EMP攻撃を受けるとどうなるか?

テレビで「防衛の専門家」なる人が「EMP攻撃を受けるとどうなりますか?」というアナウンサーの質問に答えて、「スマートフォンが壊れます」「電話もできなくなる」など、まるでSFのように、なにもかもが火を吹いて爆発する、みたいな感じのことを言うのだが、笑止千万だねぇ。ここまで何も知らない人を「専門家」ですからね。電波で放送しているテレビ局もそこまで電波がわかる人材がいないのかねぇ、としか思えないんだけれども。いや、そういうのってSFチックで面白いじゃん。どんどんやって、なんて思う人も多いだろう。しかし現実は過酷である。そういう夢想の通りにはならないのだ。

実際のところ、EMP攻撃のような強烈な電磁波(電波ってのは「電磁波」を短く略したものだから、同じですよ)を受けた電子機器で対策が一切施されていないものは、攻撃を受けたそのときに一時的に停止する。しかし、火を吹いて壊れて、永久に使えなくなる、というものはおそらく、そんなに多くない。EMP攻撃のときは止まるが、終われば、元に戻るものも多いだろう。元に戻らないものもあるだろうが、それは「一時的な障害で止まった影響」という二次的、三次的な影響によるものであろうと想像できる。専門家であればそういうんだな。よくあるのは、「停電」である。最近の電力の制御などもコンピュータで行われているから、停電なんてのはありえるわけだ。しかし、EMP攻撃が終われば、停電も回復する。その程度のフェイルセーフの技術は当然製品を作る各社は考えている。

最近は防衛関係のみならず、巨大金融機関などのデータセンターでも、コンピュータは処理速度の向上のためにハードディスクからSSDへの交換が進んでおり、ある意味、EMP攻撃などの強力な電磁波の攻撃は受けやすくなっていると言っていい。しかし、そのぶん、対策も少々は進んでおり、かつ、EMP攻撃で止まったとしても一時的なものになる可能性のほうが高い。

だいたい、「EMP攻撃」なんてのは、既に70年前から言われており、研究がされていないわけがない。加えて、ちょっと前では運送のトラックの運転手による違法で高出力の無線装置の電波障害で街道の周辺の家のテレビが一時的に見えなくなる、などの被害もあったし、テレビ局とかラジオ局の電波塔の近くでは電波障害が問題になったことも1度や2度ではない。今なら、電子レンジを近くでONすると無線LANが使えなくなる、なども電波障害ではあることなんだが、電子レンジが温めを終わると、問題なく無線LANがつながる。最近では電子化されたクルマの中での電磁波(電波)の被害があるんじゃないか?なんて言われている。これも同じような「電磁波(電波)被害」である。当然、アマチュア無線などの電波(電磁波)障害も問題になったことがあったし、日本国内に限っても、強力な電波障害(妨害)で悩まされた歴史も1年や2年のことではない。対策だって、当然進んでいるだけではなく、その対策をするための「安全規格」も当然のことながら発達している。

だいたい、この前の「太陽フレア騒ぎ」でもなにもなかったではないですか。ニュースになった被害は一つもない。大山鳴動してジャンガリアンハムスターの一匹も逃亡していない。←細かくてスマン。

しかし、テレビでは「派手に爆発します」なんていい加減でSFチックなことを言う「専門家」が、ビジュアル的にも面白いから、視聴率があがるんだね。だから出て来る。でも、それはウソだ、ってことですね。

もうちょっと詳しいことが知りたければ、こちらに記事をまとめておいたので、読んでくださいませ。

しかしねぇ「電波」は許されて「電磁波」は許されない、みたいなトンデモはなんとかならんかねぇ。同じものなんだけどね。

「あたしね、この前、太陽フレアが地球に来た、ってニュースがあったでしょ?そのとき、頭痛がしちゃってね。あれ、太陽フレアの電磁波の影響だと思うのよ。で、会社休んじゃった」

などとスマホで電話しているそこのあなた。こっちが頭痛くなっちゃうよ。

 


EMP攻撃とはどんな攻撃か?ぼくらは大丈夫なのか?

9月3日の時事通信の記事で、このところ弾道ミサイルを日本の上空を通るルートで飛ばしたり、地下水爆実験を成功させた、と報道されたりしている「北朝鮮」の金書記長が、「EMP攻撃」について明確に言及したことにより、「核爆弾によるEMP攻撃」があるのではないか、とあちこちで言われている。EMP(Electromagnetic Pulse)とは、「電磁パルス」と日本語では書かれることが多いが、実際にはどういったことなのだろう?ということについて、あまり知られていないので、ここに少々解説をすることにする。

電気の変化が生じると、そのすぐ近くに磁気の変化が生じる。そして、磁気の変化が生じると、その近くに電気の変化が生じる。この電気と磁気が相互に連なった変化を空間で伝えるのが「電磁波」、略して「電波」である。電波の場合は、連続して変化が生じるのだが、「パルス」というのは、一瞬の変化のことである。これでも、「電気」が変化し「磁気」が変化する。つまり「電磁波(電波)」が発生する。

成層圏などの、空気が希薄な高い高度で核爆弾が破裂すると、そこは空気が少ないから「爆風」はほとんどない。その代わりに、核分裂の反応で「ガンマ線」が生じる。ガンマ線というのは、簡単に言えば「10pm(ピコメーター。ピコは、10のマイナス6乗)」という非常に短い波長の電磁波である。ちなみに、テレビなどの電波の波長は短いものでも数センチメートル程度だから、それに比べてもかなり短い波長の電波だということがわかる。つまり、核分裂の反応で、非常に周波数の高い(波長の短い)電磁波が発生する。すると、成層圏の下にある「大気圏」の「大気」に、その電磁波が当たる。すると、大気の二酸化炭素や酸素の分子から「電子」が叩きだされる。これを「コンプトン効果」という。この電子が大気の分子から叩きだされるときに、強力な電磁波のパルスを発生する。これをEMP(Electromagnetic Pulse)というのだ。

このEMPの効果は絶大で、ほんの一瞬、EMPが発生すると、コンピュータや電気通信の回線や回路に「ノイズ」が乗る。この「ノイズ」が、電子機器に使われている「半導体メモリー」などの読み込みや書き出しのエラーを誘発する。通信回線だったら、通信中のデータが壊される。そこで、電子機器が「狂って」しまうのだ。ただし、全ての電子機器が影響を受けるわけではなく、厳重に外部からの電波に対する対策が施された回線や施設であれば、その影響は軽微なものとなるし、「光ファイバー」では、ほとんど影響はない、と言われている。

「光」もご存知のように、非常に波長の短い電磁波であるわけで、そういう意味では影響を受けないこともないんじゃないの?という疑いもあるが、EMP攻撃でのターゲットは主に半導体素子であって、通常は計算やメモリへの読み込みや書き込みのエラーが起きることで、電子機器を使用不能にする、ということだ。たとえば、ハードディスクへのデータの書き込み中に、コンピュータ本体からハードディスクへの書き込みデータがEMP攻撃を受けた場合、そのデータはデタラメなデータとなるが、ハードディスクに書き込む前に、データの検証がハードウエアで行われるため、データが誤ったデータであることがわかり、通常は書き込みが行われる、ということはない。であれば、ハードディスクの中のデータは大丈夫だろう、ということがなんとなくわかるだろう。

EMPの発生は、なにも核攻撃だけで起きるのではなく、例えば工場などでの溶接などの作業では常にEMPかそれに類する「強烈な電磁波ノイズ」が派生するし、強力なモーターなどでも発生する。また、電波を使うトランシーバーや、強烈ということでは電子レンジなどでも、発生するから、そういうったものへの「電波対策」が施された機器であれば、EMP攻撃の影響はそんなに大きくないだろう。結構対策がされているものがある。

つまり、「完璧な外部ノイズ対策」が施されている電子機器では、EMP防御ができる、ということになる。

例えば、缶詰の中に完全に密閉したスマートフォンを置くと、それはEMPの影響を受けない、ということになる。とは言うものの、スマートフォンは充電もしなければならないし、第一、缶詰の中で電波が全く届かないのであれば、Facebookだって通信できない、ということになるから、そりゃスマホ持ってる意味がないんじゃないの?ということになる。

とは言うものの、銀行の取引データとかの「大事なデータ」は、たとえばUSBメモリとかハードディスクの中に入れて、そういう「完璧な缶詰」の中に入れておけば、データを壊されることはない。しかも、缶詰の中に入れておくのは、EMP攻撃があったときだけでいい。EMP攻撃が終われば、その缶詰からデータの入っているハードディスクやUSBメモリを取り出せば、前のデータは残っている、ということになる。ところでここで言う「缶詰」だが、通常のペラペラの鉄板でできた缶詰では強力な電波は通ってしまう。どのくらい厚い板であれば大丈夫か?というのは企業秘密で言えない。

世の中にはおもしろいものがあって「電波暗室」というものがある。これは外部から入ってくるあらゆる電磁波をシャットアウトする、大きな部屋である。ここで、スマートフォンなどの出す電磁波の測定などをするのだが、この電波暗室に入っていれば、EMP攻撃は避けられる、ということでもある。

いずれにしても、日本では各家庭につながったりしている線は今やほとんど光ファイバーであり、これはあらゆるところで使われている。光ファイバーではEMPの影響は基本的に受けない。であれば、EMPでの攻撃に、そんなに神経質になることもないのかもしれないが、例えば下水処理場の管理室の中にあるパソコンが動かなくなると、大変なことになる、なんてことはあるだろうし、油断はできない。

既に、日本や米国などのしかるべき機関では、EMP攻撃も想定したサーバーのラックや、通信回線を使っている。それだけで安心できるわけではないのだが。

 


サイバー戦争が始まった(15) EMP攻撃

※本記事はフィクションです。事実ではありません。

その日のお昼ごろ。事務所では早めの昼ごはんに行く社員がちらほらいる。11:30を過ぎると、けっこうな社員が昼休みを取るために外に出る。私も外に出たのだが、ちょうどそのとき、晴れ渡った空でなにか音がしたような気がした。それを見た人は「閃光が走った」と言うのだが、自分は見ていない。そして、行きつけのレストランで注文を済ませて、料理が出て来るあいだ、スマホを触り始めた。

が、そのときのスマホはいつもと違った。画面が真っ暗で、なにもできない。周囲を見渡してみると、他の人たちも同じようになっている。人によっては、動かなくなったスマホの画面を指で散々叩いている。誰かが大声で「なんなんだ!」と叫んだが、なにが起きたのか全くわからない。

私は「まてよ」と思いをめぐらし、レストランのウェイターの人に、言った。

「ごめんなさい、実は急用ができて、すぐに会社にもどらなければならないので、オーダーはキャンセルしてください」

私は会社に戻ると、電源を入れたまま出てきたPCの前に座った。そして、リターンキーを押し、マウスを動かした。が、だめだ。画面が真っ暗になって、なにもできない。すぐに隣の同僚のPCでも同じことをしてみたが、同じだった。

30分ほどして、社員が会社にぞろぞろと戻ってきた。聞けば、レストランが途中で閉店したのだという。注文をさばくコンピュータが壊れて、なにも注文を受け付けなくなったから、ということだった。私は「もしや」と思って、外を見た。目の前のJR山手線の線路の上で、電車が途方に暮れたように止まっている。見れば、道路でも自動車が止まって動かない。信号機も動いていない。

まさに、東京都心は「死の街」になった。全てが止まった。そこで、私は近くにいる社員を集めて、話をすることにした。

「おそらく、この地域はEMP(Electromagnetic Pulse)攻撃を受けた。そのため、あらゆる電子機器が動かなくなったんだ。今日は徒歩でしか家にみんな帰れないと思う。しかし、帰ったところで、テレビもラジオもつかないし、電気も来ていないだろう。とりあえず、収まるまで、ここにいたほうがいい」

「あと、しばらくは電話も使えない。怪我をするようなことはするな。無線がだめだから、救急車も来てくれないし、火事があっても放置するしかないだろう。」

そして、夕方には、いろいろなものが復旧を始めたのだが、業務用のデータがはいったサーバーは完全におかしくなって、メーカーのメンテナンスを受けることになったのだが、バックアップしてあったデータも消えていた。これではなにもできない。個人持ちのスマホも真っ暗な画面のままだ。途方に暮れたが、途方に暮れる以外にできることもなかった。

東京は、死んだ。


EMP攻撃とは、成層圏で核爆発を起こし、そこで発生する強力な電磁波が地上に降り注ぎ、広域ですべての電子機器が使用できなくなる、そういう「攻撃」のことだ。今やデータ通信などは当たり前の世の中になっているし、仕事ではPCも使うし、個人でスマホも使う。その全てが狂えば、全てが動かなくなる。電気もガスも水道も、今やコンピュータ制御である以上、EMP攻撃で動かなくなるだろう。

諦めたその気持ちが、諦めたまま落ち着こうとしたそのとき、上空をジェット戦闘機が轟音を立てて通過した。誰かが言った。

「おい、自衛隊は大丈夫なのか?」

実は自衛隊は大丈夫だった。というのは、前年、自衛隊はEMP攻撃に耐えられるコンピュータを全面的に導入して、ネットワークもEMP攻撃を受けることを前提に構成されていたからだ。しかしながら、庶民の生活はそれから数日、全く動かなかった。