、日本社会、特にネットではかなり大事として捉えられた。「今までの日本企業に比べて劣っている」という印象だけが残っている、残念な対応ではあったが、今では欧米やアジアの企業も、こんなものではある。しかも、問題の発生も対応も人的なもので、製品そのものというよりも、会社の体制の問題である。逆に言えば、人的な対応を工夫すれば、これから改善されることだろう、と読むこともできる。これは同社のスマートフォンの技適問題にも言える。

【バッテリー爆発の問題】
発表された記事を良く読むと、その「爆発した」スマートフォンが発表・発売されたのは、2015年とのことだから、既に発売から2年前後の経過時間がある。スマートフォンのバッテリーはその充電頻度にもよるが、毎日充電と放電を繰り返していると、だいたい2年で性能が目立って劣化する。通常の現代のスマートフォンユーザーであれば、2年もたてば機種変更で、電池ではなく、本体ごと交換の時期にもなる。通常は本体ごと交換だろう。しかし、電池を入れ替えれば長く使えるものでもあるので、2015年発売の機種ということであれば、そろそろ電池を入れ替えて使う時期でもある。劣化した電池を使うと、充電時間も長いわりに、充電がなかなか終わらない、ということが起き始める。このとき、充電と放電を司るスマートフォン内にある電気回路は、電池の劣化したことを察知して、爆発のなどの事故が起きないように、自動的に充電のやり方を変えるのが普通だが、充電の電気回路が簡易なもので、電池の劣化を察知できないものであった場合は、爆発などの事故に至ることがある。今回の事故は、要するにそういうことではないか?であれば、電池の問題ではなく、充放電回路の問題、ということになる。

【スタートアップ企業の問題】
UPQは工場を持たない「ファブレス」のスタートアップの企業である。製造業というカテゴリーの企業でありながら、実質は「商社」のようなもので、仕入れと販売の価格の差は「ブランド代」ということになる。製造業の面倒なところを知る企業でもないし、製造業の歴史はもちろんない。従って、外注に製造を委託するときに「2年後のバッテリー劣化では製品は大丈夫でしょうね?」という基本的な質問も、UPQから製造業者にはなかったはずだし、それが企業存続に重要な問題である、という認識もなかったはずだ。であれば、こういう問題は起きるべくして起きた問題である、と言えるのではないだろうか?今は製品開発から量産、梱包、輸入などなど、みな製造業者が頼んでお金を出せば短期間でやってくれる。しかし、その製品は客は長期で使うものばかりだ。ファブレス企業といえども、製品開発や製造の経験がないと、後に起こるであろう大きな問題が小さなもの、あるいは見えないもののうちに対処する、ということができない。経験は重要なのだ。

【日本の市場は「高品質」が当たり前】
翻って、消費者を見てみよう。日本の消費者は安いものでも「高品質」に慣れている。まさか電池の劣化で電池が爆発する、なんてことは思いもよらない。日本以外の市場では安いものは低品質であり、高いものは高品質である、ということは常識である。従って、低品質のものはトラブルが当たり前でもあり、トラブルが起きたときは製品交換で対応するのが当たり前だ。今の日本の消費者は「安かろう、悪かろう」を知らないのだ。こういう市場にスマートフォンのような労働集約型のしごとでできた製品を投入するときは、消費者の抱く製品イメージと中身がもともと、かなり乖離している、ということを念頭に置いて、サービス体制などを作る必要がある。

UPQという会社は立ち直れるだろうか?それは現時点では全くわからない。しかし、もし立ち直れたとしたら、こういう問題を1つ1つ経験として積み上げ、成長していってもらいたいものだ、と思う。


サムソンGalaxyNote7の「爆発」から考えること

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サムソンの新型高級スマートフォン「Galaxy Note 7」の電池が爆発し、話題となっており、サムソンもこれを認め、謝罪会見を行った。同社は既に市場に出回っているものを回収、交換を行うという。サムソンだけではなく、以前からSONY製のPCの電池が爆発したり、さまざまな「電池の事故」が多く報道されるようになった。また、iPhoneでもこの種の事故が非常に多く報道されており、「電源」の良し悪しが、世界企業の経営を脅かすほどの問題となっている。

どんな電子機器にも「電源」が必要だ。電源の中でも「電池」「充電式電池」はその扱いが難しいことで知られている。電子機器というと、その内部の電子回路やソフトウエアの出来がなにかと話題になるが「電源」を話題にする人は少ない。電源は「ちゃんと動いていて当たり前」だから「技術は確立されている」と思い込んでいる人が非常に多い。ところが、リチウムイオン電池の扱いなどは、かなり神経を使った設計が必要であることが知られており、アナログ電気回路のうちでも、難しく経験を必要とする技術なのだ。まずもって、「電池」は特性にばらつきが多いものだ。爆発や容量不足を起こしそうな電池を見分け、爆発などの最悪の事態にならないように、現在の充電式電池には、電池の温度などもデータとして取れるようになっている。充電、放電の特性を把握したうえ、電池の経年変化などによる劣化、周囲温度や電池そのものの温度の管理などは当然されていなければならない。そして、爆発が起こりそうな電池であったり、古くていくら充電しても電気がたまらない電池などは、表示などで警告を発して、電池の交換を促す、という表示もされるようにしなければならない。それが普通なのである。

要するに、世代交代でまともな技術者が会社内に育っていないか、社内で作るよりも外注で作るほうが安いから、と、単価だけ安い外注に設計を任せた結果、電源の品質管理がおかしくなり、経験のない技術者が設計することになって、結果として自社のブランドを毀損する、という事態になったと思われる。もともと、サムソンのスマートフォンは中を開けると「MADE IN CHINA」であり、サムソンの中国工場や、協力会社の工場で作られていることが多い。サムソン製品のすべてが韓国内で作られているわけではない。それはiPhoneだって事情は同じで、そのためにiPhoneだって爆発事故をたくさん起こしている。

現代の電子製品は、A社のブランドで売っているものでも、A社でなにもかも作っているものではなく、世界中のより安く品質の高い部分を、より安く品質の高いアセンブリー工場で、それが世界のどこにあろうとも、そこで最終工程を作る。そういうものだ。こういうのは「国際サプライチェーン」と言って、いまや製造業すべての常識である。かつてのように、A社のものはA社の中で設計も製造も行う、という「垂直統合」は価格競争力がなくなり、いまそれをやっている企業は軍需企業でさえありえない。

たとえば、iPhoneのカメラとGalaxyのカメラは、ある時期同じメーカーのものであったことが良く知られている。その工場の経営はSONYで、日本の東北地方の工場で作られていた。そのため、あの3.11の震災のときには、iPhoneもGalaxyも出荷が一時止まった、ということが話題になったことがあった。また「国産航空機」で話題をさらった「MRJ」のうち、国産の部品はわずか26%であり、エンジンも客席も三菱製ではないことはよく知られている。さらに、。。。といくらでも例はあげられるが、要するに製造業は国も国境も関係ない、というそういう時代なのである。いまどき、PanasonicのLED電球を買っても、箱には「MADE IN CHINA」と書いてある。そういうものなのである。

また、「設計はA社」でやる、という「OEM」よりも、最近は「こうすると安くできますよ」などということが製造メーカーで提案され、設計もA社ではない、という「ODM」の製品も非常に増えた。これが国境を超えて、毎日行われているのが、現在の製造業と言うものなのである。そして、メーカーは「より良い品をより安く供給する」という世界的な競争に晒されているために、こういった「国際サプライチェーン」の仕組みを壊して、昔の「垂直統合」に戻すことはできない。それが今なのである。

AppleもSONYもDELLも大手の電子機器の製造業は、多かれ少なかれ、こういった電源のトラブルで何度も痛い目にあっている。だからといって、今さら「国際サプライチェーン」をやめて「垂直統合」に戻るのは、競合の激しい国際社会での「負け」を意味する。製品のコストが高くなるからである。いまや「日本製品だから信頼がおける」という単純な図式は成り立たない。そういう時代になったのであって、使う側もそれをわかって使うしかない。