電池の爆発の背景

あちこちで、iPhoneと言わずGalaxyと言わず、あるいは有名無名の中国ブランドのスマホなどに限らず、あるいはモバイルバッテリーに限らず、今年の後半は爆発事故の報道がいっぱいあった。あまりに報道がたくさん出ているので、スマートフォンというものは爆発するものなのか?みたいな感じも出てきていて、「スマホに変更しようと思ったけど、怖くてできない」なんていう人も出てきた。前に、PCの電池が発火して大変なことになった、というネットの記事などを読んだ方も多いだろう。

これらの「爆発事故」を起こしている電池はほとんどが「リチウムイオン電池(通常はLi-Ion電池と略して表記されることが多い)」なのだが、なぜLi-Ion電池がよく使われるかというと、体積あたり、重さあたりで蓄積できるエネルギーが他の電池に比べて大きいためだ。つまち、小さな体に大きなエネルギーを貯めるわけだから、事故も起こりやすいのだ。しかも、このLi-Ino電池は周辺の温度や使用頻度などさまざまなファクターにかなり影響され、特性が大幅に変わる、デリケートなものでもある。まずは温度が大切なので、通常は電池に温度計が張り付いている。

あなたのスマートフォンの電池を取り外して見えるときは、見ておくとよい。、電池はプラスとマイナスの二極しかないはずなのに、もう1つとかもう2つの接点があっって、3極とか4極の端子を持っているものも多いのに気がつくだろう。この電池の±とは違う端子は温度測定のための端子であることがほとんどだ。つまり、電池の温度を測定して、電池の温度が異常であったときに充電や放電を止める、という特別な電気回路が、スマホなどの充電回路には付いているからだ。つまり、爆発防止のための安全装置がついている。それくらい、Li-Ion電池は「扱いの難しい」電池なのだ。

しかし、各社のスマホなどには、半導体メーカー各社で微妙な充電や放電をコントロールするICが使われている。普通ハードウエア設計者は、このICのメーカーのICを使い、その使い方が載っているメーカーのマニュアルの通りに電気回路を設計し、スマホに搭載する。電池の充電回路と放電回路はこれで安全性も確保されたうえ、充電も放電も効率よく行われる。はずだ。しかし、ときどき、このICの想定外のスペックの電池が使われたり、あるいは、ICの不良や電気回路の設計間違いや製造時の作り間違いなどがあることがあって(そりゃ、人間のやることだから、間違いはありますよ)発火や爆発の事故が、ごくまれに起きることがある。

これがスマホなどの発火事故の真相だが、運悪く事故に合うことも、やはりあるのだ、とひか言いようはない。

特に、Li-Ion電池は製品ごとの性能のばらつきが多い製品であることも知られており、Li-Ion電池工場の爆発事故も実は少なからずある。いや、Li-Ion電池工場は、数回爆発事故を起こさないと、まともな製品はできない、などと言われることさえ聞いたことがある。なにせ電池は「化学製品」だから、電気回路のようにきちっとした通リをすればちゃんとOKになる、というものばかりではない。まともな製品を作るためには、技術者の経験とかカンなども非常に大切なのだ。

とはいうものの、スマホなどの電池の爆発事故に会うことはかなり稀だ。普通は安心して使っていていい。サムソンのGalaxyNote7の場合は、メーカーが回収に血眼になっている、という態度を見ると、どうやら電気回路の設計まちがいのように思えるが、そういう場合は更に少ない。

それにしても、電池に限らず、電源周りの設計は当然アナログ回路だ。そして、そのアナログ回路をよく知る経験の有る技術者は減ってきているのが現状だ。結果として、電源周りなどのアナログ回路設計が重要な意味を持っつ場所で長い経験を持つ技術者は世代交代もあって減っており、事故も増えることになるのは、目に見えた事実ではある。

舞台からは見えない、隠れた重要な役者。それが電源回路の設計や製造の技術者なのだ。地味な仕事だ。まともに動いて当たり前。動かないと事故。しかし、長い経験とそれに基づいたカンがないとできない仕事。世の中にはこういう仕事があるのだ。