IoTというけれども

年明けから、IoTの話題がどこでもすごいのだが、実際のところ、ぼくらの使っているPCのキーボードやマウスにも小さなコンピュータが入っていて、キーボードやマウスの動きをPCにデータ通信で伝え、ぼくらはPCを使えている。つまり、キーボードやマウスの中のコンピュータが本体のPCのコンピュータと「通信」をしている。当然、この通信データをインターネット経由で送れば、ブラジルで叩いたキーボードのデータを東京のPCが受け取るのは簡単だ。つまりIoTの「原型」がそこにある。これはもう30年くらい前からそう作りこまれている。当然、スマートフォンのタッチスクリーンの画面なども同じようなものだ。

【IoTは既に確立した技術。最先端ではない】
要するにIoTというのは、既に30年前には確立している技術の寄せ集めである。技術で見ると、新しいものでは決してない。簡単に言うと、IoTなんてのはコンピュータでは当たり前の技術であって、既にその技術がなければぼくらはマウスとキーボードでコンピュータさえ使えなかったのだ。

【LPWA/LoRa】
最近はLPWAなどの微弱電波による近距離データ通信の技術も表に出てきたが、これらの通信規格は既に2013年に制定されており、やっと一昨年ぐらいから商品がいっぱい出てきた。既に秋葉原に行けば、LPWAの通信モジュールは4千円くらいで売っていて、とても使いやすいモジュールとなっている。これらの国産モジュールは、日本のガス会社などのスマートメーターなどに大量に使われており、そのため、安価かつ安定的に供給されているのだ。ROHMなどの日本メーカーでも、LPWAのモジュールを作って、以前から売っている。これらのLPWAの規格では、最近はLoRa、SIGFOXだけではなく、数多くの名前をよく聞くが、だいたい世界で40くらいの規格がある。個人的には、そろそろ、あまりにいっぱいあって飽きて来たなぁ、と思っていたところで、なにやら盛り上がっているのかなぁ?という感じだが。

【劇的な廉価化と性能向上】
結論から言うと、IoTはこれまでの技術が、インターネットの登場によって、安価で高速、大容量、そして遠隔地での通信も非常に安くできるようになったので、一般に普及をはじめた、ということだし、LPWAについても、やっと世間が認知し始めたもので、実際には何年も前から動いているものではある。と、そういうことだ。ちなみに、ドローンも要するにラジコンであって、2008年には農業用のラジコンヘリをYAMAHAが発売しているので、現在のドローンが出たときも驚きはなかったし、人工知能もこれまでの技術が、CPUの劇的な価格低下と性能向上によって、一般にも降りてきた、という程度のことだ。常に最先端で仕事をしていたら、みんな「古いもの」「今頃出てきたの?なんで?」なんだな。

そういう最先端の場にいなかった人たちが、今頃「最先端」だと思っているに過ぎない。

日本のITとかの技術や、それをマネジメントしていた人たちも、かなり劣化したなぁ、ということを思わざるを得ない。

 

盛り上がってきたLPWAと日本のIT業界のお話

Kishimojin / Ikebukuro / Tokyo

どこに行っても、LPWAの話が盛り上がってきていて、よく聞くようになったんだが、これでIoTの実験をしていろいろ作っていたのは、ぼくの場合は1年前のことになる。なかなかおもしろかったんだが、アマチュア無線で「ローパワー」を追求していたときの懐かしい感じが蘇ってきたね。まぁ、それはともかくとして、データ通信のためのLPWA(Low Power Wide Area)の通信方式とか、基盤のシステムにはいまやいくつも規格があって、その最初は「LoRa」と思われているんだが、それ以前にも、日本でも、あちでもこっちでも、けっこういろいろな通信の規格が乱立中、というのが正直なところだね。

で、いま、世の中にあふれているLPWAの記事を読むと、「LPWA」だの、「LoRa」だの、「SIGFOX」だの、というキーワードがそれぞれどういう立ち位置にあるのか?ってことがまるでわからないで書いてあるものがいっぱいある。表面だけ撫でているような、それで大丈夫だと思っている悪質ITライターの記事が山のように積もっていて、腐臭を放っている。

結果として、読者はまともな理解が得られず、用語とウソの概念ばかりが空中を飛び交っている。自分の手で作ればすぐにわかることが、自分で作らずに部下に任せる、なんていうことになって、さらにわけがわからなくなって時間だけが過ぎる。そういう人たちもまた山になるほどよく見てきた。

かつて、そう、1980年台くらいかだったかな?、ITの業界の雑誌とかで記事を書く人は、それなりに技術をわかっている人と、全くわかっていないなんとなくやっている人がごっちゃだったが、どちらもそれになりに食えていた。しかし、記事の中で製品をけなすこととか、不都合な真実なんてのは、ちょっと書くと、すぐにクビを切られた。結果として、中身はどうでもいいが、それがたとえ真実であったとしても、雑誌の広告のお金を出しているスポンサーに不利になるような記事を書くライターはいなくなった。それがIT業界のライター事情なんだな。自動車なんかでは「買ってはいけない」シリーズとか、そういうのがベストセラーになったが、ITの業界(1980年台くらいだとITという言葉はなかったけれども)では、「不都合な真実」を書く、実力あるライターは駆逐されてしまった。それが今だ。

そして、結果は、おそらくそれが原因の1つとなったと、私は思っているが、日本のIT業界は世界に冠たるダメ業界になってしまった。物事には、バランスというものがやはり必要で、「賞賛」もあれば「不都合な真実」もあって、それを嘘偽りなく、使う人とか投資家に知らせる、という重要な役目が置き去りにされてしまった。

最近で言えば、「ブロックチェーン」「人工知能」に同種の「危うさ」をぼくは禁じ得ないんだが、要するに「賞賛」」ばかりで「不都合な真実」がゼロってことはありえないわけで、良いことも悪いことも全部さらけ出して、世の中に入っていく、という、そういうものがないんだな。IT業界というのは、キーワードをこねくりまわしてラクして儲けられる業界ではなくなった。世界的にね。そして、そういう新しい世界についていけるIT事業者だけが、世界と渡り合って、生き残っていくだろうね。ごく少数だけね。現在のままならば。

なんて、当たり前のことを当たり前にしていく、ということがIT業界はできない場面が多くなってね。そりゃ衰退するわ、って思うわけですよ。