サイバー戦争が始まった(11) USB充電器に気をつけろ!

※以下の記事は全てフィクションで事実ではありません。

衆議院議員Mは日本というこの国の政府の運命を決める重大局面で、キャスティングボードを握る少数会派を統括していた、その会派の事務局長だった。現在の議題は開戦か、それとも屈するか、だ。Mは積極的開戦派だ。もちろん、会派の頭は別にいる、高名な政治家Xなのだが、Xは女性でもあり、Mの繰り人形、とよく言われることが多く、実際にはMがXの言動を仕切っている、というのは、誰の目にも明らかだった。日本の政府の中でも男尊女卑はやはりまだ残っていて、女性の党首とか女性の総理大臣はまだ出ていなかった。

当然だが、政治家の持つスマートフォンなどの通信を伴う情報機器は日本政府の中でも、問題のある行動がないか?などは、しっかいとトレースされており、四六時中、政治家は当局の監視下に置かれている、というのは嘘ではなかった。

そのMの週末も忙しいことに変わりはないのだが、Mの場合は、現在介護を受けている高齢の父親がおり、その父親のところに1時間でも滞在するのが、毎週末のMのスケジュールだった。都心からクルマで1時間かかるそのMの実家は東京の奥座敷と言われる、山と平地がせめぎ合う場所にある、小さな村だ。そこに、毎週、Mの黒塗りのクルマが1時間、横付けされる。Mのその父親もまた、つい10年前まではその会派の長である、「立派な」政治家だったが、今や体は動くことができず、その会派の長を女性の後継者であるXに譲り、Mをその補佐役として据え、自身は介護生活に入ったのだ。

そんな東京の寒村にも、当然だが、無線の電話網は確実に届く。父親の介護を手伝っている1時間のあいだ、電話とメールがMのスマートフォンにひっきりなしに届く。あっというまに、Mのスマートフォンの電池がなくなる。Mが実家に到着して10分もたっただろうか。Mのスマトフォンの電池が尽きかけた、というアラームが鳴った。

「おい、親父、コンセントはどこだ?スマートフォンを充電しなきゃならない」
「ああ、ベッドの横に移動した。俺も使うことが多かったんでな」

Mは充電器をコンセントに差し込もうと、Mの父親のベッドの横にあるテーブルタップを移動しようとした。そして、そこにMの父親が使っているスマートフォンの充電器が刺さっているのを見た。すると、MについてきていたSPが手を出した。

「ちょっと、M先生。」

Mが不機嫌そうにSPを見て言った。

「なんだ。たいしたことじゃない、口出しするな」

SPはそんなMを無視して、Mの父親が使っているその充電器をテーブルタップから外し、ドライバーをクルマから持ってきて、分解を始めた。

「おい、なにしてるんだ?なにか疑いでもあるのか?」

SPは黙って充電器を分解した後、その分解した充電器を見せて言った。

「ほら、この充電器。盗聴器ですよ。見てください。ここにSIMカードを入れるところがある。これまでのここでの会話も、全て盗聴されていたと思った方がいいでしょうね」

Mはその言葉を聞いて青くなった。横になったMの父親と、さっきまで、Mの今度の国会での立ち位置について説明し、Mが今後どのように動くか、という相談をしていたからだ。

その出来事があって、翌週末。Mはまた父親のところに行ってなにやら相談事をしていたのだが、その1時間の滞在から帰るその途中、Mは交通事故で死んだ。

 


USB充電器の記事はいい加減なものが多い

Shinjuku NS building

ネットの情報にはいい加減なものや、思い入れがありすぎて、結果として不正確になってしまうものなど、様々な「トンデモ記事」を見ることが多くなった。さすがに、「まとめサイト」の酷さにはあきれていたが、この記事もさらにひどい記事に仕上がっている。まず、電気屋として驚いたのが、「4つのポートのどこに接続しても、1700mA」とある記述。見れば、充電器の容量は合計40W。ということは、4ポートあるものの、合計で取り出せる電流は8A。1700mAx4=6.8Aで、余裕で4ポートとも取り出せるのは、まぁ、当たり前といえば当たり前のことだ。しかしながら、タブレットなどに必要な電流容量はだいたい2.2A(最大)だから、これを4つつけると、8.8Aとなって、この充電器の容量をオーバーしてしまう。3つまではなんとかいける。

また、測定中の充電器本体の温度測定なども欠かせない。充電で家を火事にするわけにもいかないし、という測定などもしておくべきだっただろう、と思うのだが。

しかし、この記事には「測定しました」とか書いてあるのに、測定結果の図も表もない。アマチュアの同種のブログサイトでさえ、測定結果をちゃんと図とか表にして証拠をきちんと見せているのに、この記事にはそういうものは一切ない。

また、充電器の急速充電のやり方とかにはいろいろあって、特にAndroidの場合の急速充電は、USBの接続にも違いがあるんだが、そういう知識はこの記事を書いた人には一切無いみたいだ。容量だけでいろいろな判断をしているのは、なんかいただけないなぁ、というものがどうしても残る。

USBの多ポート充電器は、まずは容量を見るのは当たり前なのだが、最近は5Vだけでなく、ちょっと電圧の高い5.2Vなどというものもあって、なかなかおもしろい。この前買ったASUSのスマートフォンの充電器が5.2Vが出力の定格で、実際に調べて見ると、たしかにその電圧が出ている。だからといって、充電が速くなる、なんてことはあまりない。USB充電器とは充電器ではなく、あくまで5Vの定電圧電源装置であって、実際の充電回路はスマホやタブレットの中にあるからだ。

あと、充電器の性能を左右するものには、ケーブルそのものの質や長さ、そしてそれ以上に、USBのコネクタのところでの接触抵抗などがある。そこまでちゃんと測定した記事はほとんど見ない。この種のライターの質の低下がわかる。

実際、こういった電源の測定だけでも簡単なものではなく、いろいろ測定器を用意し、まともな測定を行うには、けっこうお金も時間もかかる。USBのソケットだけでも数種類用意するなどの気配りも重要だし、何度か抜き刺ししているうちに、接触抵抗が変わることもあって、被見物の充電器も1種類のものを1つだけ用意して測定、というわけにもいかない。この手の原稿料の馬鹿安いお手軽サイトには、正直なところ、「暮らしの手帳」のようなきめ細かな測定はまず無理だろう。

 


火を吹くUSB充電器の話

Cluster Amalilis

Cluster Amalilis

私の知っている人、数人が「USB充電器が火花を散らして壊れた」あるいは「パチッと音がして壊れた、という被害に会った。ある人は、USBの充電ポートが4つあるUSB充電器に、iPadを4つつけて充電したところ、充電器が壊れたそうだ。電気のことを勉強したことがない人にとっては信じられないだろうが、こういうことは簡単に起こる。電気のことを少しでも勉強したことがある人は、そういうことは「危ない」と知っているからやらない。

実は、USBの規格と、「パソコンのUSBポートで充電できます」と書いてある機器の電源の規格を調べると、この説明には大きな不備があることがわかる。

実はUSBポートで供給できる電源の電圧は5V(ボルト)。そして、電流は0.5A(アンペア)まで、ということが普通だ(USB2.0の場合)。実は、USB1.0が出始めの頃には、USBポートでつながれたPCの周辺機器に電源を供給することは考えておらず、その規格は決まっていなかった。

しかし、USB2.0ではその規格で「最大電流は0.5Aまで」と決められた。そして、USB3.0ではこの規格は1.0Aまでとなった。現在のUSBポートの主流は、ご存知の通りUSB2.0だ。つまり、USBポートで供給できる電流は基本的に0.5Aまでとするのが適当、ということになる。とは言うものの、最近のスマートフォンでは充電の最大電流が1.0Aやそれに近いものがあるし、iPadなどのタブレット端末では2.0Aも必要なものも普通にあるのが現状だ。

電気を供給する電源は、簡単に言えば(1)「交流か直流か?(交流であるとしたら波形や周波数はどうか)」、(2)「電圧は何Vか?」、(3)「電流の容量はいくらまで耐えられるか」という3つのことが決まれば、だいたい、「電源」と「電源を使う機器」をつなげることができる。あとはコネクタなどの形状が同じものである必要があるのは当然だ。(これは「定電圧電源」という電源の場合だが、私たちが普通充電などに使う電源は「定電圧電源」だから、ここではこれについてだけ話をする)

定電圧電源では、たとえば、100Vの電圧が供給されているところに、5Vで動く機器をつなげると、たいていの場合、機器が壊れる。逆に、100Vの電源が供給されているところに、200Vで動く機器が接続されると、機器が電圧不足で動かない。

だから、「電圧」は、電源と使う機器で「ぴったり」なものを選ぶ必要がある。(1)の「交流か、直流か」も、同じで、これも規格をぴったりとあわせないといけない。ただし、マージンがとってあるから、少々電圧が違ってもちゃんと動くが、大幅に違うと動かなかったり、壊れたりする。

(3)の電流は「容量」と表現されているように、1Aの電流容量のある電源には、機器が充電などに使用する電流は1Aより低ければよい。機器の容量が電源の電流容量より小さいぶんには問題ないが、反対に電源の電流容量よりも機器が必要とする電流が大きいと、電源が壊れたり、電源が壊れる前に「ヒューズ」などが飛んだりする。いずれにしても「力不足」で、動かなくなる。

今回の事故が起きた4つのポートがついている「USB電源」の電流容量は、USB2.0の規格にあわせ、1ポートあたり500mA(0.5A)となっていた。しかし、iPadは、1台で1.2Aの電流を充電に必要とする。これを4台つなげれば、1.2 x 4 = 4.8Aの電流が電源に必要とされるが、電源は2.0Aしか容量がない。だから電源は火を吹いて壊れたわけだ。また、iPhone はiOS5以上になってから、1Aの電流を必要とするという。であれば、iPhoneを4台つなげても、やはり電源は壊れる。

前に書いたように、USB3.0の規格でも、電流容量は1.0Aまでだから、USB3.0のポートを持つPCでiPadを充電するのも危険だ、ということになる。

「でもおれ、大丈夫だったよ?」という人もいるだろう。実は、充電し終わったiPadや、充電が終了寸前のiPadは、充電のときの最大電流と書いてある1.2Aも電流を必要としない。調べたことはないが、おそらく、0.1Aも電流を取らないだろう。考えてみればわかると思うが、一生懸命充電しているからこそ「電流(=エネルギー)」が必要なのであって、充電し終わったら、そんなに電流は流れないのだ。また、まったく空のバッテリーの充電には多くの電流を必要とするものの、充電するに従って、充電のための電流は必要なくなってくる、というわけだ。iPadなどのスペックに書いてある「電流」は「iPadの電池が空の状態で充電しながら使っている」というときの「最大電流」ということになる。また、USB充電器やパソコンのUSBポートの側も、規格の通りではなく、より多くの電流を供給できるようにしてあったり、あるいは、数10%までなら過剰に電流を流しても大丈夫、という「マージン」がとってあるものも多く、「運良く」トラブルが回避できている場合もある。

ということは、iPadやiPhoneを充電するときは、まず、付属の充電器(普通はこれは機器の最大電流を供給できるように作ってある=USBの規格以上の電流が流れてもOK)で充電し、満充電、あるいは満充電に近くなったら、PCにつなぐ、というのが正しいiPhoneやiPadの充電と、PCへの接続の方法、ということになる。

簡単に言えば、iPhoneやiPad、そしてAndroidなどのタブレット端末や携帯電話、スマートフォンのUSB充電器は、こういうことをわかっていて使わなければならない、ということだ。そうでないと充電器が火を吹いて家が火事になることさえ考えられる。

本当は、iPadなどの機器の側が、充電などのときに、USBの規格にあわせた0.5A以下の電流しか使わないようにすべきだ。しかし、「USBを電源として使う限りにおいて」、メーカーはこの規格を守っていないところがとても多い。ここで見たようにAppleでも守っていない。それはUSBのように見えて、USBの規格ではない、「まったく別のもの」ということになる。

本当は、iPadやiPhoneなど、0.5A以上の電流を必要とする機器の場合は、専用の充電器以外は使えないように、コネクタの形状をUSBではないものにすべきだ。そうでないと、また「事故」が世界中のどこかでどんどん起きることになる。

日本では消費者庁などがこういうことをちゃんと規定すべきだが、まだ行政指導などがあった、ということは聞いたことがない。このUSB充電器をめぐる混乱と事故はちゃんとして法整備がなされるまで、おそらく、まだまだ続くだろう。